コムアイ「Wi-Fiを開通するより楽」環境負荷減らす“パワーシフト”とは

2021.4.2
自宅の電力を自然エネルギーに転換できるパワーシフトのアンバサダーも務めるアーティストのコムアイさん。個人ができるインパクトのある行動とは何か。日々情報や考え方をアップデートしながら、未来の地球について考え続けています。

2分でできる! お手軽なパワーシフト。

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「小さい頃から大人たちの社会と早く関わりたいと思っていた」と言うコムアイさん。やりたいことが見つけられずにいた中学時代、国際交流NGO「ピースボート」で地雷撤去の募金を始めたことが、社会の問題を他人事にしない姿勢の原点だった。

「インターネットで見つけて、放課後ピースボートの事務所に通うようになりました。そうすると周りにNPOやNGOに関わる人が多くなり、また世界一周の船に乗りたい大学生や教師、看護師やお坊さんなどいろんな職種の大人から話を聞くことができて、自由を感じたのを覚えています。“エシカル”や“サステナブル”の言葉を知ったのは高校時代。『greenz.jp』で環境活動をする人たちの考え方や意見を知って、環境問題にも興味を持つように」

ここ数年で危機感は増し、現在も環境問題に向き合い続けている。

「使い捨てを減らすなど、個人の生活でできることに取り組んでいる人も多いと思います。みんなでコツコツやることは意味があります。でも、もっと簡単にできてインパクトの大きいアクションがあったらやりたいと思いませんか? 私がCO2の排出量を減らすために最も効果的だと思うのが“パワーシフト”(再生可能エネルギー中心の電力会社に変えること)です。実は、家庭から出るCO2の排出量の半分近くを占めるのが、石油や石炭、液化天然ガスを燃料とした火力発電による電力(※1)。ゴミやガソリンよりも大きい割合です。これをエネルギーシフトするだけで、家庭からのCO2排出量をぐんと減らせます。日本では2016年に電力の小売りが全面自由化となり、誰でも電力会社を選べるようになりました。太陽光や風力、マイクロ水力など再生可能エネルギーを取り扱う会社が増え、私も3年ぐらい前にパワーシフト。採掘や輸送で被曝の危険をはらみ、CO2も排出される原子力発電を避け、再生可能エネルギーかつ、地産地消で市民電力の供給を目指す会社を選びました。ほかにも僧侶が作った電力会社や地域に根づいた会社もあり、会社の個性で選ぶのも楽しいと思います。日々、生活を制限して省エネするわけでもなく、取り組みを応援したい電力会社を選ぶだけで環境負荷を大きく減らせるんです。ちなみにパワーシフトはWi-Fiを開通するより楽(笑)。ポストに入っている明細を見ながらネットで2~3分で申し込みができ、後日引き落とし口座を登録するだけ。工事もありません。送電線は同じなので、停電の心配もなし。要はどの電力会社にお金を払うのかの違いです。私は電気代が上がることもなく、不自由を感じたことはありません」

より一層意識を強く持って今すぐ行動を起こさないと、もう環境破壊を止めることは難しい段階にあると考えているコムアイさん。

未来予想は怖くても知ることが大切。

「気候変動や地球温暖化が進むと生態系が崩れ、自然や生き物は絶滅し、なくなったものは決して戻りません。約2年前に、環境活動家のグレタさんが国連で行った“怒りのスピーチ”が話題になりましたが、全世界の今の取り組み方では、気候変動はティッピングポイント(転換点)を迎えてしまい、最悪な影響が相互作用し合って、環境破壊の歯止めが利かなくなるといわれています。そのティッピングポイントを防ぐために行動できる時間は残り4年ともいわれていて(※2)、“#あと4年”という署名活動も始まっています」

恐ろしい未来予想に思わず目を背けたくなりますが、コムアイさんはとにかく知ることが大切と言います。

「たとえば国際環境NGOの『350 Japan』では、気候変動の基礎を教える無料のウェビナーを開催していて、現在、地球にはどんなことが起こっていて、今できることは何かなどが学べます。かなりショッキングな事実を知ることにもなりますが、それによって一人一人が考えを深めて、行動に移したり声を上げていくことがとても重要なんですよね。その最初の一歩を踏み出せる人が増えるといいな、と思っています。決められた制度や制限の中でどうするかではなく、制度自体を変え制限をなくす力は誰もが持っているから。私はこれからも環境負荷についての勉強をして、声を上げ続けていきたいですね」

※1出典「JCCCA 温室効果ガスインベントリオフィス」
※2出典「UNEP emissions gap report2019」

KOM_ I 1992年7月22日生まれ、神奈川県出身。音楽ユニット、水曜日のカンパネラでボーカルを担当。環境問題に積極的に向き合い、パワーシフトのアンバサダーも務めている。Instagramは@kom_i_jp

※『anan』2021年4月7日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) 取材、文・若山あや

(by anan編集部)