会社を辞めて、こうなった。【第36話】 本当の友達って、心から大切なものって? 本音と向き合う、人生初の居候生活スタート。
【土居彩の会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。】vol. 36
【第36話】本当の友達って、心から大切なものって? 本音と向き合う、人生初の居候生活スタート。
久しぶり! …で、居候させてください。
私の実家は関西にあり、東京の部屋はすでに解約しています。そこで一時帰国中の東京滞在10日間は、友人宅を渡り歩く居候生活をしていました。長い付き合いになる彼女たちですが、それぞれの家に泊まるのは初めて。なのにいきなり居候です! だから一応、迷惑になるだろうからとインターネット宿泊サイトでリーズナブルな部屋を探してみたもののなかなか条件に合う部屋が見つからない…。そこで、それぞれの友人宅を3日ずつぐらいにわけて移動しながら滞在するのはどうかと思案していたのですが…。
「ウェルカム! 大きな荷物を持っていろんな家を移動するのは大変だろうから、我が家をアヤの基地にして。いつまで居てもいいし、誰といつどこでどう過ごそうがどうぞご自由に」と、小学校からの幼なじみが申し出てくれました。そこで彼女の部屋を起点にしながら、他2名の友人宅に泊まることに。
私の幼なじみは海外でカウチンニットのデザイナーとして人気ブランドを立ち上げ、その後さまざまな人生の荒波をダイブし、東京のPR会社に勤務。そんな彼女と再会できたのは、4年ほど前のことです。ある化粧品会社の発表会に出席し、次の打ち合わせまで少し時間があったので何気なく足を伸ばしたアパレル会社の発表会で、お互い「あっ!」という感じで再会したのです。
帰国子女かつ見た目も行動も(異性関係も!) 華やかな彼女は、いつもダイナミック。今でこそタッチ&トライ、つまり人体実験をしながら人生をワイルドに生きているような私ですが、本来は保守的で真面目なタチ。しかも彼女と出会ったころは、もっともっと頭でっかちに生きていました。そこで計算度外視、まさに感覚と感情に忠実に生きる彼女に驚かされることも多々。大胆だけど、根はとっても純粋な彼女には通じることも多く、お互い同時期に離婚していたという偶然も重なって、あっという間に意気投合したのでした。
幼なじみとの1ルーム共同生活スタート。
彼女は、約1年前に勤務していたPR会社から独立。ニットブランドは手放し、新たにオーガニックコスメブランドのディレクターとして商品を企画・開発しながら、連日店頭にも立って直接お客さんにセールスもしています。そして ”大好きな街をもっとたくさんの人に知ってもらいたい!“ と編集経験ゼロにも関わらず、タウンフリーペーパーの編集&広告営業をスタート。さらには友人である写真家やフラワーアーティストのマネジメントも行うバイタリティに溢れるスーパーウーマンなのです。
私の居候中、彼女はまさに連勤2か月目という殺人的に多忙なスケジュールをこなしていました。「今は起動にのせる時期」と覚悟を決めて、休みもとらずに馬車馬のように働きながら1ルームのデザイナーズマンションで生活。肉体的にも金銭的にも決して楽なわけじゃないのです。連日深夜に帰宅し、冷蔵庫の中の缶チューハイをプシュッ。最大限まで手足を伸ばして、泥のように重い、疲れた体をベッドで休めたいだろうに、その左スペースは私がドカンと居座っています。この状態で1週間以上も過ごすのだから体力的にも精神的にも疲れちゃうだろうなと心配していたのですが、それは杞憂でした。というのも最初の3日間は修学旅行のように朝方近くまで連日語り合ってエキサイトしたのはもちろんのこと、その後は自然な流れでお互い、家族のように自分の生活ペースで過ごせるようになったのです。
退職して渡米して以来、“ただ勉強したいから勉強している“ という行動理由を否定され続けてきた私。そしていつしか周りの学生たちやアドバイザーの意見に影響を受け、“よい成績を収めないといけないから勉強する” や、“博士号を取らないと、何も守るべき肩書きやキャリアが身につかないから大学院に受験しないと” と、”勉強したい“ という純粋な気持ちではなく、“それをしないと不安だから” という恐れの気持ちから行動をとるようになっていったのです。
そんななか彼女との1ルーム共同生活で、その ”損得勘定を計算せず、ただやりたいことをやり抜く“ ”100%完全じゃなくてもいい。でも真剣に誠実にやる“ というスタンスを目にして改めてハッとさせられたんです。そして “やっぱり、そこが一番大事だよね” と本音に立ち返れました。日を重ねるごとに自然な流れで、彼女がディレクションしている商品のPRリリースを書いてみたり、フリーペーパーの改善点を検証してみたりと「居候させてもらっているから何かお返ししないと」ではなく、「彼女のために何かしたい」と思うようになったのです。