sumika「あらためまして、はじめまして」原点回帰のニューアルバム

写真・後藤壮太朗 取材、文・かわむらあみり — 2021.3.7
【音楽通信】第73回目に登場するのは、話題のドラマ主題歌やCMソングなどを数々手がける人気バンド、sumikaのみなさんです!

【音楽通信】vol. 73

ライブがやれない状況で得た気持ち

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写真左から、黒田隼之介(Gt,Cho)、荒井智之(Dr,Cho)、片岡健太(Vo,Gt)、小川貴之(Key,Cho)。

2013年5月に結成された、片岡健太(Vo,Gt)さん、荒井智之(Dr,Cho)さん、黒田隼之介(Gt,Cho)さん、小川貴之(Key,Cho)さんからなる4人組バンド「sumika」。確かな音楽性と演奏力で発表する作品やライブは、多くの支持を獲得し続けています。

そんなsumikaが、ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』(2019年 テレビ朝日系)の主題歌となった「願い」やアニメ映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』(2019年)の主題歌「ハイヤーグラウンド」、映画『ぐらんぶる』(2020年)主題歌「絶叫セレナーデ」などの既発曲や新曲を収録した3rdアルバム『AMUSIC(アミュージック)』を3月3日にリリースされたということで、音楽的なルーツを含めて、メンバーのみなさんにお話をうかがいました。

ーーあらためて振り返りまして、sumikaのみなさんの音楽的なルーツから教えてください。

片岡 幼少期は、父が好きだったサザンオールスターズ、久保田利伸さん、村下孝蔵さんを一緒に聴いていました。音楽を始めたのは、父が家でアコースティックギターをちょこちょこ弾いていたので、僕もまねをして、家にあったギターを弾いてみたことがきっかけです。自分が弾けるようになってから気づいたんですが、父親はFコードという、ちょっと難しいコードは弾けないレベルでした(笑)。

荒井 ZARD、B’zを幼少期は聴いていましたね。初めて楽器を触ったのは、マリンバという楽器です。小学1年生のときに、初めてできた友達がマリンバをやっていて、家に近所のマリンバ教室のチラシが入っていたので「友達がやっていたやつだ」と思って習うことになって、小学1年生から中学1年生までマリンバを習っていました。

黒田 幼少期は、スピッツ、Mr.Childrenといったバンドの音楽を兄のCDを借りてよく聴いていました。クラシックギターを弾いていた父に影響された兄がフォークギターやエレキギターを始めて、僕はその兄のまねをして、ギターを弾いてみたのが楽器を始めたきっかけです。5つ上の兄のまねをしたがる子ども時代でしたね。

小川 中学生の頃、MDプレーヤーが出始めた時期に買ってもらって、当時はCHEMISTRY、中島美嘉さんなどのCDを聴き始めて、高校生になってからは秦基博さんを聴くようになりました。秦さんの影響でギターの弾き語りも始めて。楽器は2歳からピアノをやり始めました。というのも、音大でピアノ専攻だった姉の大学入学がその時期で、家では常にピアノが鳴っている状態だったので、僕もピアノを習ったんです。

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ーー2013年5月に結成されていますが、通常のバンド形態となる「sumika」、そしてアコースティックバンド形態の「sumika[camp session]」と、あえて別名義の2形態に分けて展開していますね。

片岡 そうですね。バンドの主戦場はエレキギターを持って大きな音でギターを鳴らしてマイクを使うライブハウスが多く、sumikaを組む前には、並行して弾き語りでのアコースティックライブも行っていました。その2つの見せ方をバンドのかたちでも活かせたらいいなと思ったんです。

たとえば会場を選ばずに電気のないところでも、バンドでの演奏ができることは何か、音楽を表現できることは何かと考えて。アコースティック形態でのsumika[camp session]なら、「このモードのときはわりと電力消費量少なめかも」「会場を選ばずにライブできますよ」ということが相手にもわかりやすいので、通常のバンド形態での「sumika」と、屋号を分けて活動したのがきっかけですね。音楽の編成というより、聴いてくださる方との心の距離感や、会場の作り方の考え方の切り替えとして必要だったので、分けています。

ーー2020年からコロナ禍となり、sumikaさんのアリーナ公演を含む全国ツアーも中止を余儀なくされるといった事態もありましたが、音楽家として心境に変化はありましたか。

片岡 ライブで客席からやりがいや生きがいをたくさんいただいていたこと、そのありがたさをとても実感しました。昨年はバンドを組み始めてから、1年間でもっともライブをしなかった年で、メンバー同士も会っていなくて。スタッフチームとも音楽を作って、ステージに立てる喜びや、フロアにいてくれるお客さんやみなさんがいて、活動が成り立っていたことをすごく感じました。だからこそ、離れていても音源やライブ映像だったら配信できるかもと、どうやって人とつながるか考えるようになったので、いまも落ち着いてはいないですが、得るものも多かったですね。

小川 音楽をやるうえで、自分の存在確認のなかで、ライブはすごく大事なピースだということを再確認しました。そのために、ライブが延期になったときは「自分は何者か」と考えるようになった時期も。そんななか、みんなでやれることを探していったターンがきて、また音楽の楽しさを味わえたので、あらためて初心に戻れました。昨年はしんどい時期でしたし、まだこのコロナ禍は継続していますが、いい経験になっています。

バラエティに富んだ新作「それがsumika」

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片岡健太(Vo,Gt)。sumikaのほとんどの作詞と作曲を担当。

ーー2021年3月3日に、CMや映画のタイアップ曲や、新曲が収録された3rdアルバム『AMUSIC』をリリースされましたね。

片岡 2020年はいろいろな話し合いをしたなかで、自分たちにとって“原点回帰”というテーマで動いてきて、「音楽をあらためて作っていこう」という気持ちを大事にしながら、このアルバムを作りました。2019年に発表した前回のアルバム以来、シングル曲がたくさんあって、その既発曲だけをまとめたものをリリースするのも違うなと。

僕たちはもともと自分たちが作った音楽が「最高だな」という気持ちで曲を作り続けているので、原点に立ち戻ったら、やっぱりオリジナルアルバムでワクワクしたいと思って。既発曲に負けないぐらいの曲たちをアルバムの新録曲として作り、合計16曲というボリュームに。「あらためまして、はじめまして」という気持ちで作りました。

ーー1曲目「Lamp」は軽やかで有機的なナンバーで、心を明るくしてくれるような印象です。

片岡 アルバムの新曲制作時に、この曲が1曲目でアルバムが始まったらうれしいなと、1曲目を狙い撃ちで作っています。物理的な世界もそうですが、いまはSNSの世界でもちょっと暗い気がしていて。だから、遠くまで照らすスタジアムの光ではなく、自分たちの足もとぐらいは照らせる明るさになってほしいと思って、作った曲なんです。

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荒井智之(Dr,Cho)。楽器を始めたのはマリンバから。

ーーそれで「Lamp」なんですね。

片岡 そうです。昨年僕たちがやるはずだった「-Daily’s Lamp-」というツアーのタイトルでもあるのですが、結果的にツアーはなくなりましたが、忘れたくない気持ちもあって。そこを肯定したうえで、僕らの新しいアルバムに進んでいけるのが、一番腑に落ちると思ってこの曲ができました。

ーー片岡さんはすべての作詞を手掛けていらっしゃいますが、いつもどのように曲作りをされているのですか。

片岡 sumikaは基本的に作曲者は4人いて、全員、曲から先に書いているんです。その後に、歌詞を書いて。まずは作曲して、どの曲を収録するか決めてから、その曲に対して一番マッチする歌詞のテーマはなんだろうと、歌詞のアイデアノートみたいなものがあるんですが、そこからテーマ別にマッチングさせていくやり方で作っています。

ーー5曲目「Happy Birthday」は心にすっと染みわたる新しいバースデーソングですが、どのように生まれた曲ですか。

小川 まずこの曲が生まれた経緯は、父親との記憶で残っているものがあって、幼少期に母親に抱っこされながら誕生日に、父親がギターを弾きながら歌を歌ってくれたんです。それが誕生日の恒例となっていて、その歌は父親の自作の曲で、曲を聴くと自然と母親の胸のなかで泣いてしまうという、素敵なメロディだっだことをやんわりと覚えていて。そういった距離感で歌われる楽曲はすごくいいなと思って、同じぐらいの距離感で響く、この曲を作りました。そしてこの話を片岡さんにお話しして、「Happy Birthday」というテーマをつけてくれて、これ以外ないと思える歌詞ができて、うれしいです。

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黒田隼之介(Gt,Cho)。兄の影響でギターを始める。

ーー6曲目「Jamaica Dynamite」は5曲目とガラリと変わって、ダンサブルな曲ですね。

荒井 この曲は、朝起きたら、降りてきた感じなんです。「Jamaica Dynamite」と言っているコーラスのフレーズと言葉が、ぼーんと頭に思い浮かんで。それを朝、踊りながら歌っていて、「これはいいかもしれないな」と。そこから、うまいこと曲にできないものかと、いろいろと構築していきました。作ろうと意識しすぎるとうまくいかないんですが、ふっと出てきたものをまとめあげていくほうが、曲ができますね。

ーー8曲目「アルル」は、現在放送中で、2度目となる「進研ゼミ」のCMソングですね。こちらはどのようなことを意識して作りましたか。

黒田 今回は、曲調についてご要望がなかったので、わりと自由に作らせていただきました。以前、1年間「進研ゼミ」のCMソングを担当させていただいた経験もあって、歌詞がちゃんと聴こえる、歌心のあるものをイメージしながら、作った曲です。

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小川貴之(Key,Cho)。2歳からピアノを習い始める。

ーー『AMUSIC』はどんなふうに聴いてほしいでしょうか。

片岡 どのアーティストもそうだと思うのですが、人によって好きな曲と、あまりグッとこない曲があると思うんですね(笑)。なので、むりやり全部を聴こうとせず、好きな曲だけ聴いてもらったらいいかな。それぐらいいろいろとバラエティに富んでいる楽曲ばかり。それがsumikaだと思うんです。

「sumikaとはこういうバンドです」というものをこの1枚で伝えきれた作品だと思うので、なんとなく流して聴いてもらって、気になったものがあったら、長く愛してもらえればいいなと。そのぐらいの距離感で、肩肘張らずにリラックスして聴いていただける作品になっているとうれしいなと思います。

ーー先日は、さいたまスーパーアリーナのオンラインライブ3daysを開催されましたね。手応えはいかがでしたか。

片岡 通常のライブ会場とはまた違った距離感でのsumikaを披露できたかなと。たとえば、演奏している手元や表情といった、絶対に対面のライブ会場では観られない近さのところまで、オンラインだからこそ観せられたのはすごく新しいことだと思っていて。もちろん直接会場に来ていただいて音楽を届ける体験は特別なものなので、それはそれとして大事にしていきたいと思いつつ、オンラインはオンラインにしかない楽しみを体験していきたいとも思うので、sumikaはどちらも提案していきたいですね。みなさんや周りの方、お仕事の事情もあると思うので、何かしらのかたちでかまわないので、またライブに触れていただきたいと思いました。

sumikaの音楽が寄り添えていけたらうれしい

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ーーところで、お話は変わりますが、いまはおうち時間をどのように過ごしていますか。

片岡 部屋の模様替えをしょっちゅうしていますね。家にずっといると飽きてしまうので、家具の配置を変えてみたりして、家にいてもなるべく新鮮な気持ちを保つようにしています。ベッドと本棚の位置を変えてみたりと、レイアウトを変えるだけで気分も変わりますし、「新しく部屋を契約し直したかな?」という感じもするんですよ(笑)。

荒井 僕はだいたいゲームをやっています。ロールプレイングゲームが好きなので、最近だとオープンワールドのゲームをすることが多いですね。時間があるときにゲームをするので、夜の時間帯にやることが多くて、夜更かししてしまうことも。

黒田 おうち時間が長いので、小ぶりのマッサージチェアを手に入れたんですよ。家にいるときは、だいたいブルブルとマッサージチェアでくつろいでいます。運動不足解消的なものになればいいなという気持ちもありつつ、ギターを弾いていると肩のところが上がらなくなるタイミングもあるので、そういうときにこれでブルブルさせていますね(笑)。

小川 最近は、エビを育て始めて、鑑賞しながら癒されています。

ーー食べるエビではなく……?

小川 食べるエビじゃないです(笑)。水槽の中をきれいにしてくれる、もともとは熱帯魚と一緒に飼う用のエビなんです。ツアーに行くなど家を空けるときに餌があげられなくなるので、他の生き物は飼えないのですが、このエビに関しては水槽についている苔や藻を食べて生きていけるので、飼い始めました。いま4センチぐらいで、大きくなってもあと数ミリぐらい。ちょっとずつ脱皮して大きくなっていく姿を観るのが、休日の癒しになっています。

ーーいろいろなお話ありがとうございました。では最後に、今後の抱負を教えてください。

片岡 僕たちはいろいろなかたちで、みなさんに音楽を提案していくと思うので、もし気が乗ったり状況が許したりするのであれば乗っていただきたい。でも、「いまはあまり気が乗らないな」というときは無理せず、自分の心を最優先にしていただいて、そのなかでsumikaの音楽が寄り添えていけたら、うれしいですね。自然と「音楽が聴きたい」「ライブに行きたい」と思ったときに、いつでも来てもらえるようなsumikaにして待っています。

取材後記

優れたポップネスを響かせてくれるsumikaの片岡健太さん、荒井智之さん、黒田隼之介さん、小川貴之さん。聴けば聴くほど、楽しい気持ちにさせてくれる3rdアルバム『AMUSIC』は、多彩な楽曲がぎっしりと詰まっています。そんなsumikaのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。


写真・後藤壮太朗 取材、文・かわむらあみり

sumika PROFILE
神奈川県川崎市出身、片岡健太(Vo,Gt)、荒井智之(Dr,Cho)、黒田隼之介(Gt,Cho)、小川貴之(Key,Cho)からなる4人組バンド。さまざまな人にとっての“sumika(住処)”のような場所になってほしいとの願いを込めて、2013年5月にsumika、sumika[camp session]結成。

2017年7月、1stフルアルバム『Familia』をリリースし、オリコン週間チャート5位を記録。2018年4月、『Fiction e.p』をリリースし、オリコン週間チャート3位を記録、6月には日本武道館3daysがソールドアウト。9月、劇場アニメ映画『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマ、劇中歌、主題歌と異例の3曲を手掛ける。

2019年3月、2ndアルバム『Chime』を発売し、日本武道館、横浜アリーナ、大阪城ホールなどアリーナ会場を含む全国ツアーを実施。2020年3月、『Harmonize e.p』発売。

2021年1月、第99回全国高校サッカー選手権大会応援歌の「本音」を含む両A面シングル「本音 / Late Show」をリリース。2月9、10、11日の3日間、さいたまスーパーアリーナでオンラインライブを開催。3月3日、3rdアルバム『AMUSIC』をリリース。

Information

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New Release
『AMUSIC』

(収録曲)
01.Lamp
02.祝祭
03.願い
04.イコール
05.Happy Birthday
06.Jamaica Dynamite
07.白昼夢
08.アルル
09.本音
10.ハイヤーグラウンド
11.惰星のマーチ
12.Late Show
13.わすれもの
14.Traveling
15.絶叫セレナーデ
16.センス・オブ・ワンダー
*収録曲は全形態共通。

2021年3月3日発売

(通常盤)
SRCL-11724(CD)
¥3,000(税別)

(初回生産限定盤A)
SRCL-11720〜1(CD+DVD)
¥4,909(税別)
<特典DVD>sumika Film #7〜sumika Online Live「Little Crown 2020」〜

(初回生産限定盤B)
SRCL-11722〜3(CD+DVD)
¥4,364(税別)
<特典DVD>sumika Film #8〜sumika[camp session] Live〜


sumikaオフィシャルサイト
https://www.sumika-official.com/