いしだあゆみ、一時期からあまり歌を歌わなくなったワケとは?

2022.10.15
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。10月のお客様は、歌手、俳優のいしだあゆみさん。過去はまったく振り返らないという、いしださん。ご自身のレコード、出演した映画のDVDなどは一切お持ちでないそうです。その潔さの源は、なに? 第3回目をお届けします。
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自分をきちんと見極められる人でいたい。

多くのレコードを出しましたし、ドラマや映画にもたくさん出させていただきましたが、我が家には自分の作品は一切ありません。私、過ぎたことには一切興味がなくなるんです。それに関わったときの、楽しかったとか、素敵な経験だったと思う気持ちがあれば十分。私にとっては、昔のものを所有している意味は、あんまりないんだと思います。昔から、物事の終わりには敏感なところがありました。例えば、一時期からあまり歌を歌わなくなったのは、私自身が「これ以上やっても、もうヒットは出せないな」と悟ったから。恋愛でも同じで、「この恋、もうダメだわ」と思ったら、次の日には相手のことは忘れちゃう。

でも今考えると、傷つくのが怖かったんでしょうね。だから傷つく前に、未練とか後悔を感じる前に、自分からスッと去る。それが私の美学だと思って、生きてきました。そういう、自分をちゃんと見極める力がある人が好きだし、憧れますね。

空気感や雰囲気のある女性って、素敵。

ananの読者さんの世代だと、歳を取るということにまだリアリティは全然ないですよね。でも私の場合、小さい頃から早く大人になりたかったので、歳を取るのは全然イヤではなくて、むしろ嬉しかったくらい。今私は74歳ですが、“もう74歳”ではなく、“まだ74歳”よ。この先ずっと、小綺麗でかっこいいおばあちゃんでいたいと思っています。

以前、もう亡くなられた演出家の久世光彦(くぜ・てるひこ)さんに、「なんで日本の映像作品は、女優のアップが多いの?」と聞いたことがあるんですが、久世さんが「日本の女優は、引いたときに画(え)になる人が少ない。つまり、空気感や雰囲気がないんだ」っておっしゃられたことを今でもよく覚えていて。確かに素敵な人って、その人の体の外側にもう一層なにかが存在していて、その層こそが、魅力であり空気感であり、そして久世さんが雰囲気と呼んだものなんだと思います。私が惹かれるのも、そういうものを持っている女性です。

いしだあゆみさん 歌手、俳優。1948年、長崎県生まれ。’64年に歌手デビュー。’69年『ブルー・ライト・ヨコハマ』が大ヒット。その後、俳優としても活躍。代表作にドラマ『北の国から』、映画『駅 STATION』など。

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※『anan』2022年10月12日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・大貫まりこ ヘア&メイク・福沢京子

(by anan編集部)