田代 わこ

「日本的なものは何でも好き」日本を称賛したスター芸術家、ウォーホルの展覧会

2022.10.9
京都市京セラ美術館で、ポップ・アート界の巨匠、アンディ・ウォーホルの大回顧展が開催中です。京都だけでしか開かれない今回の展覧会では、200点以上の作品を展示するだけでなく、日本とウォーホルの深い関係も紹介。現地の内覧会やトークイベントを取材してきました。

どんな展覧会?

【女子的アートナビ】vol. 261

『アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO』では、ポップ・アートの巨匠として人気を博したアメリカの芸術家、アンディ・ウォーホル(1928-1987)の初期から晩年までの絵画や立体作品など約200点と映像作品15作を展示。そのうち100点以上が日本初公開となっています。

今回展示されているものは、すべてアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品。同美術館は、ウォーホルの故郷であるアメリカ・ピッツバーグにあり、世界で最も多くのウォーホル作品と関連資料を所蔵しています。

『アンディ・ウォーホル・キョウト』トークイベントの様子

本展の開幕に合わせて、同館の館長パトリック・ムーア氏と本展のキュレーターで主任学芸員のホセ・カルロス・ディアズ氏がアメリカから来日。お二人がトークイベントなどで語った解説もご紹介しながら、展覧会の様子をレポートします。

大きな自画像からスタート!

『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景

会場に入ると、まずは大きな自画像がお出迎え。メガネをかけた無表情なウォーホルの顔が大きく描かれています。逆立った髪の毛の部分は光っていますが、顔半分が暗くなり、やや陰うつな雰囲気です。

本作品は、ウォーホルが早すぎる死を迎える9か月前に制作されたもの。彼の人生は、これから詳しく紹介していきますが、名声と悪評、光と影に包まれていました。

展覧会のイントロダクションで、まず彼の人生を象徴するような自画像と向き合ってから、本格的に作品世界へと入っていきます。

ウォーホラからウォーホルに…

『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景

1章「ピッツバーグからポップ前夜へのニューヨークへ」では、1950年代から60年代にかけて、商業イラストレーターとして活躍した時期の作品を展示。

アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグで生まれ育ったウォーホルは、1949年にカーネギー工科大学(現カーネギーメロン大学)の絵画デザイン学科を卒業。その後ニューヨークに移住し、商業デザインの世界でキャリアをスタートさせます。

彼の両親は、東欧の現スロバキア出身。敬虔な東方カトリック教徒の移民家庭で育ったウォーホルは、名前も「アンドリュー・ウォーホラ」でした。

館長のムーア氏は、「貧しい家庭で育ったウォーホルには野心があり、何が何でも成功して貧困から抜け出し、金持ちになって有名になりたいと思っていた」と解説。家族の中で唯一大学に行かせてもらえた彼は、母親からも期待をかけられていたそうです。

『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景

展示されている初期作品のうち、赤い靴が描かれたドローイング作品《ハイヒール》には、ウォーホルのサインが英語名で記入されています。ウォーホラからウォーホルへと名前を変えた彼は、その後商業イラストから本格的なアートの世界へと入っていきます。

初の世界旅行へ!

『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景

続く2章「ウォーホルと日本そして京都」では、初の世界一周旅行で立ち寄った日本で描いたスケッチや、写真、資料などを展示。ウォーホルにインスピレーションを与えた日本の文化や日本との関わりについて、詳しく紹介されています。

1956年、ウォーホルは友人のチャールズ・リザンビーと一緒に初めての海外旅行に出かけます。京都、東京、香港などアジアから、ニューデリー、カイロ、ルクソール、ローマなど世界各地を訪問。日本には6月21日から7月3日までの約2週間滞在しました。

展示作品のなかには、京都の都ホテルから母親に宛てて出したハガキや旅程表、地図などもあり、ウォーホルの京都旅を追体験できます。

本展キュレーターのディアズ氏は、ウォーホルの世界旅行について次のように述べています。

ディアズ氏 旅でウォーホルが最も印象に残った国は、日本だったとされています。当時アメリカでは日本旅行が人気で、万博や展覧会などで日本文化がたびたび紹介されていました。彼は日本を旅しながら清水寺や舞妓の姿などをスケッチに残し、また旅先で入手した地図やチラシなどの資料もすべて残しています。さらに着物や骨とう品、食器、川端康成の小説など、日本のお土産もたくさん買いました。

日本的なものは何でも好き!

『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景

会場には、ウォーホルが残した言葉も掲示されています。特に日本への愛を感じられる一文をご紹介。

「いま私は日本の花を描き、日本食を食べ、ケンゾーの服を着ている。そして日本製の写真やビデオやハイファイ、その他の電子機器も使っている。日本的なものはなんでも好きだ」

また、葛飾北斎の作品からインスピレーションを受けて描いた作品なども見ることができ、ウォーホルの日本愛をたっぷり感じられます。

ちなみに、初の海外旅行以降、74年に自身の個展開催のため日本を訪れたウォーホルは、日本のテレビコマーシャルやテレビ番組『徹子の部屋』にも出演。当時の写真も展示されています。

さらにウォーホルは、生け花の文化から大きな影響を受けたのですが、この点については後編で詳しくご紹介します。

後編はコチラをどうぞ。
https://ananweb.jp/anew/440769/

Information

会期    :~2023年2月12日(日)
休館日   :月曜日(ただし祝日の場合は開館)、12月28日~1月2日
会場    :京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
開館時間  :10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
       ※最新情報などの詳細は展覧会公式ウェブサイトをご覧ください
観覧料   :土日祝一般¥2,200、平日一般 ¥2,000、大学・高校生 ¥1,400、中学・小学生¥800

展覧会公式ウェブサイト: https://www.andywarholkyoto.jp/