会社を辞めて、こうなった。【第8話】 ストーカー被害に遭う。
長年勤めた出版社を辞めて、なんの保証もないまま単身アメリカに乗り込んだ女性が悩みながら一歩一歩前進して、異国の地で繰り広げる新鮮な毎日を赤裸々にレポートします。
【第8話】ストーカー被害に遭う。
日本人女性は、とにかくよく声をかけられます。
こちらに来たばかりのときは、
「なんて皆フレンドリーなんだろう!」
「こんなにモテるなんて、生まれて初めて♡」
と少々浮かれてしまっていたのも事実です。
なんてことはない。これは、日本人女性はイージー(簡単にヤレる)だと思われているから。1か月ほどしてそれに気がつき、サンフランシスコに住むあらゆる男性に対して憎悪の念が沸いてしまっている今日このごろです。
女子校育ちで、恋愛沙汰も得意ではないほうの私。バツイチではありますがどちらかというと男っ気のない生活を送り、東京に住んでいた頃の週末は愛猫としか会話しなかった…ということも多々ありました。ギラギラした集いにもついていけず、帰宅しようと逃げるようにタクシーに飛び乗ったら「もっと器用に生きたほうがいい」と、他社の男性編集長に言い捨てられたこともあります。
アイツとの出会い。
そんな私が、ストーカー被害に合ったのです…。アイツとの出会いは、いつも通っていた図書館。新聞を読んでいると、スーツ姿の男性が時間を聞いてきました。「17時50分ですよ」と答えるとさらに会話を続けようとしてきます。
「もう行かないと」と断ると、「どこへ行くのか」としつこい。特に何も考えずに「下のフロアのヨガです」と伝えると、「一緒に行ってみても良いですか? ヨガに興味があるので」と丁寧な英語で聞いてきました。服装も会社員風だし、とりあえずホームレスではなさそう。まぁ別に断る理由も権利も無く、結局一緒にヨガをすることになりました。
ヨガ終了後に先生が週末に行うワークショップをアナウンス。
目が見えない人のためのヨガということでとても興味があり、「わー、わー絶対行きます!」とかなりエキサイトして先生に約束しました。週末ワークショップに参加すると、例の男性が。「貴重な土曜日にこういうワークショップに参加するとは、悪い人じゃなさそうだなぁ」というのが第二印象です。また、他の参加者がヨガマットを敷くのを手伝ってあげたりする様子も感じ良く思いました。ワークショップ終了後「この場所は危険なので、車で来ているなら彩を送ってあげて。私は他の参加者(目が見えない人たち)を送っていくので」と先生が彼に依頼。さすがに「密室に二人っきりか…」と警戒心がわきました。それを相手も感じ取ったのか「大丈夫だよ! 安心して!」と一言。
「このままわけのわからないところに連れて行かれたらどうしよう。うん、そうだそうだ、私は37歳。そうなったらやたらに破壊力のあるこの数字をしっかりと伝えて、萎えさせよう。いやというよりもむしろ相手の目的はただ殺すことだとしたら…。それともお金とか。お金無いよ! 無職だよ! でもあの先生が信用したぐらいなんだから、きっといい人よね。うん。そうだよ、そう。そう思いたい」。
英語があまり話せないので「イエス、ノー」ぐらいしか言えないくせに、頭の中ではめちゃくちゃひとり語りをしています。車の中で食事に誘われたので、誰も私の帰宅など待っていないくせにやたらと時計を気にしてみたりして「ホームステイ先にただちに帰らねばならない。夕食を彼らと食べるので」と強調した結果、何事もなく帰宅できました。一日を振り返ってみて悪い人ではないなと反省をし、その後LINEの連絡先を交換。