三浦大知、『メタルギア』愛を語る 「誰も見たことのないものを作ろうという熱意が斬新なゲームを作り出す」

2023.5.10
ゲームでしか味わえない喜び、カルチャーとしての凄さとは? YouTubeチャンネルでのゲーム実況などを通し、ゲームの楽しさを日々伝えている三浦大知さんに「僕が愛するゲームたち」をテーマに語っていただきました。

新しい感動を届ける、小島監督の逆転の発想。

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ガチゲーマーの三浦大知さんがゲームに出合ったのは小学生のとき。まだカラーになる前のゲームボーイで『スーパーマリオランド』や『ポケットモンスター』にひとり熱中したという。誰かと一緒にゲームをした思い出は、母親と遊んだスーパーファミコンの『がんばれゴエモン』だ。

「僕がゴエモンで、母親がエビス丸(笑)。おんぶしたり足場を作ったりして、ふたりでワイワイ遊んだ記憶があります。親とのコミュニケーションのひとつだったし、家族の時間にゲームがあった感じがよかったんですよね」

衝撃を受けたのは、1998年にプレイステーションで発売された『メタルギア ソリッド』。当時小学校6年生だった三浦さんのセレクトとしては、かなり渋い?

「確かCMを見たんですよ。これは面白そうだなと思って、当時僕はフォルダーで音楽活動を始めていたので、スタッフさんに『レコーディング頑張るから買って』っておねだりした記憶が(笑)」

いざ遊んでみると、現実的なストーリーで、テーマ自体も重く、小学生だった三浦さんにはわからないこともあったという。でも初めて見るさまざまな演出に夢中になった。

「オープニングで主人公のスネークを操作していると、スタッフクレジットが出てきて、昇降機に乗るとゆっくりタイトルが浮かび上がる。そんなの、今までのゲームで見たことがなかったんですよ。あと、こっち側にゲームが侵食してくる感じも凄くて。サイコキネシスを使うサイコ・マンティスっていうキャラクターの言うとおりコントローラーを床に置くと、デュアルショックの振動機能が反応してガタガタッと震えるとか、コントローラーを本体の“2”の端子に挿せば能力で攻撃が読まれないとか」

『メタルギア』を手掛けた小島秀夫監督とは対談をきっかけに親交を深めた。物創りへの姿勢に強く感銘を受けているという。

「確かラジオで話されていたんですが、コントローラーの振動で新しい感動を生み出そうと思ったそうで、まず仕組みから知ろうと振動の元となる重りを作ってる人に会いに行ったらしいんです。“神は細部に宿る”じゃないですけど、細かいところに目を配ることが、結果的に僕たちの感動に繋がっているんだなと」

小島監督の作品にはハードのスペックを乗り越える創意工夫がある。それが新感覚の感動を生むのだと三浦さんは話す。

「『メタルギア』が生んだ、敵と戦わずにミッションを成功させていくステルスシステムは本当に画期的でしたけど、当時のシステムのキャパシティで全く新しいリアリティのある演出を追求して、あの概念が生まれたわけですよね。制限があっても、諦めずに誰も見たことのないものを作ろうという熱意が斬新なゲームを作り出すんだなと。『デス・ストランディング』も、荒廃した世界で主人公のサムが各地に配達をすることがストーリーの軸なんですが、“移動”を単なる手段ではなくエンターテインメントに仕上げている。常に新しい価値を提示し続けている小島さんの作品からいつもパワーをもらっています」

実は三浦さんも、『デス・ストランディング』に登場している。

「シェルターに荷物を運ぶと、3DスキャンでCGになった僕がいるんです(笑)。そしてハーモニカをくれて、サムは山の中とかでそれを吹くんです。憧れの人が作ったゲームの世界に入って、自分からもらったハーモニカを吹くって、すごく不思議な体験ですよね。だからサムが奏でる『BB’s Theme』は思い出の曲。嬉しくてライブでも初めてハーモニカに挑戦して、冒頭で『BB’s Theme』を吹いたことも」

実況では、アクションRPG『エルデンリング』から謎解きミステリー『Return of the Obra Dinn』まで、幅広いジャンルをプレイする三浦さん。セレクトの肝は?

「トリプルAタイトルといわれているようなゲームももちろん大好きですし、作り手の価値観やメッセージが前面に出ているインディーゲームにもとても心を惹かれます。ドイツのクリエイターが9年かけて開発したといわれている『SIGNALIS』や、ゲーム画面に映るキャラクターやモンスター、背景などが全て紙で創られている『Papetura』など思いがぐっと入った、作家性のあるゲームが好きですね。Steamのおすすめを辿って新たなゲームとの出合いを日々楽しんでいます」

違う世界の主人公を生きることが、三浦さんの創作に影響を及ぼすこともあるのだろうか。

「ありますよ。ゲームから何かを受け取っていることって、すごく大きいんじゃないかなと思います。楽曲を作ったり、パフォーマンスを考えたりするにあたり、シーンやストーリーをどう見せるか考えるのにも生きてきますし、ゲームの体験をもとに歌詞を書いたこともありますしね」

自分でもゲームを作ってみたいと思うことはないのだろうか。

「思ったこともありましたが、小島さんと出会ってそんなことおこがましくて言えなくなりました(笑)。でも、音楽やパフォーマンスをゲームに落とし込んで、プレイヤーが体験できるものが作れたら面白そうだなと思ったりはします。『FORTNITE』でライブをされているアーティストもいますし、ゲームのアワードがメタバースで開催されるケースもある。インタラクティブ性がゲームの魅力ですからね」

常に新作に目を配っているそうだけれど、なかでも楽しみにしているゲームタイトルは?

「いちばんは『デス・ストランディング』の続編『DS2』ですね。個人的に気になっているのが『HORROR TALES』シリーズ。どうやら一人のクリエイターの方が創られているそうです。たまたま見つけて実況もしました。地中海に浮かぶとある島で流行病の特効薬を探す『The Wine』が第一作。三部作らしいのですが、配信予定のサムネを見ると宇宙飛行士とかエイリアンのようなモンスターが登場するようでテイストが全然違う……。密かに楽しみにしています」

みうら・だいち 1987年生まれ、沖縄県出身。DVD&Blu‐ray+CD『DAICHI MIURA DOCUMENTARY 2019‐2023+SINGLE COLLECTION 2018‐2023“COLOR___S”』好評発売中。

ジャケット¥79,200 パンツ¥47,300 シャツ¥49,500(以上ウジョー/M incorporated TEL:03・6721・0406)

※『anan』2023年5月17日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・村田友哉(SMB International.) ヘア&メイク・外山龍助(KIDMAN CREATIVE) 取材、文・飯田ネオ

(by anan編集部)