”早く金を払え!”と家に押しかける兄… 相続争いで苦しんだ30代女性を救った「まさかの人物」【後編】

文・並木まき — 2022.7.22
第一子妊娠中に父が亡くなり、異母兄弟の存在を知った真奈さん(仮名)。相続の手続きを進めるにあたり、会ったこともなかった兄たちとの話し合いは難航を極めたようです。真奈さんの壮絶な体験を、メンタル心理カウンセラーの並木まきがご紹介します。

遺産がないのに予想外に揉める相続の話し合い…

「父は遺産といってもまとまったお金はなく、母と住む家が父名義で購入したものだったことから、相続の対象となるのはその家だけでした。すでにローンは完済していたので負債がなかったことは助かりました。
父の死後は母がそこに住み続けるので、私は二人の兄に相続の放棄をお願いしたのですが、私の話を聞いた兄たちはその場で激怒してしまって……。
『家を売って、お金にして俺らにもわけろ』と言われてしまい、話し合いはまったく進まない状況になってしまったんです。
確かに、私の父は彼らの父親でもありますし、父が新しい家庭を持っていると言っても兄たちだって父親の財産を受け取る権利はありますから、私もどうしていいのか困ってしまって……」

「早く金を払え!」と家に押しかける兄たち

お金で解決したくても真奈さんの実家には現金がほとんどなかったため、二人の兄が納得するような金額をすぐには用意することが難しかったとのこと。父親の死後、憔悴しきった母親は病気がちになり、家で寝込む時間も増えていたため、母親に心労をかけまいと真奈さんは一人でこの問題を抱えなければならなかったそうです。

「そのうちに兄たちが私の家にまできて『早く金を払ってくれよ!』と、金の無心をするようになったんです。
それまでも夫に相談はしていましたが、さすがにこのままでは問題が悪化するばかりだと思い夫と義実家に相談したところ、義実家がまとまったお金を工面してくれることになりました。これは本当にありがたかったです」

義実家から受け取ったお金で二人の兄への支払いを済ませたという真奈さん。そのときに兄たちには金輪際、目の前に現れないことを約束してもらってから相続分のお金を渡したと言います。

「この一件以降、義実家には頭が上がりませんが、兄たちとの関わりを終えられたのでとにかくホッとしました。もちろん兄たちにも言い分はあると思いますが、まったくの想定外だった展開に、当時の私はパニックでしたね。
夫や義実家の存在が、とてもありがたかったです。義実家は『真奈さんのせいではないし、このお金の返済はいつでも大丈夫だから』と言ってくれて、本当に感謝しています」

その後、真奈さんは無事に第一子を出産し、以前のような平和な日常が戻ったとのこと。真奈さんの母親も、時間の経過とともに父親の死を受け入れ、だんだんと元気を取り戻してきているそうです。今後は、真奈さんは働きながら義実家に借りたお金を返済していくとのことでした。


真奈さんが相続トラブルに巻き込まれるまでの「経緯」とは… 前編に続きます



いきなり異母兄弟の存在を知ることになれば、現実を受け入れるのが難しいと感じる人もいるでしょう。その環境で相続の話し合いをしなくてはならないとなれば負担は計り知れません。そんな状況になってしまったときは全てを一人で抱え込まず、周囲の人に相談しながら進められると心強いですよね。

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