田代 わこ

限定の鳥獣戯画グッズも! 教科書で見た、国宝の日本絵巻が集まるゴージャスな展覧会

2023.10.22
東京・上野にある東京国立博物館 平成館で、特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」が開かれています。本展では、245件もの日本美術の名品が集結。そのうち、7割以上が国宝・重要文化財という大変ゴージャスな展覧会です。見どころや展示風景、グッズ売り場の様子など、詳しくご紹介します!

夢のような展覧会!

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特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景 ※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。

【女子的アートナビ】vol. 315

特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」では、平安時代から室町時代までに制作されたやまと絵の名品、優品を展示。特に、日本絵巻の最高傑作といわれる「四大絵巻」が10月22日まで30年ぶりに東京国立博物館に集結したことが話題となっています。

平安時代前期に成立したやまと絵は、平安時代から鎌倉時代頃は日本の人物や風景を描いた作品を指していました。中国由来の唐絵(からえ)や漢画(かんが)との交渉を繰り返しながら、やがてそれぞれの時代の最先端のモードを取り入れ、変化し発展していきました。

本展について、東京国立博物館 学芸研究部調査研究課 絵画・彫刻室長の土屋貴裕さんは、次のように述べています。

土屋さん やまと絵は、日本の美術史のなかでメインストリームとも呼ぶべき主題。やまと絵の歴史を見ることは、日本美術の歴史そのものを追うことになります。今回は、平安から室町時代までに限ってご紹介しているので、密度の濃い内容になっています。日本美術全集や教科書で見るようなものがほぼそろう、夢のような展覧会です。

やまと絵の歴史をざっくり

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特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、手前は国宝《山水屛風》鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺所蔵 展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)

では、見どころをピックアップしてご紹介。

最初の「序章 伝統と革新―やまと絵の変遷―」では、やまと絵の歴史をざっくりと捉え、屛風作品を中心に展示されています。ここでの必見作は、現存最古のやまと絵屛風といわれる国宝《山水屛風》(京都・神護寺蔵)。美しい山の景色のなかに、日本の貴族や庶民の営みなどが描かれている作品です。

この章では、室町時代に描かれた重要文化財《浜松図屛風》(東京国立博物館蔵)も展示。金銀の色彩を使って浜辺と松の絵を描いたダイナミックな作品で、先述の国宝《山水屛風》と比べてみると、やまと絵が時代とともに変化したことがわかります。

日本絵巻の最高傑作が登場!

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特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、国宝《鳥獣戯画》甲巻 平安~鎌倉時代・12~13世紀 京都・高山寺所蔵 展示期間:10月11日(水)~22日(日)

続く「第1章 やまと絵の成立―平安時代―」では、平安時代末に制作された「四大絵巻」が登場!

四大絵巻とは、《源氏物語絵巻》、《信貴山(しぎさん)縁起絵巻》、《伴大納言(ばんだいなごん)絵巻》、《鳥獣戯画》のことで、すべて国宝に指定されています。

国宝《源氏物語絵巻》は、愛知・徳川美術館と東京・五島美術館が所蔵。紫式部の「源氏物語」を絵にしたもので、12世紀前半に制作されました。王朝貴族の雅な暮らしが伝わる美しい絵巻物です。

国宝《信貴山縁起絵巻》は、平安時代末期作。奈良の信貴山朝護孫子寺が所蔵するもので、信貴山に毘沙門天をまつった僧、命蓮(みょうれん)の奇跡のストーリーを描いた絵巻です。米俵が空を飛んだり、村人たちの動きや表情がユーモラスに描かれていたりして、細部まで楽しめます。

東京・出光美術館が所蔵する国宝《伴大納言絵巻》も、平安時代末期作。866年に起きた応天門の放火事件をめぐる物語を描いたもので、応天門が炎上する場面や、火事場に集まってくる人々の姿などが生き生きと描かれています。

みんな大好きな国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)は、ウサギやカエルが出てくる甲巻が一番有名。擬人化された動物たちが水遊びをしたり、相撲をとったりする場面などが描かれています。

なお、二週間ごとに展示替えがあり、何度も通えば次々と違う場面を楽しむことができます。

第1章では、ほかに貴族たちの美意識が込められた美しい調度経本や能書たちによる貴重な書の作品、工芸品なども展示されています。

紫式部や妖怪の絵巻も!

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特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、重要文化財《紫式部日記絵巻断簡》鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館所蔵 

「第2章 やまと絵の新様―鎌倉時代―」では、鎌倉時代の新しいやまと絵を紹介。武家社会になり、写実的なものも好まれるようになった時代といわれますが、平安時代を懐かしむ作品も見ることができます。

ここでの必見作は、来年のNHK大河ドラマで注目を集める紫式部に関する作品です。そのうちのひとつ、重要文化財《紫式部日記絵巻断簡》(東京国立博物館蔵)では、藤原道長と、その娘の彰子などが色彩豊かに描かれ、見ごたえがあります。

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特別展「やまと絵 ―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、重要文化財《百鬼夜行絵巻》伝土佐光信筆 室町時代・16世紀 京都・真珠庵所蔵 会期中、展示替えあり

「第3章 やまと絵の成熟―南北朝・室町時代―」では、成熟期のやまと絵を展示。金銀を使ったキラキラと輝く華やかな作品や、妖怪が出てくるユニークな絵巻《百鬼夜行絵巻》(重要文化財、京都・真珠庵蔵)も楽しめます。

「第4章 宮廷絵所の系譜」では、天皇の近くで絵を描いていた宮廷絵師の仕事を紹介。さらに「終章 やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―」では、桜や柳、田園風景などを描いた美しい作品《日月山水図屛風》(重要文化財、東京国立博物館蔵)をはじめ、室町時代の屛風などが展覧会の最後を華やかに飾ります。

長場雄さんとのコラボグッズが超クール!

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本展は、オリジナルグッズもゴージャスです。

特に注目したいのは、人気アーティスト・長場雄さんと展示作品のコラボグッズ。国宝《鳥獣戯画 甲巻》(京都・高山寺蔵)と、重要文化財《土蜘蛛草紙》(東京国立博物館蔵)をモチーフに長場さんが描き下ろしたアートワークがTシャツやトートバッグなどのグッズになって登場しています! 

長場さんのシンプルな線で描かれた鳥獣戯画のウサギやカエルたちのイラストは、めちゃくちゃクール。ここでしか買えない貴重なグッズです。

本展は、12月3日まで開催。一部作品の展示替えや絵巻の場面替えも多いので、ぜひ何度も足を運んでみてください。

Information

会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)会期中、一部作品の展示替えおよび巻替えあり
休館日:月曜日(ただし本展のみ11月27日(月)は開館)
開館時間:9時30分~17時00分 ※金曜・土曜は20時00分まで開館(総合文化展は17時00分閉館、ただし11月3日(金・祝)より、金曜・土曜は19時00分閉館)※最終入場は閉館の60分前まで
会場:東京国立博物館 平成館
観覧料:一般 ¥2,100 / 大学生 ¥1,300 / 高校生 ¥900 /中学生以下無料 ※土・日・祝日のみ事前予約制(日時指定)

展覧会公式HP: https://yamatoe2023.jp/