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「昨夜の童貞男」に感謝した日|12星座連載小説#45~天秤座6話~

文・脇田尚揮 — 2017.3.28
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第45話 ~天秤座-6~


前回までのお話はコチラ

『あ~、もうサイアク!』

コンパクトを覗きながら、グチをこぼす。昨日、飲みすぎたからか目が腫れぼったくて、メイクのノリが悪い。

ホンっト、昨日は“童貞メガネ”のせいで最悪だったわ。

今度、祐太に会ったら言っとかなくちゃ。

『連れてくる男はちゃんと選んで』って。

脚がむくんで、ヒールもキツキツだし……。

電車の中でゲンナリしながら、スマホをいじっていると……、

「おはよう! 恭子ちゃん^^ 昨日の夜は楽しかったね! 今度は二人で飲みに行こうよ! 俺のおススメの店、マジでヤバイから」

昨日のチャラ男からLINEだ。

もうこれ以上、私の怒りの炎に油を注がないで! 幸せな結婚を探してるのに、先を考えられない男と二人で飲みに行くワケないでしょっ!

ブロック、ブロック……っと。

はぁ……イイ男って、なかなかいないものね。明日にでも、「ロイヤル・ヴェイル」に出会い探しに行こうかなぁ…。憧れの黒木社長にも会えるかもしれないし!

職場まであと二駅というところで、“アイツ”からもLINEが届いた。

……もう読む気もしないんだけど、一応軽く目を通す。

「恭子さん、昨夜は二次会までお付き合い下さり有難うございました。ご馳走様でした。デザインの件で、私がこれまでに一番売り上げを高めることができた“アイテム×配色”の組み合わせをお送りします。何かの役に立てば嬉しいです」

その後に、かなりの量のデータがファイル形式で送られてきた。

もう! コイツまだ言ってんの!? ここまでくると、もうサイコ男じゃない。

……でも、何故かLINEをブロックする気にはなれなかった。

―――店の準備、面倒だなぁ……。ロッカーを開けながら、ぼんやりとしていると

「佐々木さん、昨日のお酒は随分と美味しかったみたいね」

後ろから鈴森に声を掛けられた。

『いえ、そんな……』

「だって、顔に書いてあるわよ。“飲みすぎました”って。よっぽど楽しかったのね。今日は二日酔いで早退かしら?」

そう言って、スタッフルームのドアがバタンと閉まった。

……何よ、結婚の夢を捨てた女の言いがかり。

私、別にただ楽しんでいるわけじゃない。出会いを求めているだけなんだから。

朝から不愉快な気持ちになりながら支度をし、オープンを迎える。それもこれも全部“あのメガネ”のせい!

「佐々木さん、ちょっと良い?」

主任の来栖さんが、神妙な顔をしながら近づいてくる。

……今度は何?

「あのね、佐々木さん、今日あなた少しお酒臭いわよ。そんな状態でお店に立ってもらうわけにはいかないわ。申し訳ないけど、今日はサイトの方をやってもらえる?」

『…はい。すみません…』

本当に今日は厄日だわ。なんだってこんなに次から次へと、私が苛められなくちゃならないの。恭子ちゃん、可哀想……。奥の方へ引っ込んで、パソコンいじりだなんて私に相応しい仕事じゃない。

『はぁ~あ』

少し長い溜息をついて、パソコンへ向かう。商品追加や文章、配色など基本的なことは習ってる。今日は地味な作業を延々とやれっていうことね。

こんなの鈴森さんがやっていればいいのに!

不平不満をブツブツつぶやきながら、今シーズンのアイテムをポチポチと追加していく。

ぼーっと“作業”を続けていると……そうだ! あのメガネにもらったデータがあったわ!

急いでLINEを開いて、メガネから送られてきたデータをダウンロードする。

……すごく丁寧で分かりやすい。アイテム別の、イメージ、シーズンごとの配色、そしてリンク先のアイテム候補までびっちりと整理されている。

『なに、コレ……』

ファッションについては、全く素人であるはずのアイツが。ここまで分かっているのが意外だった。

『やろっかな』

それから私は、あいつのデータを元に作業を続けた。

なんだか悔しくて……、今日1日で、どうしてもこの“作業”を終わらせたくて、ランチの時間もずっと作業を続けた。

――「佐々木さん、もうお店に立って良いわよ」

来栖さんが、心配そうに声を掛けてくれる。

でも、今の私はどうしてもこれをやり遂げたいんだ。

『有難うございます。でも、もう少しやらせて下さい!』

「え? ええ……いいけど」

来栖さん、目を丸くして驚いている。

来栖さんを一瞥して、私はまた打ち込み作業に没頭する。フラストレーションを解散させるかのように。

昨日のこと、今日のこと、なんだか全部のことがどうでも良くなっちゃった。今はとにかくこれを完成させたい……!

――クローズの時間になる頃に、やっと“それ”は終わった。

サイトの内容・雰囲気はガラッと変わり、各商品に別のおススメアイテムのリンクも付けた。

ピックアップや売れ筋ランキングなんかも、もらったデータから構築できた。

フンだ! ざまぁみろ! 恭子ちゃん、本気になればデキる子なんだから!

「佐々木さん、お疲れ様……えっ!……これ、あなたがやったの!?」

『はい!』

得意げに“えっへん”としたいのを、必死にこらえて、平静を装う。

「あなたにこんな才能があったなんてね……すごいわ」

来栖さんに褒められた。

「お疲れ様。今日はもう上がっていいわよ」

……なんだかここ数ヶ月忘れかけていた、“ちゃんと”仕事する感覚を思い出したわ。

―――ありがと。

薫さんに少しだけ感謝した。

天秤座 第2章 終



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【今回の主役】
佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員
センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。

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