衝撃…あの『スイミー』作家レオ・レオーニの知られざる過去
どんな展覧会?
【女子的アートナビ】vol. 192
『だれも知らないレオ・レオーニ展』では、おなじみの絵本原画だけでなく、大きな油彩画や彫刻、政治風刺イラスト、広告ポスターなど幅広い作品群が集結。制作スケッチなども合わせて200点以上の展示品があります。
会場になっている板橋区立美術館はレオ・レオーニと深い縁があり、1996年に日本ではじめて彼の展覧会が開かれたのもこちらの美術館。しかも、今後レオーニの遺族から多数の作品が寄贈される予定になっています。今回の展覧会では、その寄贈予定作品も見ることができます。
アメリカに亡命…
1910年、アムステルダムにあるユダヤ系の家に生まれたレオーニは、幼いころから芸術に触れる環境で育ち、イタリアの大学に通いながら作品展に出品したり、デザインの仕事を手がけたりしていました。
1931年に結婚、その後ミラノでデザイン会社を立ち上げます。
会場には、1930年代に手がけた羊毛製造会社のポスターや、毛糸商品のラベルなども展示。グラフィックデザイナーとしての意外な一面を知ることができます。
第二次世界大戦が近づくと、イタリアでも反ユダヤ主義的な人種法が制定され、レオーニは家族とともにアメリカへ亡命します。
ニューヨークで活躍!
戦後になると、ニューヨークを中心に広告デザイナーやビジネス雑誌のアートディレクターとして活躍します。
そのころの作品で特に目を引くのが、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の開館25周年記念ポスター。(上記写真の壁中央部にかかっている横長のポスターです。)ローマ数字で表された「25」のデザインと、原色系の色彩の組み合わせがとてもステキです。
衝撃の風刺画
華やかなデザインの仕事をするいっぽう、レオーニは政治風刺のイラストや水彩画も描いていました。大きな手がヒトラーを握りつぶしているような風刺画や、人種問題をテーマにした絵など、鋭い批判が込められた作品もあります。
展覧会の図録『だれも知らないレオ・レオーニ』(玄光社)によると、政治風刺画は近年の調査で発見されたとのこと。今回初公開となった作品も多いようです。特にヒトラーのイラストはおぞましさが伝わり、衝撃的でした。
スイミー誕生!
1959年、レオーニははじめての絵本『あおくんときいろちゃん』を出版します。1961年にアメリカからイタリアに帰国すると、広告デザインの世界から絵本や油彩画、彫刻などの制作へと移行し、1963年、あの『スイミー』が誕生します。
会場ではレオーニが描いたスイミー原画も展示されていますが、実は実際に絵本で使われた原画とは違うバージョンのもの。原画は現在、行方不明になっているそうです。
ゾクゾクする…! 平行植物
最後にご紹介するのが「平行植物」のシリーズ。1970年代からレオーニが取り組んでいる幻想的な植物の作品です。
油彩や鉛筆画、ブロンズ彫刻などで表現された植物たちは、生き物のようにも見えてちょっと不気味。作品に囲まれていると異世界にいるような気分になり、ゾクゾクします。
デザインからアートワークまで、幅広い作品を生み出したレオーニは、1999年、イタリアのトスカーナで亡くなりました。享年89歳。
限定品も…!
作品を見終わったら、ぜひミュージアムショップへ。Tシャツやポーチ、バッグ、マグカップなど、多彩なグッズがそろっています。
レオーニと縁の深い板橋区立美術館ならではの限定商品もあり、思わず大人買いしてしまう人も多いとか。絵本もあるので、贈り物にも使えそうです。
展覧会は1月11日まで開催。入場はオンラインでの日時予約が必要です。最新情報など美術館の公式サイトをご確認してからお出かけください。
文・田代わこ
Information
会期: ~2021年1月11日(月・祝)
休館日:月曜日・年末年始(12月28日~1月4日)(ただし、1月11日は祝日のため開館)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:板橋区立美術館
観覧料:一般¥650、高校・大学生¥450、小・中学生¥200
*土曜日は小中高校生は無料で観覧できます
*65歳以上・障がい者割引あり(要証明書)
公式サイト: https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001385/4001386.html