いきものがかり「いろいろな変化があったタイミングだった」 2人体制初のアルバム!

2024.1.7
約3年ぶり、2人体制になって初めてのアルバムタイトルは『○(まる)』。たくさんの人を鼓舞するような肯定的なメッセージが乗った、華やかで多彩なポップスがたっぷりと詰まっている。

新たな気持ちですべてを後押ししたかった。

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「収録曲の中で最初に録った『ときめき』という曲の歌詞に、〈世界はいまきらめくよ わたしがそう決めたから〉というフレーズがあって、『肯定や祝福に繋がる言葉をアルバムタイトルにしたいね』っていう話になりました。そこでリーダー(水野)がホワイトボードに“○”って書いたんです」(吉岡聖恵・Vo)

「円環って寛容に何かを受け入れる感じがあって、○というタイトルがしっくりきました。吉岡が言っていたのは、完璧なまるではなく歪んでてもいいし、ずれててもいい。すべてをOKって言えるような、おおらかな○のイメージがありました。吉岡の出産を経たり、メンバーが3人から2人になったり、いろいろな変化があったタイミングだったので、新たな気持ちですべてを後押しできるような言葉が自然と出ていった印象があります」(水野良樹・Gt&Piano)

歌や音楽の力を描写するフレーズが頻繁に出てくるところも、新たなスタートを切ったいきものがかりの姿と重なる。

「日々を過ごしていると、嫌なことや信じられないニュースが飛び込んでくることもあって、どこか止まってしまいそうになる瞬間がありますよね。でもメロディを歌うとひとつの流れが生まれて、止まらない印象があるんです。『動いていかなきゃいけない』っていう意識がずっとあります」(水野)

初めてタッグを組むアレンジャーが参加していたり、新たなアプローチがいくつもある作品だ。

「『うれしくて』は60名くらいのミュージシャンに参加してもらって、ポップスの範疇から逸脱した量の菅楽器や弦楽器が入っています。その中で吉岡が歌ってポップスに仕上がっているのはチャレンジングですよね。一方で『やさしく、さよなら』はすごくシンプルなジャズトリオみたいな編成で、吉岡に歌ってもらったらどうなるかっていうアプローチの曲。そこまで意識はしてなかったんですが、結構挑戦的な曲が多いんです。『喝采』もジャンルとしてはミディアムバラードですが、軽やかさがずっと残っているのが新鮮ですね」(水野)

「『喝采』は軽やかなんだけど、しっかり重みがあるし、明るいんだけど悲しいことも歌っていて、絶妙なバランスがある曲。だからこそ歌でそのバランスをどう表現するかが難しかったです。重さもあるけれど、微笑みを湛えながら歌うことで歌が届きやすくなるんじゃないかと思いました」(吉岡)

アルバムを引っ提げ、2月からは12年ぶりとなるホールツアーを開催する。初日はふたりの地元である神奈川県・海老名市文化会館公演だ。

「地元はいつも温かく迎えてくれるので、どこか依存しているところがあります(笑)」(水野)

「すぐ地元に帰って歌いたがるよね(笑)。いきものがかりは地元の路上ライブから活動が始まっているので原点ではあります。最近改めて、高校1年と2年の時に地元で知り合ったふたりが、20年以上ずっと一緒に仕事をしているのって面白いなって思いました(笑)」(吉岡)

「ときめき」には〈ときめくちからは ずっと消えないよ〉というフレーズがある。結成から24年、いきものがかりのどんなところにときめきを感じるのだろうか。

「3人で活動を始めて、メンバー全員が“3人だけがいいと思っている”というところで満足しなかったんですよね。その頃から一人でも多くの人に喜んでもらえることが嬉しいんです。そこは変わってなくて、今も『自分たちが良いと思うものを作りたい』という気持ちが強くありながら、それを外に飛ばしていくことにときめき続けています」(吉岡)

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発売中の10thオリジナルアルバム『○』。『映画プリキュアオールスターズF』主題歌「うれしくて」など、全12曲収録。【初回生産限定盤(CD+Blu‐ray)】¥5,478 【通常盤(CD)】¥3,300(Sony Music Labels)

写真左から、吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(Gt&Piano)。1999年結成。2006年にメジャーデビューし、数々のヒット曲を生む。’21年、2人体制での活動をスタートさせた。’24年2月から12年ぶりのホールツアーを行う。
衣装協力・JUN OKAMOTO PANORMO

※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・小笠原真紀 取材、文・小松香里

(by anan編集部)