会社を辞めて、こうなった。【第38話】 アメリカでの居場所作りスタート。 教科書の世界からリアルな現実へ。
心理のプロによる禅問答でノックアウト!
バッカイサンガは、グレンさんという男性が始めたサンガ。バークレーにティク・ナット・ハン師の本を出版しているパラレックス プレスという出版社があるのですが、そこでティク・ナット・ハン師の書籍を数多く編集し、グレンさん自身も『Ten Breaths to Happiness(幸せへの10の呼吸)』という本を書いています。最初誰がグレンさんなのかわからなかったのですが、腐っても編集者、野生の勘でしょうか。「あの人、オーラがあるなぁ」と感じた、内側から輝きを放つ白髪頭をポニーテールにした男性がグレンさんでした。
グレンさんとお話している間は、彼のことを何も知らないフリをしました。これは私の勝手な判断なのですが、そういう感じのほうがいいだろうなとなんとなく思ったからです。会話が進むにつれてグレンさんに「アメリカで何を勉強しているんですか?」と聞かれ、(うっわぁ〜、こんな心理や哲学のプロに言うのはイヤだなぁと思いながら覚悟を決めて)「心理学です」と答えると。「Wow! 心理学!」と言われたので、(あなた、その道のプロじゃん〜!と思って)「とはいえ、私は何も人のことがわかっていません。私自身のことを含めてです…」と言うと、「じゃあ、心理学が何かをわかっているよ。それを理解していたら、十分だよ」とグレンさん。わぁ、完璧な受け答えをする人だなぁ…。引き続きいろんなことを彼から学ぼうと思いました。ちなみにバッカイサンガには、素敵なターコイズの指輪を両手にいっぱいつけている70代のレズビアンカップルが居たりして。グレンさんもポニーテールだし、1960年代の元祖ヒッピーエネルギーに溢れたサンガだと思いました。
ニュージェネレーションサンガは、20〜30代の人向けのサンガ。他のサンガは60代、70代といった人生の先輩たちが多いのですが、こちらは同世代の人と心の内を打ち明け合える集いです。ちなみに先週、急にバークレーの大学院生にちょっとした研究室のお手伝いを依頼され、そのやり取りをしているときに “正語” のプラクティスを試みた私。けれども残念ながらうまく彼らと繋がることが出来ませんでした。心をオープンにしたのに無反応されると、やっぱり傷つきます。無視が一番キツイ。その結果、相手の受け取りやすい形に心の開き具合を調整すること。これも “正語” に必要なことなのだなとわかりました。
ハートを開くのが怖くなって、再び人を遮断してしまいそうになったとき。そんなときに心を込めて話すことができ、ただ寄り添うように聞いてくれる存在がいることは大きな癒しになります。しかもサンガの中に今学期からバークレー心理学部に通うという人が居たんです! 35歳の彼は長年アルコール中毒に苦しみ、闘っていたそう。一念発起して短大で学び、この秋からバークレーに編入することが出来たのだとか。校内で心を通わせることが出来る友達が居なかったので、これは本当に有難いことです。
人生は、サディスティックな喜劇。
ようやく教科書の中の世界から、リアルな世界へと向かい始めた私のアメリカ生活。けれどもまだ、よちよち歩きです。そこで、いまだに絶望的な気持ちになる日もあります。実際にサンガの帰りのバスの中で恐ろしい体験もしました。気分が上がったと思ったら、次の瞬間には急降下です。これだから、人生なんてどう転んでいくのか全くわかりません。先週映画館で見た大好きなウディ・アレンの最新作『CAFÉ SOCIETY』で、“Life is a comedy written by a sadistic comedy writer .” (人生ってのは、サディスティックなコメディ作家が書いた喜劇だよ)という素晴らしい台詞がありました。サディスティックという表現を加えるあたり、ウディはまさに現代のシェイクスピアですよね! なるほど、人生に何が起こっても自分主演の映画を見る観客のように笑って優しく受け流せる余裕を持つこと。それもまたマインドフルネス実践の先にある、遥か遠い、遠〜いゴールなのかもしれませんね。
See You!
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編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。