志村 昌美

芳根京子が明かす「北川景子さんだけが悩んでいることに気づいてくれた」

2021.2.8
直木賞を受賞した大ベストセラー小説『ファーストラヴ』が、待望の映画化。豪華キャストとスタッフが集結して作り上げた“禁断のサスペンス・ミステリー”に、公開前から高い注目が集まっています。そこで、劇中で見せた鬼気迫る演技が話題となっているこちらの方にお話をうかがってきました。

女優の芳根京子さん

【映画、ときどき私】 vol. 355

今回、芳根さんが演じたのは、父親を刺殺した容疑で逮捕された女子大生の聖山環菜。主演の北川景子さん演じる公認心理師の真壁由紀が、環菜との面会をきっかけに心の奥底に隠したはずの“ある記憶”と向き合っていく姿が描かれているため、物語のキーパーソン的存在でもあります。そこで今回は、本作に出演して得た新たな気づきやファーストラヴの思い出などについて、語っていただきました。

―まずは、この作品のオファーを受けたときのお気持ちから教えてください。

芳根さん 堤幸彦監督の作品で北川景子さんや中村倫也さんとご一緒できる喜びとやりがいのある役をいただけて、大きな声で「やったー!」と言ってしまったほどうれしかったです。でも、読めば読むほど本当に重要な役であることに気がつき、ワンテンポ遅れて衝撃が走った感じでした。

―複雑なキャラクターでもあるため、演じるうえで難しさを感じることもあったのではないでしょうか?

芳根さん 私が演じた環菜は周りを翻弄する役どころだったので、役作りの過程で気がついたのは、私の演じ方次第で作品の“色”が変わってしまうかもしれないということ。そう考えるようになってからは、プレッシャーで怖くなってしまうこともありました。

でも、監督とたくさん相談しながら環菜を作りあげられたので、普段だったら感情だけで演じていたようなシーンも、見え方を意識して、頭を使って演じることに。これまでとは違う達成感を味わうことができたと思います。

北川景子さんは、心が安らぐ大好きな先輩

―そんななかでも、忘れられない出来事はありますか?

芳根さん 印象に残っているのは、北川さんと2人で面会室にいる後半のシーン。リハーサルの前にした段取りの時点で、北川さんの目を見てお芝居をしていたら、下に水たまりができるくらい涙があふれて、ボロボロに泣いてしまったことがありました。

そのあと監督に「もう一回同じことをやれる自信がありません」と伝えたら、「ごめん、もうカット割り全部消しゴムで消しちゃったから同じことしてくれないと困る」って言われてしまって(笑)。「困ると言われても困る!」と思ったんですけど、それに応えるのが私たちの役割ですから。内心は不安でドキドキでしたが、北川さんの目を見たら、やっぱりあふれるものがあったので、乗り越えられました。

―北川さんとご一緒されてみて、印象に残っていることはありますか? 

芳根さん 実は、その時期は仕事でも私生活でも、モヤモヤして悩んでいたんですけど、特に誰にも言わずに過ごしていました。でも、そんななかで唯一そのことに気がついてくれたのが北川さん。そういう部分は、劇中の役の関係性と重なる部分はあったと思います。

―実際、北川さんからはどのような言葉をかけられたのかを教えていただけますか?

芳根さん  撮影が終わったあと、お食事に行かせていただいたときに「芳根ちゃん、大丈夫? 悩んでるんじゃない?」と声をかけられて、私の心が全部見透かされているのかなと本当に驚きました。それは北川さんの観察力の高さや人柄でもあると思いますが、本当にパワーのある方なんですよね。北川さんにはたくさんのことを引き出していただきましたし、心が安らぐ瞬間を作ってくださる大好きな先輩です。

あのときの私以上に、環菜を演じられる人はいない

―女優の先輩としても学んだことは多かったですか?

芳根さん それもたくさんありました。プライベートでお会いしたときにも、「こういう女優さんになりたい」とか「こういうお芝居をしたい」とか、いつもいろいろなお話をさせていただいています。北川さんがいまの私の年齢の頃にどうだったかというお話も聞かせていただいたりしたので、おかげで将来に対する不安がなくなりました。

―ステキな関係ですね。ただ、今回は精神的につらい役どころだったと思いますが、私生活に影響を与えることはありませんでしたか?

芳根さん この役はけっこう引きずりましたが、同時期にコメディのドラマを撮影していたので、それに救われました。どれだけ環菜でつらい思いをしていても、翌日には別の現場で周りの方たちが笑わせてくださっていたので。そういった感情の差も、今回はすごくおもしろいなと思ったところです。

ただ、環菜のことを考えるだけで涙が出てしまうようなことが続いていたので、撮影が終わってから環菜とは距離を取るようにしました。それほどいままでで一番引きずった役だったかもしれないですね。

―ご自身の女優人生においては、どのような作品になりましたか?

芳根さん もちろん、どの作品も出会えてよかったと言えるものばかりですが、そのなかでもこの作品は特にその思いが強かったと思います。ちょうど悩んでいた時期だったからこそできた部分もあるので、あの時期の私以上に環菜を演じられる人はいないと言いたいくらい。いまの私にもできないかもしれないですね。

でも、そういったことも含めていろいろなことを気づかせてくれた役なので、この先も続いていく芝居人生においてたくさんのことを教えていただきましたし、改めてお芝居の楽しさを味わうこともできました。ここから自分の人生が変わると感じられた作品にもなったと思います。

これから観客の反応もひとつずつ吸収していきたい

―そのほかの共演者の方とのやりとりで、思い出に残っていることはありますか?

芳根さん まず中村倫也さんは、本当にこの役にぴったりな方だなという印象でした。監督からは話す相手が女性か男性かで変えてほしいと言われていたので、男性のときには少し媚びを売るような甘ったるい感じを出していますが、中村さんがステキな方だからこそ、演じやすいと感じる部分は多かったです。

あと、お母さん役の木村佳乃さんは、現場にいらっしゃるとすぐにわかるくらい本当に明るくてパワーのある方だなと。とても気さくにお話してくださったので、それもうれしかったです。ただ、映像で木村さんを見たときは、あの恐ろしさにゾッとしました。でも、観る人にそういう恐怖心を与えてしまう木村さんの演技がすごく好きですし、私もいつかああいう役をやってみたいです。

―法廷のシーンも非常に緊迫感がありましたが、撮影は大変でしたか?

芳根さん 実はあのシーンでも、面会のときと同様に脚本には泣くとは書いてませんでしたが、それでも込み上げてくるものがあり、独白のシーンでは段取りのときからすごく感情があふれてしまうことも。気持ちが落ちてしまうときもありましたが、監督が私に向かって冗談を言ってくださったりしたので、そういう監督の明るさにとても救われました。

―この作品を経て、ご自身で成長を感じる部分などがあれば教えてください。

芳根さん 特殊な役でしたが、ここまで感情が持っていかれる役に出会えたことは奇跡だと思いました。自分としてはやり切っていても、実際に環菜を見た観客の方々の反応から得るものもあると思うので、それをひとつずつ吸収していきたいです。

環菜を演じたことで、すでに自分からにじみ出ている部分もあるかもしれませんが、それが何かを言葉にできるようになるまではもう少し時間がかかるのかなと。それくらい受け止めるのがつらい役でしたし、いまもまだ一緒に生きている感覚なのかもしれません。いつか思い出として振り返れるようになったら、自分でも成長がわかるようになるのかなと思っています。

仲良しの母が心の支えになっている

―作品が終わると、いつもお母さまとお出かけするそうですが、今回はどのように過ごされましたか?

芳根さん いつもだったら、「終わったー!」といって母と外食に行くんですけど、その時期はすごく忙しかったのと、作品が重たかったこともあって、家で母とずっと一緒に時間を過ごしました。物理的にも体力的にも余裕がなかったこともありますが、そういうこともいままではなかったので、この役に出会えたのは運命だったなと改めて感じています。

―この作品は、母と娘に関する話もありますが、そういったことについても話されましたか?

芳根さん 私の母も涙もろいので、原作を読んだときに「環菜ちゃん……」と言って泣いていましたが、私が試写を見たあとに「すごく救われたし、環菜の未来が楽しみに感じられたよ」と伝えたら、また泣いてしまって(笑)。母は私が朝ドラに出演するようになったときくらいから、娘ではなくちゃんと役で見ることができるようになったと言ってくれて、純粋に作品を楽しんでくれているので、この作品もどんな感想を言ってくれるのか楽しみです。

私にとっては母が心の支えであり、生きがいと言っても過言ではないほど本当に仲良しなので、母の存在に救われています。私の幼なじみからも、「こんなにポジティブで、パワフルで、明るい人はいままで見たことがない」と言われているくらいの母なんです(笑)。

―芳根さんにとって、いま一番幸せを感じる瞬間はどんなときですか? 

芳根さん 最近飼い始めたフェレットと家で一緒に遊ぶのが毎日の楽しみですね。私が出かけるときにいつもかわいい姿を見せてくれるんですけど、それを見るだけで「早く帰ろう!」と思って癒されます。

―日常生活で欠かさずにしていることはありますか? 

芳根さん いままで美容に無頓着で、メイクもスキンケアもほとんどしたことがなかったんですけど、最近はメイクさんや美容に詳しい友達といろいろな情報を共有するようになりました。特に毎日パックをするようになってからは、今日はどのパックにしようかなと選ぶのが楽しくて、「ああ、私って女子だなぁ」と思えてうれしくなります(笑)。

自分のファーストラヴって何だろうと考えている

―では、「ファーストラヴ」と聞いて思い出すことがあれば、教えてください。

芳根さん 実は自分の初恋の記憶がないので、母に聞いてみたんですけど、「わからない」と言われ、幼なじみには「多分、小学校6年生じゃない?」と言われたくらい「私のファーストラヴって何なんだろう?」と考えているところです(笑)。

というのも、子どもの頃の私は人見知りが激しくて、母の後ろから顔を出しているようなタイプだったので、あまり感情を出すこともなかったんですよね。なので、自分でも忘れてしまいました……。

―(笑)。ちなみに、いまラヴなものといえば何ですか?

芳根さん いまはフェレットのことしか頭にないかもしれませんね。頼まれてもいないのに、マネージャーさんやメイクさんたちに毎日写真を見せてます(笑)。

―かわいいですよね。それでは最後に、理想としている女性像や今後の目標があれば、教えてください。

芳根さん 私は、北川さんのような女性になりたいと本当に思っています。私が大したことない話をしても毎回ちゃんと答えてくださったり、優柔不断な私に的確なアドバイスをくださったり、あの美しさは心から出ている美しさもあるんだなと感じているからです。

しかもそれでいてお母さんでもあるなんて、本当に憧れます。将来、私も結婚して子どもを持つかもしれないですけど、あんなふうになりたいなと。私もがんばろうと思って、最近北川さんと同じジムに通い始めました。ただ、一向に北川さんにはなれないので、次は何をしたら北川さんになれるのかを今度聞いてみたいと思います(笑)。

インタビューを終えてみて……。

仕事のことからプライベートのことまで、目をキラキラと輝かせて話す姿が印象的な芳根さん。この作品と北川さんとの出会いがいかに大きかったかをひしひしと感じました。誰もが釘づけになってしまう芳根さんの熱演をぜひお見逃しなく!

心を揺さぶり、刺激する!

先が読めない展開と環菜に翻弄されながら、たどり着く“衝撃の真実”。気がつけば、誰もがさまざまな問いと向き合わずにはいられないはず。あなたも心の奥にある隠し続けてきた“愛の記憶”を呼び起こしてみては?


写真・北尾渉(芳根京子) 取材、文・志村昌美
スタイリスト:藤本大輔(tas)
衣装協力:beautiful people(beautiful people 青山店 03-6447-1869)/JIMMY CHOO(JIMMY CHOO 0120-013-700)/talkative(talkative 03-6416-0559)

ストーリー

アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、著名な画家である父を刺殺するというセンセーショナルな事件が発生。しかも、「動機はそちらで見つけてください」という環菜の挑発的な言葉が、世間をますます騒がせてしまう。

その後、事件を取材することになった公認心理師の真壁由紀は、夫の弟で環菜の弁護士でもある庵野迦葉とともに、彼女の本当の動機を探ろうと面会を重ねることに。二転三転する供述に振り回されながらも、由紀は過去の自分と似た“何か”を感じていた。そして、由紀が封印していた記憶をさらけ出したとき、環菜がついに驚くべき真実を語り始めることに……。

胸がざわつく予告編はこちら!

作品情報

『ファーストラヴ』
2 月11 日(木・祝)より 全国ロードショー
北川景子
中村倫也 芳根京子
板尾創路 石田法嗣 清原翔 ・ 高岡早紀
木村佳乃 窪塚洋介

監督:堤幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)
音楽:Antongiulio Frulio
主題歌・挿入歌:Uru「ファーストラヴ」「無機質」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:KADOKAWA
製作:『ファーストラヴ』製作委員会 
制作:角川大映スタジオ/オフィスクレッシェンド
https://firstlove-movie.jp/
公式Twitter @firstlove2021   公式Instagram @firstlove2021  #ファーストラヴ
https://firstlove-movie.jp/

© 2021「ファーストラヴ」製作委員会

※ 商品にかかわる価格表記はすべて税込みです。