会社を辞めて、こうなった。【第36話】 本当の友達って、心から大切なものって? 本音と向き合う、人生初の居候生活スタート。

2016.7.11 — Page 2/2

幸せって、意外とシンプルなことかも。

坂田阿希子さんの『和食のごちそう』から、みょうがと焼きなすのみそ汁。なすを焼いて皮を剥いて縦に裂いたものに、赤だしみそ汁を注ぐというポイントがプロっぽい味わいに仕上げてくれます。新しょうがのご飯にサンマの塩焼きを添えて頂きました。
坂田阿希子さんの『和食のごちそう』から、みょうがと焼きなすのみそ汁。なすを焼いて皮を剥いて縦に裂いたものに、赤だしみそ汁を注ぐというポイントがプロっぽい味わいに仕上げてくれます。新しょうがのご飯にサンマの塩焼きを添えて頂きました。

「とにかく今は健康第一の彼女に野菜や栄養のあるものを食べさせないと!」と直感的に思った私。ちなみに編集者時代はクッキングページを担当することが多かったにも関わらず、”家で料理をしない担当編集者・土居“ を豪語していました。レシピチェック(読者の皆さんが献立を再現できるかどうか、担当編集者がレシピ通りに家で作って確認すること)以外では決して台所には立たない。結婚していたときも元夫の帰宅が連日遅かったこともあり、料理をするのはお互いが家に揃う週末の1〜2日程度。さらにバークレーで学ぶようになってからは全ての時間を勉強に裂くために、料理といえばご飯を炊くぐらい。と、ますます ”料理をしない女っぷり” に拍車がかかっていたのでした。

ところが今回の東京滞在中、編集者時代にお世話になった料理研究家の坂田阿希子さんにお会いして、ご著書『和食のごちそう』を頂いたことから、全てレシピに忠実に料理を再現して幼なじみの彼女に振る舞い続けてみたのです。

「お、お、美味しい〜!! アヤ、これって今年食べたご飯で一番美味しいかも」。”お世辞言い過ぎ” と思いながら、ひと口食べてみると…。お、お、美味しい〜〜。坂田さん、天才———!! レシピってやっぱり、忠実に作ってこそですね! そしてレシピチェックのためじゃなく、心を込めて作ったご飯を誰かと一緒に「美味しいね」と食べる。するとこんなにお腹と心が満たされるなんて。二人で食卓を囲みながら、幸せってこういうことなのかなと思いました。バークレーで先学期受けた幸福学の授業で「社会的な繋がりや支え合い」が幸福のために大切だと習ったとき、「それ、当たり前すぎ。絶対テストに出さないでしょ」と思ったのですが(実際テストには出なかった…)、心の底から「本当にそうですね」と実感。遠回りばっかりしているけど、大事なことってすごくシンプルなことなのかもしれない。

無条件に一緒に居たい。それが本当の友達。

友人たちが用意してくれた料理の数々。美味しすぎて泣けました。おやつに大好きな洋菓子店・マッターホーンのプリンがあったところにも感激。編集者時代にここのバウムクーヘンには大変お世話になりました。しみじみ。
友人たちが用意してくれた料理の数々。美味しすぎて泣けました。おやつに大好きな洋菓子店・マッターホーンのプリンがあったところにも感激。編集者時代にここのバウムクーヘンには大変お世話になりました。しみじみ。

ヨガを通じて知り合い、支え続けてくれた友人宅に滞在した際には、逆に温かい手料理で迎えられました。平日にも関わらず全員集合してくれ、総勢7人でのパーティ。母となった友人、仕事で新しいステージに立ち続ける友人、そして苦楽を共にするパートナーとついに出会えた友人……。2年前のイヴでは全員パートナーが居なくて、「それぞれのパートナーを連れて来年のイヴは大人数で過ごそうね♡ カンパーイ!」なんて大声で叫び合って乾杯していました。たまたまその店に私の会社の後輩が夫婦で来ていて、「土居さん、メリークリスマス」と彼に勝ち組の笑顔でニヤリと笑われ、ものすごく恥ずかしい思いをしたのですが…。一年半の間にお互いの状況がものすごく変わったものです。でも先月も一緒に食事をしていたような感覚で、時の流れやお互いの変化を感じることなく心から楽しく、寛いだ時間を過ごせました。

そんな東京の友人たちに「私、もうなんにも無くなっちゃったけど。部屋も無いし、仕事も無いし。唯一の砦だった、”アンアン編集者の土居彩“ っていうのも無い。無い無いづくしなのに仲良くしてくれてありがとう。本当にみんなってスゴイなぁ!」と言ったら、友達たちがキョトン。「今までそんなふうにアヤのこと、思ったことないよ」と。そして「もしアヤが自分のことそう思っちゃうならさ、逆に今アヤがアメリカにいるのって、本当の友達を世界中に作るすごいチャンスなのかもね。例えば今後アヤが英語ペラペラになって、すごい論文とかをいっぱい書いてさ。だからって感じで近づいてくる人と友達になって嬉しい? それって条件つきの友達だよね。言葉も満足に話せない。社会的にも不安定。そんな状態でも一緒に笑い合ったり、支え合える存在。それって本当にかけがえのない人なんじゃないかな?」と言ってくれたんです。

かけがえのない友達たちに癒され、心を覆っていた氷が少しずつ溶け出してきた私。とはいえ、まだ ”働いている友人たち“ が羨ましく、”未だ社会的に宙ぶらりんな自分“ に対する年齢、無能である、そして社会的に何の役にもたっていないことへのコンプレックスは完全には解消できません。ここを解決出来ないかぎり、過去と現在の自分をつなぐことは難しい。だって否定的な感情を含めた全部が今の私で、それを全て認めないかぎり、過去と今の自分に折り合いをつけることは出来ないから。そこでまだアメリカには帰らず、約3年前に私の人生を変えたマインドフルネスリトリートに参加するために東京を後にし、フランスへと向かうことにしたのです。

See You!

大好きな友人たちと一緒のときみたいに、過去や未来を思い悩まずに軽やかに飛ぶように今を生きられたら…。そこでフランス・ボルドー郊外にあるプラムヴィレッジで行われる11日間のマインドフルネスリトリートに参加することに。
大好きな友人たちと一緒のときみたいに、過去や未来を思い悩まずに軽やかに飛ぶように今を生きられたら…。そこでフランス・ボルドー郊外にあるプラムヴィレッジで行われる11日間のマインドフルネスリトリートに参加することに。

 

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PROFILE
土居彩
編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。