一人暮らしも家族も! 災害時をリアルに想定した”ローリングストック”のはじめ方ガイド

イラスト・別府麻衣 取材、文・市岡彩香 PR・日本赤十字社 — 2024.8.20〔PR〕
地震や豪雨といった自然災害など、災害時の避難生活に対して事前に備えていても、在宅避難をするときの非常食は足りているのか、停電や断水時の食事はどうしたらいいのか、など不安なことは尽きないですよね。そこで今回は、管理栄養士であり、防災士の資格も持つ中下涼さんに、知っておくべき「ローリングストック」のこと、そして簡単に作れる非常食レシピについて教えてもらいました。

在宅避難のときのため知っておくべき「ローリングストック」とは?

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日本赤十字社 広島県支部 健康・栄養赤十字奉仕団委員長 中下涼さん

災害時には避難所に避難することもありますが、自宅が倒壊や焼損、浸水などの危険性がない場合は在宅避難を選択する可能性もあります。在宅避難に備えて食品を備蓄しておくことで、災害時、交通網の寸断により物資がすぐに届かない場合でも、食事を自分で用意することができます。そこで今回は、在宅避難時を健康に生き抜くための「ローリングストック」について教えてもらいました。


―――「ローリングストック」とは何でしょう?

中下さん 備蓄していたはずなのに、食べようと思ったら期限が切れていた…なんて経験はありませんか? いざ、というときに困らないためにも、ローリングストックがおすすめです。
ローリングストックとは、普段の食品を少し多めに買い置きし、使った分だけ買い足すことで、常に一定の食品がご家庭に備蓄されている状態を保つための方法です。

災害への備えを、日常生活と切り分けて考えてしまうと、なかなか継続が難しいですよね。災害はいつ起こるかわからない分、日常生活の中で“消費”と“補充”をしていくことで、結果としてローリングストックにつながっていく。そのように、日常生活に当てはめて考えていくことが大切だと思います。


ローリングストックに適した食品とは?

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―――ローリングストックに適した食品は何ですか? また、どのような食品を備蓄しておくべきか教えてください。

中下さん バランスよく栄養を摂れるように備蓄することが大切です。買ったその日に食べきらなければいけない食品や、要冷蔵と書いてある食品は不向きですね。期限が1週間~半年程度あるものを選ぶとローリングストックがしやすいと思います。例えば、以下のような食品がローリングストックに適しているといえます。

パックごはん、アルファ化米

水が限られている災害時には、米をといだり炊いたりすることが難しいことも。湯煎で温められるパックごはんや、水を入れるだけで食べることができるアルファ化米が便利です。

魚の缶詰、卵

避難生活が長引くと生鮮食品が手に入りにくくなるため、たんぱく質が不足しがちに。私はサバや鮭、ツナなどいろんな魚の缶詰を普段から備蓄しています。卵は1つあれば、災害が起きたとしても、袋に入れて湯煎をしたらオムレツが作れるなど使い道が多いです。

冷凍のカット野菜

災害時に手に入りにくくなる野菜は、普段から日持ちするものや、カットして冷凍したものを保存しておくと安心。レトルトのスープに入れるだけで野菜の栄養を手軽に摂ることができます。

チーズ、ロングライフ牛乳

長期保存できる乳製品には、チーズやロングライフ牛乳などがあります。カルシウムは災害時だけでなく、日常生活でも不足しがちな栄養成分なので、日頃から積極的に摂り入れましょう。

チョコレート、小豆の缶詰

ストレスを感じやすい日に、ほっとできる甘いものがあると嬉しいですよね。チョコレートや小豆缶詰など、日持ちして常温で保管できるものがおすすめ。糖類は必要なエネルギーですし、災害時でも楽しみのひとつになってくれます。

バナナなどの皮がついた果物

バナナやみかんなどの皮のある果物は、災害時でも衛生的に食べることができます。普段から果物を食べるように意識しておくと、災害時に摂取しにくい果物の栄養素を摂ることができます。

カレーなどのレトルト食品

おすすめは、少し贅沢な気分にさせてくれるレトルトカレー。ちょっと高価なレトルト食品を備蓄しておくことで、災害時に限らず日常のなかでも時短クッキングや、ご褒美メニューになるなど、食べることが楽しみになる備蓄食に。「食べたい!」と心から思える食品を選択することが、ストレスなく備蓄を継続させることにつながります。


―――どれくらいの量の食品を備蓄しておけばいいのでしょうか?

中下さん 一人あたり最低3日分、できれば1週間分といわれています。主食、主菜、副菜にあたる食品を、まんべんなく備蓄することがおすすめです。ご高齢の方やアレルギーのある方は食べられるものも選ぶようにしましょう。


健康や美容にもいい簡単非常食レシピ3選

続いて、料理初心者でも簡単に作れる「非常食レシピ」を教えてもらいます。

―――在宅避難時にはガスや水道などのライフラインが使えない状況が想定されます。食品以外に備えておいた方がいいものはありますか?

中下さん 紹介するレシピで使用している”高密度ポリエチレン袋”は、熱に強いので、用意しておくと重宝します。鍋を汚さずに調理ができるので水の節約になり、普段の洗い物が面倒な日にもおすすめです。それ以外には、ガスコンロ、ガスボンベ、水、鍋は、災害時にガスが通らなくなったり、断水したりした場合、調理をするうえで必要になります。ガスボンベは約1時間で1本消費するので、予備のガスボンベも一緒に備蓄しておくようにしましょう。
非常食の調理はキャンプ飯のような要素もあるので、ご家族で一緒に作ってみるのも楽しいですよ。


【非常食レシピ紹介】

1. 栄養素をそのままに!「サバ缶とキノコの炊き込みごはん」

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<材料(1人前)>
無洗米1/2合、サバ缶(醤油)1/4缶、水100ml、キノコ(お好みの具)適量

<作り方>
1. 鍋に無洗米、水を入れて30分浸漬させる
2. サバ缶を汁ごと入れ、キノコも加えてフタをし、強火で炊く
3. フタから湯気が出てきたら火を弱火にし、更に10分炊く
4. サバの身をほぐしながら混ぜ合わせてフタをし、10分蒸らして完成

中下さん 魚の缶詰は下処理が不要で手軽。缶の中にある魚の栄養が詰まった汁がうまみを出してくれるため、調味料を使わずに作ることができます。魚に含まれるカルシウムとキノコに含まれるビタミンDは一緒に摂りたい栄養成分。サバ缶に限らず、さまざまな魚の缶詰で代用可能です。これを機会に、炊飯器に頼らず、災害時を想定してガスと鍋で炊いてみることをおすすめします!


2. 家族みんなで楽しめる! 栄養バランス抜群の「オムレツプレート」

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・オムレツ
<材料(1人前)>
卵2個、塩・こしょう適量

<作り方>
1. 高密度ポリエチレン袋に材料(卵、塩・こしょう)すべてを入れる
2. ポリ袋の中に空気が入らないようにねじり上げ、袋の口を上の方でかたく結ぶ
3. 鍋にお湯を沸かし、2を入れて10分加熱する
4. 鍋から取り出して、袋のままオムレツの形を整えて完成

・ケチャップライス
<材料(1人前)>
無洗米1/2合、トマトジュース100ml、水20ml

<作り方>
1. 高密度ポリエチレン袋に無洗米と水(レシピ外)を加えて30分浸漬させる
2. 1の水を取り出し、トマトジュースと水を加える
3. ポリ袋の中に空気が入らないようにねじり上げ、袋の口を上の方でかたく結ぶ
4. 鍋にお湯を沸かし、3を入れて30~40分加熱する
5. 鍋から取り出し10分蒸らして完成

・ソーセージ
<材料(1人前)>
ソーセージ 1本

<作り方>
1. 高密度ポリエチレン袋にソーセージを入れる
2. ポリ袋の中に空気が入らないようにねじり上げ、袋の口を上の方でかたく結ぶ
3. 鍋にお湯を沸かし、2を入れて10分加熱する

中下さん オムレツとソーセージに含まれるたんぱく質、トマトジュースに含まれるビタミンなどの栄養成分をワンプレートで。お湯に入れるタイミングをずらしてひとつの鍋で作ることができます。カット野菜を加えるとさらに栄養アップ!


3. みんなでシェア! 優しい甘みでほっとひと息できる「小豆ようかん」

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<材料(小豆ようかん1本分)>
ゆで小豆缶1缶(200g)、砂糖大さじ1、粉寒天4g、水100ml

<作り方>
1. 高密度ポリエチレン袋に材料(ゆで小豆缶、砂糖、粉寒天、水)すべてを入れる
2. ポリ袋の中に空気が入らないようにねじり上げ、袋の口を上の方でかたく結ぶ
3. 鍋にお湯を沸かし、2を入れて10分加熱する
4. 3を取り出し、袋ごと牛乳パック、もしくは容器に移して常温で固める

中下さん 小豆のたんぱく質と寒天に含まれる食物繊維を同時に摂取することができます。牛乳パックでつくると、サイコロ状に出来上がりカットしやすいです。約5人前になりますので、みんなで分け合って食べればリフレッシュできますね。


非常食レシピは日本赤十字社のウェブサイトでも!

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日本赤十字社 香川県支部「なん炊っきょんな非常食炊き出しレシピ集」より

日常生活にローリングストックを取り入れ、さらに災害時に対応できる調理を経験しておくことで、災害時の備えができます。中下さんがボランティアとして活動する日本赤十字社のウェブサイトでは、炊き出し訓練の実施やレシピ集を制作しています。全国各地の炊き出しレシピは日本赤十字社のウェブサイト公式Xでも見ることができます。ぜひチェックしてみてください。


【お話を伺ったかた】
なかしたりょう 管理栄養士、防災士の資格を持つ。広島の企業でアシスタント企画をしながら、日本赤十字社広島県支部で赤十字奉仕団支部指導講師、健康・栄養赤十字奉仕団委員長を務める。被災地での活動経験を生かした炊き出しレシピの開発や、地域の防災訓練で炊き出し指導などを行っている。


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