田代 わこ

ドキドキする美しさ…! 門外不出“恥じらいの”ヴィーナスと出合える奇跡の展覧会

2023.11.5
東京・上野にある東京都美術館で、「永遠の都ローマ展」が開かれています。本展では、ローマの観光地としても人気のカピトリーノ美術館から多くの作品が来日。古代彫刻の傑作をはじめ、油彩画や版画、貨幣など多彩な作品を楽しめる展覧会です。

歴史あるカピトリーノ美術館から来日!

18.WEB媒体用_カンピドリオ広場のカピトリーノ美術館

カンピドリオ広場のカピトリーノ美術館 ©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali

【女子的アートナビ】vol. 317

イタリアの首都、ローマにあるカピトリーノ美術館は、世界でもっとも古い公共美術館のひとつ。1471年に、時の教皇シクストゥス4世が《カピトリーノの牝狼》などの古代彫刻4点をローマ市民に寄贈したことからはじまり、その後、1734年にローマの古代遺物や彫刻、名家が所蔵していた美術品などが一般に公開されるようになりました。

カピトリーノ美術館が建つカンピドリオ広場は、あの有名なミケランジェロが構想。美しい敷石のデザインなどが目を引く観光客にも人気のスポットです。

そんな由緒ある美術館から、貴重な彫刻や絵画、版画など古代から近代までの作品が数多く来日。ほかにもローマ美術館など国内外の作品をあわせた約70点の展示作品を通して、ローマの芸術を堪能できます。

ローマの建国者はオオカミに育てられた…?!

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《カピトリーノの牝狼(複製)》 20世紀(原作は前5世紀) ローマ市庁舎蔵

本展は、5章構成。

第1章、「ローマ建国神話の創造」では、ブロンズや大理石像、貨幣などの作品を通して、古代ローマ建国を伝える有名なエピソードを知ることができます。

まず展示室に入ると、ローマのシンボルともいえる作品《カピトリーノの牝狼(複製)》が出迎えてくれます。

古代ローマ神話によると、ローマの建国者ロムルスと弟レムスは、軍神マルスと巫女レア・シルウィアの間に生まれた双子。しかし、王位をめぐる争いに巻き込まれてローマのテヴェレ川に捨てられ、その後オオカミに乳を与えられて育ったと語られています。

この伝説から、ローマ建国のシンボルとして、双子に乳を与える牝狼の姿が描かれた作品が多くつくられるようになりました。会場には、オオカミと双子がデザインされた紀元前の貨幣や鏡なども展示されています。

高さ約1.8メートルの巨大な顔!

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「永遠の都ローマ展」展示風景

第2章「古代ローマ帝国の栄光」では、頭部だけで高さが約1.8メートルもある巨大彫刻《コンスタンティヌス帝の巨像》の一部を原寸大で複製した作品が登場! この像は、先述したカピトリーノ美術館が誕生するきっかけとなった古代彫刻のひとつ。ローマ帝国の繁栄がダイレクトに伝わる迫力ある作品です。

同じ展示室にある《コンスタンティヌス帝の巨像の左手(複製)》も、大きくて見ごたえ抜群。この左手がもっている球体は、ボールではないようです。本展公式サイト内の「ローマクイズ」によると、「地球・真珠・たまご」のうちのどれかが正解。ヒントは、支配者の象徴です。詳しくは、下記Information欄に載せた公式サイトでご確認ください。

美しすぎる…! 門外不出のヴィーナス初来日!

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《カピトリーノのヴィーナス》 2世紀 カピトリーノ美術館蔵

次の展示室に進むと、本展のハイライト作品《カピトリーノのヴィーナス》が登場! 

本作品は、ミロのヴィーナス(ルーヴル美術館)、メディチのヴィーナス(ウフィッツィ美術館)と並ぶ古代ヴィーナス像の傑作のひとつ。前かがみの姿勢で、手で胸元などを隠す“恥じらい”のしぐさが特徴的で、ドキドキするほどの美しさです。

その美しさから、1797年、ナポレオンがローマに遠征した際、フランス軍により接収され、ルーヴル美術館に収蔵されてしまいました。ナポレオン敗北後はローマに返還され、1834年からカピトリーノ美術館に展示されています。その後は同館から出たことがほとんどなく、今回がなんと2回目とのこと。まさに門外不出の作品です。

ちなみに、筆者は数年前にローマを訪れた際、カピトリーノ美術館で本作品を見てきました。八角形の「ヴィーナスの間」に展示されていたのは、本作品だけ。でも、その展示室には特に多くの観光客が集まり、みなさん熱心に鑑賞されていました。そんな美術館の顔ともいえる人気作品を、イタリアから遠く離れた日本に貸してくれるなんて、本当に奇跡。おそらく二度とないチャンスだと思います。

見ごたえある絵画も!

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「永遠の都ローマ展」展示風景

続く第3章「美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想」では、カピトリーノ美術館の起源やミケランジェロの広場設計などについて紹介。カンピドリオ広場の設計を担当したミケランジェロのアイデアが伝わる版画作品などを見ることができます。

絵画好きな人が特に楽しめるのは、第4章「絵画館コレクション」の展示室。16世紀から18世紀に活躍した画家たちによる見ごたえある油彩画が並んでいます。

なかでも、イタリア・バロックの巨匠、ピエトロ・ダ・コルトーナが描いた《教皇ウルバヌス8世の肖像》は必見作のひとつ。教皇が着ている服やレースの質感などが驚くほど緻密に表現されています。

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「永遠の都ローマ展」展示風景

第5章「芸術の都ローマへの憧れ─空想と現実のあわい」では、ナポレオンなどの為政者や多くの芸術家たちを魅了したローマ美術について、版画や模型などで紹介。イタリアの古代建築や風景などを数多く描いた画家、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージによる3メートル近い細密版画《トラヤヌス帝記念柱の正面全景》などが展示されています。

最後の「特集展示 カピトリーノ美術館と日本」では、カピトリーノ美術館と日本とのつながりを紹介。1873年、明治政府が派遣した岩倉使節団がカピトリーノ美術館を視察し、彼らの経験は日本の博物館政策や美術教育に影響を与えました。意外なつながりを知ることで、よりカピトリーノ美術館が身近に感じられます。

レストランとのコラボも!

レカンメニュー②

本展の開催を記念して、レストランとのコラボも実施されています。

アトレ上野EAST1階にある「ブラッスリー・レカン」では、「永遠の都ローマ展」特別コラボレーションメニューを展開。古代ローマ時代から食されていた食材を使用したり、出品作品からインスピレーションを受けたシェフ特製のオリジナルコースがあったりして、展覧会の余韻にたっぷりひたれそう。

「ブラッスリー・レカン」は、上野駅の旧貴賓室を利用した優雅な雰囲気の店内が大人気。おしゃれな空間でおいしい料理を味わいながら、古代ローマの芸術に思いをはせてみるのもよさそうです。

「永遠の都ローマ展」の会期は12月10日(日)まで。

Information

会期:2023年9月16日(土)~12月10日(日)
会場:東京都美術館
休室日:月曜日
開室時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:一般 ¥2,200 、大学生・専門学校生 ¥1,300 、65歳以上 ¥1,500
※土日・祝日のみ日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)
展覧会公式HP: https://roma2023-24.jp 
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)