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志村 昌美

「実際にストリートガールとして立ってみた」体当たりな役作りを語る

2020.9.23
秋の夜長を感じ始める今日この頃。そんなときにオススメの映画は、闇夜を印象的に描いた注目作『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』です。そこで、昨年のカンヌ国際映画祭でも話題となった本作について、こちらの方にお話をうかがってきました。

ヒロインを務めたグイ・ルンメイさん!

【映画、ときどき私】 vol. 323

台湾出身の女優ルンメイさんが本作で挑んだのは、水辺の娼婦とされる“水浴嬢”として生きる女アイアイ。報奨金を掛けられた警官殺しの逃亡犯チョウと出会ったことで、後戻りできない道へと突き進んでいく様子が描かれています。今回は、驚きの役作り方法や撮影の舞台裏について語っていただきました。

―最初に、脚本を読んだときの印象はいかがでしたか? 

ルンメイさん ディアオ・イーナン監督とご一緒したのは2度目となりましたが、彼の脚本は読むとその場面が頭のなかに出てくるようなところがあるんですよね。今回の脚本を読んだときには、熱くてジメジメしたような印象を受けました。

―では、現場での監督の演出に関して、前作と違いを感じた部分もありましたか?

ルンメイさん まず、前作と一番違うところはスケールの大きさ。私自身も出演シーンが多かったですが、登場する人物の数が増えていましたね。でも、監督はどういったものを撮りたいかというのがはっきり表現できる方で、本当に細かいところまで把握されていると感じました。

ほかの監督と違うのは、自分の感情をきちんとコントロールできるところじゃないかなと思います。どんな困難な場面でも落ち着いて問題を解決してくれる監督です。

キャラクターの二面性を意識して演じた

―体当たりなシーンもありましたが、ご自身が演じた水浴嬢という役どころについては、どうお感じになったのかを教えてください。

ルンメイさん 私が演じたアイアイは、私たちが普段イメージするような典型的な風俗業界の女性とは違って、あまり風俗嬢っぽくない女性だと感じました。演じるうえで監督とも話し合ったのは、彼女の持つ二面性をどう出すか、ということ。その二面性とは、義理堅い面と風俗業界に属する女性が持つ特有の面ですが、最終的にはシンプルに表現することを一番大切に演じました。

彼女がそういう性格のキャラクターだったからこそ、ラストシーンであのような決定を下し、“冒険”を受け入れることができたんだろうなと思っています。

―なるほど。主人公のチョウを演じたフー・ゴーさんと共演されてみていかがでしたか?

ルンメイさん 彼はシンプルで無邪気な人。だからこそ、撮影中も無我夢中でキャラクターに近づくことができる俳優なんだなと感じました。あと、今回撮影していたとき、実は私はあまり体調がよくなかったのですが、彼はつねに私をサポートし、励ましてくれていたのです。それには本当に助けられました。

それから、フー・ゴーさんは早くから撮影場所である武漢に入って、現地の方言を習ったり、体づくりに励んだりしていましたが、そんなふうに努力している人を見ると、私も負けずに努力しなければいけないという思いにさせられましたね。でも、そのおかげで現場のみんなが同じ方向を向いていることを実感できました。

武漢は人間味と生活感があふれる場所だった

―武漢での撮影で思い出に残っていることはありますか?

ルンメイさん これだけ長い時間武漢にいたのは今回が初めてでしたが、私もクランクインする前から武漢に向かい、アイアイが住んでいるという設定の部屋にも1週間ほど住んでみました。ほかの地域とは違う場所なので、普段とはまったく違う体験をすることができたと思います。

私にとって武漢とは、人間味と生活感のあふれる場所。おじいさんとおばあさんがケンカをしていたり、みんなで麻雀をしていたり、制限のない自由で濃密な人間関係を目の当たりにすることができました。

―そういったリアルな街の雰囲気は画面からも伝わってきましたが、特に夜のシーンが印象的でした。

ルンメイさん 私たち俳優は時差を調整するくらいでしたが、チームとしては夜の撮影というのは、時間が限られているのでかなりの挑戦でしたね。そこは大変だったと思います。

―役作りのために、何か特別にされていたこともありますか?

ルンメイさん これは自分としてはおもしろい経験でしたが、アイアイの職業について知るために、私と同じく水浴嬢の役をしている女優さんと夜の公園に行ってみました。その公園は、一見普通に見えるけど実はストリートガールという女性がけっこうたくさんいる場所だったんです。

そういう人たちがどうやってお客さんの相手をしているのかを遠くから眺めたり、自分も実際にそこで立ってみたりもしました(笑)。そのときに、水浴嬢の女性たちの動きや姿勢などを学ぶことができたと思います。

光と影が生み出す美しい景色を楽しんでほしい

―なかなか危ない役作りをされていたんですね……。では、撮影中の息抜きとして、楽しみにしていたことは?

ルンメイさん 暇ができたときには武漢の公園で、おじいちゃんやおばあさんと一緒に麻雀をしていました。最終的には、友達のように仲良くなってしまい、「また来たの?」と言われたり、「こういう手はよくないよ」とダメ出しされたりするまでの仲になりましたね(笑)。

―ステキな思い出ですね。それでは最後に、観客に向けてメッセージをお願いします。

ルンメイさん イーナン監督と組んだ前作とはまた違うキャラクターを監督と一緒に新しく作り上げました。ぜひ、劇場へ足を運んでいただき、このなかで描かれている光と影が生み出す美しい景色を楽しんでいただけたらうれしいです。

インタビューを終えてみて……。

クールビューティな印象とは違って、意外な一面を教えてくれたルンメイさん。危険な目に遭わなくて何よりでしたが、大胆な役作り方法には思わずびっくりしてしまいました。ぜひ、劇中でルンメイさんが放つ存在感に注目してみてください。

危うい展開から目が離せない!

闇夜のなかで絡み合うそれぞれの思いや孤独を描いた革新的ノワール・サスペンス。引き込まれるストーリー展開と印象的な映像美、そして中国ならではの独特な景色を存分に堪能してみては?

ストーリー

2012年、中国南部の鵞鳥湖周辺地域では、ギャングたちの縄張り争いが激化していた。そんななか、刑務所を出所した裏社会の男チョウは、対立する窃盗団との揉めごとに巻き込まれ、誤って警察を射殺してしまう。

自らに掛けられた高額の報奨金を妻と息子に残そうと画策するチョウの前に妻の代理として現れたのは、水浴嬢として生きる女アイアイだった。警察と報奨金を狙う窃盗団とに行く手を阻まれた2人は、袋小路に迷い込んでいくことに……。

心を乱す予告編はこちら!

作品情報

『鵞鳥湖の夜』
9月25日(金)より、全国ロードショー
配給:ブロードメディア・スタジオ
©2019 HE LI CHEN GUANG INTERNATIONAL CULTURE MEDIA CO.,LTD.,GREEN RAY FILMS(SHANGHAI)CO.,LTD.,
http://wildgoose-movie.com/