志村 昌美

箭内夢菜と酒井麻衣監督が明かす「JO1・白岩瑠姫さんはサービス精神がありすぎて心配になった」

2023.8.31
幅広い層から人気を誇り、シリーズ累計発行部数55万部を超える汐見夏衛のベストセラー小説「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」。“純度100%”とも言われるラブストーリーがついに実写化され、話題を呼んでいます。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。

酒井麻衣監督 & 箭内夢菜さん

【映画、ときどき私】 vol. 598

マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の女子高生・茜と、自由奔放で学校でも人気者の青磁を中心に描いている本作。映画『劇場版 美しい彼~eternal~』やなにわ男子『初心 LOVE(うぶらぶ)』のMVなどを手掛け、気鋭のクリエイターとして注目を集めている酒井麻衣監督(写真・左)が監督と脚本を務めています。

そして、主人公・茜の親友である沙耶香を演じているのが、ドラマ『チア☆ダン』や『だが、情熱はある』などの話題作に出演が続いている箭内さん(右)です。今回は、おふたりに現場での様子や作品を通して気づいたいまの心境、そして最近ときめいたことなどについて語っていただきました。

―原作は女性から絶大な人気を誇っていますが、おふたりはどこに魅力を感じていますか?

箭内さん 茜はマスクをしていないと安心できない子ですが、そういう繊細な人はたくさんいると思うので、そこが共感を呼んでいるのかなと。共感というのは、心の支えにもなりますからね。私は先に拝見させていただきましたが、映像が本当にキレイで、泣けてきました。青磁くんの絵も素敵なので、たくさんの魅力が詰まっている作品だと思います。

監督 人の顔色をうかがったり、気を遣ったりして、何も言えなくなるのは大人になるにつれて多くなってくることだと思うので、そのあたりが描かれているのが魅力だと感じています。言いたいことを言いたいときにどうしたらいいのかという気持ちに寄り添った映画になっているといいなと思っています。あとは、箭内さんが言ってくださったように、キレイなものをみると心に響くものがあると思うので、ぜひそういうところも観ていただきたいです。

自分に自信を持つことが大事だと感じている

―マスクを手放せない茜に自分を重ねる人は多いと思いますが、実際にマスク着用が自由になったいま、ご自身の心境にも変化はありましたか? 

箭内さん 最初はマスクが苦しくて嫌だったんですけど、いざ外していいと言われたら、マスクをしていたほうが安心できていた自分がいることに気がつきました。それはつまり自分を閉ざしている部分があるからでもあるので、いまは自分に自信を持つことが大事だと感じているところです。

監督 この作品を映画化すると決まったときに、実は原作にあるマスクの設定を生かすか生かさないかという議論が最初にあったんです。私としてはそのままにしたいと伝えました。実際、マスクがお守りみたいな存在になっている子たちもいるので、映画にするうえでもそこは否定したくないなと。その部分は、真摯に繊細に描くように意識しました。

―なるほど。ちなみに、茜のマスクのようにおふたりにもなくてはならないアイテムがあれば教えてください。

箭内さん やっぱり携帯ですね(笑)。

監督 わかります!

箭内さん 私は中学生で初めてガラケー、高校生でスマホデビューなので、そんなに早くから持っていたわけではないのですが、いまではないと何もできなくなってしまいました…。特に、東京ではスマホがないとどこにも行けません。完全に依存していますね。充電が切れたりしたら、大変です!

監督 私も同じくスマホです。というのも、いつも寝る前に何かしらの動画を見ながらじゃないと寝られなくなってしまったので…。スマホで音楽を聴いたり、小説を読んだりする場合もありますけど、本当に便利ですよね。私もないと不安です。

箭内さんから純度の高い気持ちが伝わってきた

―大半の読者が共感していると思います。では、現場での様子についておうかがいしますが、監督は演出をする際に「どうしたらご自身が俳優たちの着火装置になれるか」を考えているとか。そんななか、監督が心を動かされたシーンはありましたか?

監督 それはつねにあった気がしています。今回は青春映画ということもあって、「まっすぐな気持ちって本当に素敵!」という瞬間がいっぱいありました。たとえば、箭内さん演じる沙耶香が茜と仲直りするシーンでは、友達を思うからこその雑味のない純度の高い気持ちが伝わってきました。「友達っていいよね」という言葉はよく聞きますが、それを改めて体感できたと思います。

―監督から箭内さんに、具体的な指示などもされていたのでしょうか。

監督 箭内さんとは、ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』のオーディションで出逢っていて、そのときから本当に素敵な女優さんだなと思っていたので今回もお願いしました。箭内さんは脚本を読み込む力がすごくありますし、人物の感情をしっかりと繊細に自分のなかに落とし込める方。

だからこそ、心からにじみ出るお芝居に胸を打たれます。ご一緒するのは2度目ですが、「お任せしても大丈夫」という信頼感があったので、特にリクエストすることもありませんでした。そういった安心感は役の人物像にも通じていたと思います。

白岩さんは、カリスマ性があるけど親近感もある人

―箭内さんから見た酒井監督の現場ならではの光景や思い出に残っていることなどがあれば、お聞かせください。

箭内さん 任せてくださっていたという言葉を聞いて、すごくうれしいです。でも、それができたのは、監督が演じる側の近くにいてくださったおかげだと思います。というのも、酒井監督の現場では自分が想像していた役のイメージ通りでいられるので、すごく演じやすい環境。部屋の雰囲気ひとつとっても言えることですが、映像に映るものすべてにこだわっていますし、どんな小さなことも見逃さないので、そういうところがすごいなと感じています。

―本作で主演を務めた青磁役の白岩瑠姫さんについてもお聞きしたいのですが、監督から見てどのような印象でしたか?

監督 私は白岩さんについては、「儚くて強い」と言う言葉で表現していますが、あとは本当に優しい方だなと思いました。実際、みんなのことをいつも優しいまなざしで見てましたからね。あとは、現場のムードを上げなければいけないときには、おちゃらけて盛り上げてくれるので、カリスマ性もあると感じました。

箭内さん 私も今回が初めてでしたが、会った瞬間にオーラを感じたので、本当に青磁くんみたいだなというのが第一印象でした。あと、クラスみんなで踊るダンスシーンでは、撮影の待ち時間にご自身が所属されているJO1のダンスを披露してくださったこともありましたね。そのおかげで場が和んで盛り上がったので、アイドル感はありつつも親近感があり、かわいらしさとさわやかさも持ち合わせている魅力的な方だと思いました。

仲良しのりんくまの新しい表情が見られた

―劇中と同じく、まさにクラスの人気者を地で行くタイプですね。

監督 サービス精神があるんでしょうね。いま話していたダンスシーンの撮影では、見ている人たちの反応を撮るときに、わざわざ踊ってくださっていたほどです。本来は俳優たちの表現力だけでも撮ることもできますし、カメラに映っていないので踊らなくても大丈夫なのに、それを全力で踊るんですよ。私としては、「まだ撮影あるから休んでてください!」と心配になってしまいました(笑)。

―映画初主演ながら、座長としてみなさんをしっかりと引っ張っていたんですね。また、茜を演じられた久間田琳加さんもとても素敵でした。

箭内さん 私は雑誌『Seventeen』で一緒にモデルをしていたこともあり、今回の現場でもたくさん話をしました。普段は「りんくま」と呼んでいるほど仲良くしているのですが、茜として不安を感じていたり、恋していたり、喜んでいたりする姿を見て、見たことのない新しい表情を見ることができたと思います。りんくまはつねに笑顔でかわいらしいので、茜にぴったりだなと感じました。

誰かが好きな人に対して向けるまなざしを見るのが好き

―本作では大人でも思わずときめいてしまうようなシーンがいくつもありましたが、最近おふたりがときめいた瞬間といえば?

箭内さん 少し種類が違いますが、最近は動物の赤ちゃんの動画をずっと見ています。ついにSNSのオススメにもそれしか出てこなくなりました(笑)。癒されますし、いつまでも見ていられます。

監督 この前、実写版の『リトル・マーメイド』を映画館で観ましたが、ときめいたのはやっぱりエリック王子です(笑)。私が好きなのはエリック王子がアリエルを見つめるまなざし。それを見るだけで「君のことを愛している」という気持ちが伝わってきますから。それが自分に向けられなくてもいいので、誰かが好きな人に対して向けるまなざしを見つめるのが好きです。

―そういう部分は、本作でも生かされたのではないかなと。

監督 そうですね。今回は特に、茜の目の描き方にこだわりました。たとえば、青磁に会う前や部屋でリップを塗っているとき、沙耶香から「好きなの?」と聞かれたときなど、甘酸っぱい恋をしているときの目をしてもらっています。

疲れて家に帰りたくないときは、映画館に寄ってほしい

―それでは、最後にananweb読者に向けてメッセージをお願いします。

箭内さん この作品では茜に共感できる方が多いと思いますが、それだけではなくて茜を思う家族のシーンもすごく素敵で私は大好きです。学生の方はもちろんですが、青春映画を観る機会があまりない大人の方でも楽しんでいただけると思います。母娘で観に行くというのもいいなと思うので、ぜひ劇場でご覧ください。

監督 私は1日の生活をするだけでも大変なので、洗濯や掃除、人によっては子育てをしながら仕事をしているみなさんは本当にすごいと思っています。ただ、そのなかで落ち込むときもありますし、気にしすぎてモヤモヤすることもあるのではと思っています。そういう気持ちはまさに茜や青磁の感情と近いと思うので、ボロボロになって寄り道をしたくなったときも、そうではないときも映画館に寄って観ていただきたいです。

インタビューを終えてみて…。

和気あいあいとした撮影にはじまり、終始楽しそうにお話をする酒井監督と箭内さん。その様子からも、現場でいかにいい関係だったのかが垣間見ることができました。「絶対に映画館で観てほしい!」と繰り返しお話されていましたが、スクリーンでしか味わえない体験があるはずなので、おふたりの言葉通り劇場での鑑賞をオススメします。

代わり映えのしない日常が色づきはじめる!

相手を想うピュアな気持ちと自分の本心を解き放つ大切さを思い出させてくれる本作。珠玉のストーリーを見事に再現した吸い込まれるような美しい映像にも、爽やかな感動と癒しをもらえる1本です。


写真・園山友基(酒井麻衣、箭内夢菜) 取材、文・志村昌美
箭内夢菜 ヘアメイク・エムズアップ 伊藤遥香 スタイリスト・髙橋美咲(Sadalsuud)
ワンピース(オルタデザインズ/株式会社オルタデザインズ TEL:03-6383-3782)、ジャケット(JUN OKAMOTO TEL:03-6455-3466)、アクセサリーすべて(ブランイリス/ブランイリス トーキョー TEL:03-6434-0210)

ストーリー

マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。いっぽう、絵を描くことを愛する銀髪のクラスメイト・青磁は、自由奔放に過ごしていた。茜は何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手だったが、 彼が描く絵とまっすぐな性格に惹かれはじめる。

そして、次第に茜の世界はカラフルに色づいていくのだった。そんななか、徐々に距離を縮めていくふたりの過去が重なりあい、誰にも言えなかった想いがあふれ出す…。

引き込まれる予告編はこちら!

作品情報

『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
9月1日(金)より全国ロードショー
出演:白岩瑠姫(JO1) 久間田琳加
   箭内夢菜 吉田ウーロン太 今井隆文 / 上杉柊平 鶴田真由
監督:酒井麻衣 
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)
脚本:イ・ナウォン 酒井麻衣
音楽:横山克 濱田菜月 主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース
配給:アスミック・エース
https://yorukimi.asmik-ace.co.jp/
(C)2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会