桑田佳祐が“初EP”! 長~いタイトル通りに大満足の1枚?

2021.9.19
これぞ国民的アーティスト! と叫びたくなる、桑田佳祐さんの(意外にも)初のEP。『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』というタイトルの通り、私たちが食べたいもの―というか、聴きたい曲だけがキッチリ揃っているのだ。桑田さんらしいユーモアもあるので、一瞬フフフッと笑って済ませそうになるが、よくよく考えると、こんなに明確なタイトル、他にない。

国民的アーティストの究極を突き詰めた、珠玉のEP。

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すでに先行シングルやCMソングとして、お茶の間で親しまれている楽曲も含めた全6曲。まずは何より、この夏、民放共同企画“一緒にやろう”応援ソングとして、オリンピックのテレビ中継で頻繁に流れていた「SMILE~晴れ渡る空のように~」。オリエンタルなメロディやコブシのきいた歌に日本を感じさせながら、エレクトロなトラックでグローバルなスケール感も取り込む。ここからして、オリンピックにぴったりなのだが、それだけではない。《栄光に満ちた孤独なHERO》と歌う一方で、シンガロングしたくなるコーラスも飛び出す。世界も日本も、みんなもあなたも見つめた、それでいてシリアスに走り切ることはなく、《でなきゃモテないじゃん!!》なんて軽妙さも忘れない、素晴らしいポップソングになっているのだ。

さらに、スバルのCMソングとしても流れている、「炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]」を聴くと、はっきり浮かび上がってくるものがある。クルマに似合う爽やかさの中に《笑顔》《あなた》《愛しい》といった、「SMILE~晴れ渡る空のように~」と共通するキーワードがちりばめられているのだ。これらは、困難を極める時代において、桑田さんが見出した大切なものなのではないのだろうか。なお、1曲目の「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」は、アーティスト写真そのままの、力のこもった熱唱と、生々しい演奏が味わえる。弱りかけた気力を奮い立たせ、バラバラになった心を結び付ける、音楽にしかできない、桑田佳祐さんにしかできない、魔法のようなエッセンスが隅々にまで行き届いた、今、この国に響かせたい一枚だ。

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『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』 未発表の新曲3曲も収録。完全生産限定盤は、3月の無観客配信ライブの映像がつく。【完全生産限定盤A、B(CD+Blu-ray、DVD)】¥6,380 【通常盤(CD)】¥2,090 【アナログ盤(LP/重量盤)】¥2,860(タイシタレーベル)

くわた・けいすけ 1956年2月26日生まれ。神奈川県出身。’78年にサザンオールスターズで、’87年にソロでデビュー。9月18日の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナから、12月31日の横浜アリーナまで、ツアーを開催。

※『anan』2021年9月22日号より。文・高橋美穂

(by anan編集部)