MY CARE WORK 03 井上咲楽×秋本可愛と理解を深める 介護のしごとの可能性。

写真・小笠原真紀 スタイリスト・池田木綿子 ヘア&メイク・NADEA 取材、文・鈴木恵美 撮影協力・杜の風・上原 PR・厚生労働省 — 2023.10.25〔PR〕
知らないことが多い介護の世界。そこで読者を代表してタレントの井上咲楽さんが抱いた素朴な疑問に、介護業界に詳しい秋本可愛さんが答えてくれました。井上さんは今回の対談のために実際に介護施設も見学。その率直な感想も聞きました。
左:井上咲楽 Sakura Inoue
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。高校1年で芸能界デビュー。バラエティ番組のほか、時事問題にも関心が高く、選挙コメンテーターとしても活躍している。2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』に出演予定。
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右:秋本可愛 Kaai Akimoto
1990年生まれ、山口県出身。株式会社Blanket代表取締役。大学在学中の介護現場でのアルバイトをきっかけに課題意識を抱き、会社設立。介護に志を持つ若者の日本最大級のコミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。

介護業界は将来性が高く、活躍できる場所も多い。

高齢者が増えていることから介護ニーズはより高まっているが、介護を身近に感じる機会は意外と少ない。介護業界の人材不足問題は、ニュースを見て知っていたという井上咲楽さん自身もこれまでに介護に直接触れる機会はなかったとか。そこで介護の世界を深く知るために、介護の現場を初訪問。今まで抱いていた疑問や今回感じた想いを、介護業界の人材不足の課題解決に取り組む秋本可愛さんにぶつけて、介護の仕事の可能性について、ふたりで考えてもらいました。

秋本 井上さんは、これまでに介護の仕事についてどのようなイメージを持たれていますか?

井上 大変そうという印象を持っていました。人手不足や離職率が高いというニュースもよく見るので、日々業務に追われて、精神的にもキツイ仕事なんだろうなぁと。私の周りに介護に携わっている方があまりいないので、漠然とした印象しか持ってませんでしたが…。

秋本 そのような印象をお持ちの方が多いと思います。実際、私も大学の時に介護の現場でアルバイトをしていたのですが、たった2年働いただけでその現場での勤務歴が2番目に長くなったくらい、介護職員の入れ替わりが激しくて、当時は定着率が悪かった。それでも最近は介護職員の数は年々増加していて、定着率も改善され、現在は約215万人の方が介護の現場で働いています。介護人材は着実に増えていますが、それ以上に介護が必要な高齢者が増え続けており、団塊の世代が後期高齢者となる2025年度には、約243万人の介護職員が必要になるともいわれています。

井上 そんなに…。でも良い方向に考えると、需要が高まっているからこそ活躍できる場所が多いということですよね。

秋本 そうなんです。実は介護施設や事業所の数は、コンビニ以上。でも井上さんと同じように日常生活の中で介護と関わる機会がなかったりするので、若い世代に関心を持ってもらいづらいのが現状です。そこで私は“全ての人が希望を語れる社会”をビジョンに、若者が介護に関心を持つきっかけを作ってもらうためのイベントを企画したり、若者が活躍できる環境づくりに注力しています。

井上 秋本さんが、介護に興味を持ったきっかけは何ですか?

秋本 大学で起業サークルに所属していたのですが、同じチームメンバーのおばあちゃんが認知症になってしまい、自分のいろんなことを忘れて悲しがっていたんです。そこで認知症予防のためのコミュニケーションツールとしてフリーペーパーを発行したのが始まりです。その後、認知症のことがもっと知りたくなり、デイサービスでアルバイトを始めました。介護の現場に携わってみて、思うように生活ができない高齢者の方を間近で見ました。年を重ねた先に、自分の人生を否定したくなるような経験をすることもあって、生きているって必ずしも幸せなことばかりではないんだなぁと感じました。

井上 実は私の祖母は85歳なんですが、最近一気に老け込んで、以前のような元気がなくなってしまったんです。まだ介護サービスを受けていませんが、会うたびにものすごいスピードで覇気がなくなっていくので、自分自身どう受け止めたらよいかわからず…。

秋本 身近な人のそういう状況を目の当たりにするのは辛いですよね。でも実は、介護サービスを使い始めたら元気を取り戻す方も多いんです。家族の中でどうすることもできないから介護を受けるというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、専門的なケアをしっかり受けることで心身の健康を維持できるようになり、状況が好転することもよくあります。

井上 そうなんですね。たしかに今日、介護施設で入居者さんの生活の様子を見学させていただき、みなさん生き生きと楽しそうに過ごされていると感じました。

入居者さんの生活やリハビリの様子を見学する井上さん。実際に入居者さんの身だしなみを整えるお手伝いにも挑戦。現場の方から「話を引き出すのが上手なので、介護職に向いている!」とのお墨付きも!

介護の現場に触れて感じた面白さとは?

秋本 実際に「杜の風・上原」(MY CARE WORK2)で、現場の雰囲気を感じていかがでしたか?

井上 まず明るく清潔感のある空間が広がっていて驚きました。働いている方も若い方が多く、入居者さんと仲良く話している姿が印象的で、私が持っていたイメージがだいぶ変わりました。表現が合っているかわかりませんが、スタッフさんも心が円い方ばかり(笑)。

秋本 それは入居者さんたちのおかげかもしれませんね。私もアルバイトしていた頃、利用者さんたちが私の知らないことを教えてくれたり、悩み事に対してアドバイスをくれたり、こんな若輩者の自分を全部受け入れてくれたんです。そういう意味では、ケアする立場ではあるけれど、同時にケアされる立場でもあるのが介護の面白さだと感じました。

井上 わかります。私も入居者さんと触れ合った時、最初は緊張して小さな声になってしまい反応がなかったんです。でも耳の遠い方だと知ってもう少し大きな声で話しかけたらすぐに応えてくれた。介護って一方的なものではなく、双方向的に理解を深めていくことで、良い関係が築けるものだと思いました。でも、なかには気難しい方など、うまくコミュニケーションがとれない方と関わることもありますよね。介護職員が、利用者さんから暴言や暴力を受けることもあるとニュースで見ました。

秋本 はい。認知症が進行すると暴言を吐いたり、物を投げたりする症状が見られることがあります。しかしそういう行動の裏には本人なりの理由があるので、短期的な改善はなかなか難しいかもしれませんが、その方をじっくり観察してその理由を見つけていくのが大切です。認知症によってその人の良さが見えづらくなっているので、それを関わりによってもう一度引き出していくことで信頼に繋がったりします。でもやはり人が相手なので、うまくいかないこともあります。精神的に追い込まれてしまい、介護職員が利用者さんに暴言を吐いたり虐待してしまうケースもあります。だから介護する側の誰もが被害者にも加害者にもなり得るということを認識した上で、チームで日々向き合っていく必要があると思っています。

井上 すごく難しい問題ですね。それに介護に携わっていればどうしても死と向き合わなければならない時がきますよね。

秋本 それも避けられませんね。お看取りは精神的な負担が大きく、どうしても悲しい気持ちになりますが、その一方で不謹慎かもしれませんがやりがいでもあるんです。その人の最期に寄り添い、人生を幸せに締めくくれるかどうかも、介護職員にかかっていたりする。良いお看取りができれば、そのご家族を元気にすることもできるし、その後のその人たちの人生にも影響すると思っています。

井上 たしかに。いいカタチでお看取りができるようにサポートするのも介護していく上で重要なお仕事なのですね。

人の人生に深く関わることで彩りが生まれる。

秋本 大変な部分はもちろんたくさんあるけれど、介護の面白い部分をもっと多くの方に伝えたいと私は心から思っています。

井上 私も少しの時間ですが、入居者さんと触れ合ってすごく楽しかったです。ある方の部屋にお邪魔した時に、ショパンの楽譜が置いてあったんです。その方がショパン好きでピアノで弾きたいと知って、スタッフの方が楽譜を持ってきてくれたそうなんですが、その人の生活に彩りを添えていくお手伝いができるのも介護の仕事の醍醐味だと思いました。私もその曲が聴きたくなりました(笑)。

秋本 それはありますね。自分と全く年代が異なる方の人生や生活に深く関わることができるって、すごく貴重な体験だし、教わることもたくさんあるので、介護する側の人生にも彩りが生まれます。

井上 人との関わりの上に成り立っている仕事だから、介護には正解がないのかもしれませんね。

秋本 そうなんです。生活はもちろん性格や状態もみなさん異なるので、その人に合ったやり方を見つけていくしかない。それを考えるのも面白い部分ではあるし、それがうまくいって喜んでもらえた時は跳びはねたくなるぐらい嬉しい気持ちになります。自分が関わったことに対して変化や反応がダイレクトで見られるからやりがいを感じることが多いんです。

井上 それが介護の仕事の魅力のひとつなのかもしれませんね。

お互いの人生に
彩りを与えられるのが介護。(井上)

関わり方は人それぞれ。
だから介護は面白い。(秋本)


実際に働くってどうなの? 介護職の現状と未来。

介護の世界を垣間見たところで、ここでは、将来の選択肢として、もう少しリアルに考えてみよう。もし自分が介護の現場で働くことになったら? 知っておきたい素朴なギモンに秋本さんが回答。

お話を伺った方:秋本可愛さん
株式会社Blanket代表取締役。介護の力でより良い社会を目指すコミュニティ「KAIGO LEADERS」を立ち上げ、組織や地域を超えて、介護現場が繋がれる場作りを行う。


人に興味のある人向け。現在は売り手市場です!

介護職は、将来性のある職業選択のひとつで、社会貢献度も非常に高い職業。しかし世間では、介護職の離職率の高さが取り沙汰され、「興味はあるが、本当に働き続けられるか不安」と思っている人も少なくないはず。そんな声に、介護事業者の採用活動や人材育成の支援を行う「Blanket」代表の秋本可愛さんは、「介護職の離職率は、世間で言われているほどそこまで高くない」と話す。

「公益財団法人介護労働安定センターが発表している『令和4年度介護労働実態調査』によると、介護職員の離職率は、14.4%。厚生労働省が実施した『令和4年の雇用動向調査』によると全産業平均の離職率は15.0%ですから、むしろ介護職員のほうが低いくらいです。たしかに15年くらい前までは離職率が20%を超えていましたが、介護職員処遇改善加算など、処遇改善の動きが進んだり、テクノロジーの導入などの働きやすい職場作りが進んだため、介護職の離職率が年々低下しています」

ちなみに現在の介護職全体の男女比はおおよそ3:7。女性が活躍しやすい業界ともいえるよう。

「なかでも人への興味・関心が高い人が向いていると思います。介護は、利用者さんひとりひとりが気持ちよく快適に生活を送るためにどうすればよいか、職員がじっくり観察して、創意工夫することで、安心や楽しみを提供する―。そういう意味では、クリエイティビティを発揮しやすく、面白さややりがいを感じられる仕事です。しかし、施設や事業所によって考え方も異なるので、実際に働きたい! と思ったらまずはその希望の就職先を自分の目で見てほしいです。実際に足を運ぶことで、働きやすい環境が整っているか、利用者さんの表情はどうかといった、募集要項などからは見えてこない一面を垣間見ることができる。選ばれるだけでなく自分も選ぶという姿勢で施設や事業所を見てみる意識を持ちましょう」

今以上に需要が伸びていくことが確実視されている介護業界。自分の中で可能性が感じられたら、今後のキャリアの選択肢のひとつに検討してみるのもよいのでは?


介護のしごと、素朴なギモン

Q.1 未経験でも働ける?

成長産業のため未経験でも新規の求職者は歓迎される傾向にあります。実際に、異業種から介護職に転職する方の多くが未経験からスタート。10代~80代の幅広い年代の方が活躍しており、年齢を問わず第一線で長く働ける業界なので、セカンドキャリアに選択する人も増えています。介護の現場で働いている年代層は、40代が最も多く、20〜30代の介護職員が少ないため、将来を見越して若い方はより歓迎されるでしょう。

Q.2 働くためには資格は必要?

無資格で働けます。ただし訪問介護に従事するには、研修の修了などが必要です。研修や資格には、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士などがあり、介護職員初任者研修は、基本的な知識やスキルが学べる公的な研修で、実務なしでスクールに通い、最短約1か月で修了できます。働きながら国家資格である介護福祉士を受験するためには、介護福祉士実務者研修の修了資格と3年以上の実務経験がマスト。

Q.3 働き方は自由に選べる?

介護業界は、時間や曜日の希望が出せるシフト勤務の事業所が多いため、働き方は比較的自由に選べます。フルタイムで働いている方もいますが、時短勤務や週数日のみ働いている方も。だから結婚、出産、育児といったライフステージの変化に合わせて、働き方を変えやすく、長く働き続けられる職種といえるでしょう。またシフト制のため副業や、他の職種と兼務することもでき、自分のペースで柔軟に働けるのも魅力です。

Q.4 お給料はどのくらい?

国の統計では、介護職の平均年収は約360万円。働き方や施設・事業所によってお給料は大きく変わってきますが、より働きやすく整備された職場作りを目的に、国が処遇の改善に努めているため、介護職の給料は年々増加傾向にあります。また介護職は、無資格で働けますが、たくさんの種類の資格があり、取得することで給料が上がります。夜間に働くと手当がつくため夜勤シフトをたくさん入れることで多く稼ぐことも。

Q.5 どんな職場がありますか?

特別養護老人ホームなどの施設で提供される「施設介護」と、自宅で暮らす介護を必要とする人の生活を全面的にサポートする「在宅介護」に大きく分かれます。その中にも様々な形態あるので、自分の能力や性格に合った環境を選んで働くことが大切です。女性が長く働ける職場作りを目指し、保育園を併設する事業所も増えています。介護職の方の労働環境がより良くなるよう、多くの方に理解を広めていきたいです。

Q.6 キャリアアップはできる?

介護職はキャリアアップしやすい職種といわれています。資格取得の支援をしてくれる事業所もあります。また、利用者さんのケアプランを作成するケアマネジャーの資格取得に挑戦したり、利用者や家族を対象に相談などを担う生活相談員になったり、長く働き続けることで管理職などの上位職に就くこともできます。資格を取得することでたくさんの現場で求められる人材になれるので、働き方の選択肢がぐっと広がります。

Q.7 興味を持ったらまずは何から始めたらいい?

介護業界を深く知ってもらうためのイベントを行政や民間が頻繁に開催しているため、ぜひ参加して介護の世界に触れてみるのがおすすめです。また最近は、職場体験やボランティア、短期のアルバイトなど、気軽に介護の仕事を体験できるサイトやマッチングサービスが増えています。現場のリアルな現状を知れたり、介護の仕事が自分に向いているか確認することもできるので、就職する前にこれらをうまく活用するのも手です。

… スケッター

お手伝いを求めている介護施設と、サポートしたい人を繋ぐマッチングサービス。専門的な知識や経験が一切なくても、介護施設で食事の配膳や洗い物、掃除、レクリエーションの企画など、有償でお手伝いすることができる。https://www.sketter.jp/


… musbun

福祉分野で職業体験をしたい学生らと介護事業者を繋ぐマッチングサイト。ボランティアやインターンシップ、アルバイトなどを随時募集中。学生向けサービスとしてスタートしたが、社会人も使えるように準備中。https://musbun.jp


… 福祉留学

学生や医療福祉従事者と、日本の福祉・介護を牽引する施設を繋ぎ合わせる留学制度。希望する地域で実際に短期~中期暮らしながら施設などでインターンを行いつつ、その土地ならではの地域福祉を体験できる。https://fukushi-ryugaku.com



本プロジェクトは厚生労働省補助事業 令和5年度介護のしごと魅力発信等事業(情報発信事業)として実施しています。(実施主体:マガジンハウス)


●MY CARE WORK 01/
Working File1「専門学校の仲良し同級生が介護の現場で個性を発揮中。」は、こちらから!

●MY CARE WORK 02/
Working File2「利用者の生活に丸ごと関わる訪問介護にやりがい!」は、こちらから!

●POPEYEの記事はこちら 「福祉とケアに目をを向ける、一味違う読書。」

●「こここ」の記事はこちら