三浦大知ら数々のアーティストとコラボ! SOIL&“PIMP”SESSIONSの魅力

写真・大嶋千尋 取材、文・かわむらあみり — 2019.12.7
音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第17回目に登場するのは、日本のみならず海外でも高い評価を得て、ワールドワイドに活躍しているジャズバンドのSOIL&“PIMP”SESSIONS(ソイルアンドピンプセッションズ)!

結成時から世界を視野に入れてバンド活動開始

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写真左から社長(Agitator)、タブゾンビ(Tp)。

【音楽通信】vol.17

2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンで結成された5人組のジャズバンド、SOIL&“PIMP”SESSIONS。2005年にイギリスのBBC RADIO1主催「WORDLWIDE AWARDS2005」で「John Peal Play More Jazz Award」を受賞以降、海外での作品リリースや世界最大級のフェスティバルといった数々のイベントに出演し、卓越した演奏力とエンターテインメント性で、国内外のリスナーを魅了し続けています。

ワールドワイドな活動を行いながら、日本では映画やドラマの劇伴も手がけるほか、これまでにRADWIMPSの野田洋次郎さん、三浦大知さん、椎名林檎さんなど多数のアーティストともコラボレーション。そんなSOIL&“PIMP”SESSIONSから、アジテーターの社長さん、トランペットのタブゾンビさんのおふたりに、12月4日にリリースされたニュー・アルバム『MAN STEALS THE STARS』についてお話をうかがいました。

ーー以前のことから少し振り返らせてください。バンドを結成されるまでは、それぞれ別のバンドで活動されていたそうですね。

社長 はい。タブゾンビは学生でありながら、ミュージシャンとしても仕事をしていました。

タブゾンビ 社長はウェブデザインの仕事もしていたよね。ピアノ担当の丈青(じょうせい)はプロのジャズミュージシャンだったし、みんないろいろなことをやっていました。

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バンドのスポークスマンでもある社長(Agitator)。1月18日、福井県生まれ。

ーーこれまでに世界31か国で公演を行っていますが、バンド結成当初から、日本だけではなく海外での活動も視野に入れていたのですか。

社長 そうですね。

タブゾンビ ですです! あの、鹿児島県出身なんですが、「ですです」は鹿児島弁で「そうなんです」という意味です(笑)。結成当初から、世界を視野に入れて、バンド活動をしていました。

ーーあらためて、社長さんとタブゾンビさんのお名前の由来はなんですか。

タブゾンビ 僕はいつから、タブゾンビなんだろうね。

社長 ずっとタブゾンビじゃないかな。僕ら大学の同級生なんですが、出会った時からタブゾンビと呼ばれていましたから。

ーーアメリカのミュージシャンの「ロブ・ゾンビ」は関係がありますか。

タブゾンビ はい、名前をいただきました(笑)。もともとロブ・ゾンビがやっているようなハードな音楽が好きだったことと、本名が椨(たぶ)なんです。それにゾンビ映画が好きで、ゾンビにも詳しいんですよ。

社長 基本的に、この人が名前を考えます。

タブゾンビ 当時は、インパクトをとても大事にしていたので、どうやったら人に忘れられない名前になるだろうと考えました。「社長」は絶対に忘れられないじゃないですか。タブゾンビも、「タブ」は忘れられるかもしれないですが、「ゾンビ」という言葉は印象的だから、心に残ると思ってつけたんです。

社長 そうだったねえ。でも、僕は「社長」というのもねぇって、当時は複雑に思っていました(笑)。

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タブゾンビ(Tp)。4月13日、鹿児島県生まれ。

ーー今年の10月にはヨーロッパツアーを実施されていましたが、ロンドンでのワンマン公演もありましたね。

タブゾンビ はい。わりと毎年、ヨーロッパツアーをやっているんですが、今回は3日間にわたって『Ronnie Scott's』という、イギリスで1番の伝説的なジャズライブハウスでワンマン公演を開催しました。毎回、海外公演もソールドアウトすることが多くて、今回も3日間とも完売しています。

ーーすごいことですね。

タブゾンビ そんなことないです(笑)。

社長 今回、ヨーロッパに行っていたのは1週間くらいで、いつもはもっと長く滞在するので、期間が短かかったですね。

タブゾンビ 僕ら歳なので、長い海外ツアーはダメなんです(と小声になる)……。

社長 なんで小声になっていくの(笑)! でもまあ、いいライブができたね。

タブゾンビ ですです。

社長 ジャズクラブで1日2公演を3日間やって、その翌日は、アムステルダムでエレクトリックなクラブミュージックでのフェスティバル最終日に出演させてもらったんです。

タブゾンビ 「日本人のお客さんは多いんですか」とよく聞かれるんですが、日本人の方は少ないんですよ。ほとんど現地の方が来てくれています。

ーーSOILさんの音楽が、海外の方に受け入れられている1番の魅力は何だと思いますか。

社長 僕らの音楽は、ほかにはない感じのジャズだと思うので、面白がって聴きにきてくださる、楽しみにしていてくださるんじゃないかと思います。本当に、たくさんの方に毎回楽しんでいただいています。

タブゾンビ やっぱり、カッコいいからじゃないですかね(笑)!

社長 いやいやそれは(とタブゾンビさんにツッコミを入れる)。

タブゾンビ いや、音楽がカッコいいからという意味です。だって、そうじゃないとお客さんは来ないでしょ。

社長 そうねえ。とくにトークはすべってるしねぇ(笑)。

タブゾンビ 社長のトークはねぇ。自分の紹介のときだけ、すべってたね。

ーーロンドンとアムステルダム、そして日本と、オーディエンスの様子はどのように違いがありますか。

タブゾンビ ライブとその特性にもよりますが、ロンドンでは音楽を聴かせることに集中していますね。若い子もいれば、おじいちゃんも来てくれていますが、より音楽的なライブをやると反響があります。日本ではパーティっぽい感じで攻めることが多いですね。

“架空の詩人”というキャラクターが時空を超える物語

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ーーそして、ニューアルバム『MAN STEALS THE STARS』は、どのような思いで作られたアルバムでしょうか。

社長 アルバムを作ると決まった最初の段階で、各々が曲を作ってくるんです。今回はタブくんが「こういう方向性はどうかな」と何曲か持ってきまして、それが本当にすばらしいクオリティで、すぐに世界観が伝わるようなものでした。

タブゾンビ 持っていった曲を聴いて、丈青さんが「『ブレードランナー』(1982年公開のSF映画)みたいだね」って言ったんだよね。

社長 そう。その例えを聞いてなるほどと思って、よりアルバムの世界観がかたまりました。丈青も制作の初期タームからかなり曲を書いていましたし、タブくんのビジョンと丈青の曲が骨格となって、アルバムの物語となる世界観の基礎ができあがって、そこから制作が加速していった感じですね。丈青は、このアルバム全体を通しての音楽監督としても緻密にディレクションしてくれました。

ーー私はタイトルを拝見し、アルバムを聴かせていただいて、星新一さんのSF小説のような世界を思い浮かべました。

タブゾンビ 星新一さん、いいですねぇ。近い世界観ですね。

社長 やっぱりこの“宇宙”というテーマであったり、時空を超えた多次元の世界の物語だったり、そこを自由に超越して行き来することができる“架空の詩人”というキャラクターができあがったりと、そういうキーワードもタブゾンビくんが出してくれました。

タブゾンビ ですです(笑)!

社長 タイトルに関しては、1曲目でポエトリーリーディングとしてフィーチャーさせていただいた音楽家で詩人の山崎円城さんが、タブくんのテーマを受けて、すばらしい詞を書いてくださったんです。その中の一節に「MAN STEALS THE STARS」という言葉がありました。

タブゾンビ 最初、僕がさまざまな言葉を山崎さんに送って、そのなかにあった「星を盗むもの」という言葉を使って英語にしてくれたのでよかったです。

社長 その詞の中には、最後に「last of the poets」という言葉があって、架空の詩人というキャラクターの持つテーマが、音楽とカチッとハマりました。アルバムを聴くと、ひとつの映画を観ているような作品に仕上がっています。

タブゾンビ ですです。

ーータブゾンビさんはトランペッターですが、いつもどのようにして曲作りをされているのですか。

タブゾンビ パソコンで作ります。丈青さんはピアノで作っていますね。

社長 僕もパソコンで曲作りをしています。

ーーアルバムのなかで「とくにこの曲を聴いてほしい」というおすすめの曲はありますか。

タブゾンビ 全曲を通して1個のストーリーなので、全部聴いてほしいかな。サブスクリプションの時代ですから、1曲ずつでも聴けますが、全曲を通して聴いていただけるアルバムになるといいですね。

社長 ストーリー性を置いておいて、もし僕らのことを知らない方が、「入り口」として1曲聴いていただくとしたら、4曲目の「Reptilian’s Dance」がおすすめですね。スタジオでの一発録りでできた曲で、みんなで有機的に録れた曲なので、ワクワクします。

あと10曲目「Space Drifter」は、リード曲的な扱いになりそうな“操縦不能の宇宙飛行士”のようなイメージの曲なので、このへんから入っていただいて、そこから全体を通して聴いていただくと深く知ってもらえるかなと思いますね。

映画を楽しむように聴けるアルバムが完成

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ーー来年は1月、2月と全国ツアーがあります。どのようなステージになりそうでしょうか。

社長 アルバムの曲を演奏すると思うんですが、タブゾンビくんの頭の中にライブのビジョンがあると思うので、それを実際にどう落とし込んでいくかというところですね。

タブゾンビ ステージングについては、みんなでアイデアを出すので、いずれプレゼンしようかなと思っている状況です。

ーーアルバムをリリースされて、ツアーをされたあとは、また制作期間に入られるのですか。

タブゾンビ アルバムを出して、ツアーをしたら、フェスが始まりますね。社長も自分でフェスをやっていますし、僕もフェスをやっています。そして制作をして、終わったら夏フェスが始まり、海外フェスがあり、ジャズのライブハウスツアーもあって、そしてまた制作に入ってとやっていたら、あっという間に1年経ちますね。

社長 その合間にサントラなどの外仕事もあって、その先もまたお仕事をいただけたらいいなと思いながら、あっという間に1年です。
 
ーーお忙しいかと思いますが、お休みのときはどのように過ごしていますか。

タブゾンビ 家族とどこかに行ったりしますね。

社長 隙をみては動画配信サービスなどで映画を観ています。車も好きなので、車をいじったり、洗ったり、ドライブしたりもします。

ーーでは最後に、アルバムをどのようにみなさんに聴いてほしいでしょうか。

タブゾンビ ananwebの読者のみなさんにも聴いていただきたいんですよ。そのためには、何て言えば心に刺さってくれるかな。

社長 「アルバムを聴くときれいになります!」と言いたいですが、それはウソだし(笑)。

タブゾンビ そうだね(笑)。

社長 みなさんそれぞれ、好きに聴いていただいていいんです。でも例えば、みなさんが映画を1本観るお時間を少しいただいて、このアルバムを2回聴いてくださると、SF気分が味わえます! って、これどう(笑)?

タブゾンビ SFに興味ないかもしれないよ(笑)。このアルバムは、映画を楽しむ感じで聴けるので、おすすめです。画を観るのではなく、“画を思い浮かべながら聴く音楽”ということで、脳内映画が楽しめます。

社長 ぜひ聴いてください。

取材後記

圧倒的なパフォーマンスと作品性で知られる姿とはまた違った、取材時の社長さんとタブゾンビさんの様子は、なんともユーモアにあふれていらっしゃいました。SOIL&“PIMP”SESSIONSさんは、これからも国内外で活躍されることでしょう。まずは、インストゥルメンタルを中心としたオルタナティブなジャズを展開する、ニューアルバムをチェックしてみてくださいね。

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SOIL&“PIMP”SESSIONS PROFILE

タブゾンビ(Tp)、丈青(P)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)、社長(Agitator)からなるジャズバンド。2001年、バンド結成。ライブを中心とした活動を身上とし、確かな演奏力とクールな雰囲気を漂わせながらも、ラフでエンターテイメント、バースト寸前の爆音ジャズを展開。2005年、英BBC RADIO1主催の「WORLDWIDE AWARDS 2005」で受賞以降、海外での作品リリースや世界最大級のフェスティバル「グラストンベリー」、「モントルージャズフェスティバル」、「ノースシージャズフェスティバル」など、数々のビッグフェスに出演。

これまでに31カ国で公演を行うなど、ワールドワイドに活動し、国内でも数々のアーティストとコラボレーション。2017年、TBS系ドラマ『ハロー張りネズミ』の劇伴や主題歌を担当、2018年は三浦大知をはじめ豪華ゲストが参加したアルバム『DAPPER』をリリース。2019年、フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士QUEEN』、『妖怪人間ベム』の新作アニメ『BEM』(テレビ東京系 毎週日曜深夜1時35分)のオリジナルサウンドトラック『OUTSIDE』をリリースするなどドラマの劇伴楽曲も手がけ、多岐に渡り活動の幅を拡大している。

12月4日、アルバム『MAN STEALS THE STARS』をリリース。12月23日には恵比寿The Garden Hallで、2020年1月17日からはアルバムを引っ提げた全国ツアー「TOUR 2020“MAN STEALS THE STARS”」を3月4日まで開催する。

Information

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New Release
「MAN STEALS THE STARS」
01.Man Steals The Stars
02.Monad
03.In The Twilight
04.Reptilian's Dance
05.Galaxy Lady
06.Tell A Vision
07.Lost Memories
08.Lyra's Attack
09.Chill 16
10.Space Drifter
11.Go Ahead
12.Bach
13.Utopia Traces

<初回限定盤DVD>
SOIL&”PIMP” SESSIONS in London 〜Live at Ronnie Scott’s 20191019〜

12月4日発売
VIZL-1672(初回限定盤)
¥3,800(税別)
VICL-65274(通常盤)
¥2,900 (税別)

SOIL&“PIMP”SESSIONS オフィシャルサイト
https://www.jvcmusic.co.jp/soilpimp/