“土用餅”は夏バテ対策!? “和菓子”の歴史を紹介!

2019.4.6
普段何気なく食べている“和菓子”。日本で古く昔から意味が込められ、四季に合わせ作られています。そこで和菓子の歴史に詳しい研究家・青木直己さんに由来などを教えてもらいました。今回は夏のお菓子です。

土用餅(どようもち)/7月20日~8月7日 夏の土用

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秋前の18日間である夏の土用は、二十四節気の大暑と重なりとても暑い時期。それを乗り切るため、滋養のあるウナギを食べる風習は今も知られるところ。それと同じく、古来食べられているのが土用餅。お餅をこし餡で包んだ、いわゆるあんころ餅のことをいう。

「京都を中心に年中行事を記した黒川道祐編『日次紀事』(1676年序)には、土用の入りの空腹時に小豆を入れて冷やした水を飲む、あるいは小豆餅を食べれば根が続くとあります。餡に使われる小豆はミネラルなど栄養価が高く、食欲を増進して夏バテを防いでくれることが、古くから知られていたのです。実際にいつごろから食べられていたのかは不明ですが、江戸初期の茶人の茶会記や、商人の旅の道中日記に土用餅は登場しており、少なくとも戦国時代から江戸時代には庶民にも親しまれる風習だったことが推測できます」

素朴な味わいの土用餅には、先人の夏バテ防止の知恵と無病息災への願いが込められているのだ。

『京菓匠 笹屋伊織』 土用餅1個¥250 1716年に創業。有職菓子司として京都御所や神社仏閣、茶道家元などの御用を務める。優しい甘さのこし餡で包んだ土用餅は、7月20~27日に販売予定。 京都府京都市下京区七条通大宮西入花畑町86 TEL:075・371・3333 9:00~17:00 火曜休(20、21、22日にあたる場合は23日に振替) www.sasayaiori.com

落雁(らくがん)/8月15日 お盆

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先祖を祀る日であるお盆は、日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した大切な行事。7月13日の迎え火で先祖の霊を家に迎え、15日には送り火で御霊を送るが、新暦の現代では月遅れの8月の行事とする地域が多い。そして、仏壇に落雁をお供えする風習があるけれど、それは一体なぜなのか?

「もち米や麦などの穀物の粉に砂糖を加えて、木型に入れて打ち出す落雁。1600年代前半には日本にあったと考えられますが、そのルーツは残念ながら不明。お盆にお供えするものは、故人が生前好きだったもの、喜ぶものが基本ですが、落雁は花や食品が傷みやすい夏場のお供え物としてうってつけだったと考えられます。その形は、蓮や菊といった仏の世界を連想させる花や果物などを模したものが多いようです」

お供えした落雁は、お盆が過ぎれば“お下がり”として食べるのが古くからの習わし。仏様や先祖から分け与えられたありがたいものとして、心していただきましょう。

『落雁 諸江屋』 お供えづくし¥700 1849年、茶の湯の文化が息づく金沢で創業。方丈菓子や花うさぎなどの落雁を中心に、昔ながらの製法にこだわりながら加賀銘菓の伝統を今に伝える。お供えづくし(蓮の花、蓮の葉、水仙、水各1個、菊3個、花うさぎ10粒入り)は受注生産。 石川県金沢市野町1-3-59 TEL:076・241・2854 9:00~19:00 無休 http://moroeya.co.jp

青木直己さん 虎屋文庫研究主幹として和菓子の歴史と文化に関する調査・研究などに従事。退職後は大学などで講師を務めるほか、NHK時代劇の食文化考証を担当。著書も多数。

※『anan』2019年4月10日号より。写真・山口 明 スタイリスト・中根美和子 取材、文・野尻和代 撮影協力・UTUWA

(by anan編集部)

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