好きなこと、話そ!

田代 わこ

福島の “時間” を撮る女性写真家、菅野ぱんださん。写真展&インタビュー

2017.4.1
新宿ニコンサロンで、菅野ぱんだ写真展『Planet Fukushima』がはじまりました。普段は主にポートレートの仕事をされ、星野源さんや鈴木亮平さんなど今をときめく著名人の撮影も手がける写真家、菅野ぱんださん。ランドスケープ作品でも高い評価を得ている彼女が、今回の個展で見せてくれたのは、震災後に故郷の福島で撮った写真の数々。どんな思いで福島を撮影されてきたのか、菅野さんにお聞きしてみました。

新宿ニコンサロンで、菅野ぱんだ写真展『Planet Fukushima』がはじまりました。普段は主にポートレートの仕事をされ、星野源さんや鈴木亮平さんなど今をときめく著名人の撮影も手がける写真家、菅野ぱんださん。ランドスケープ作品でも高い評価を得ている彼女が、今回の個展で見せてくれたのは、震災後に故郷の福島で撮った写真の数々。どんな思いで福島を撮影されてきたのか、菅野さんにお聞きしてみました。

菅野ぱんだ写真展『Planet Fukushima』、開催中

【女子的アートナビ】vol. 63

この写真展では、女性写真家、菅野ぱんださんが撮影した福島の写真作品50点が紹介されています。

IMG_8541 (800x598)

会場には、風景だけでなく、人物や動物にフォーカスした写真も並び、作品サイズもさまざま。カラーもモノクロもあります。

IMG_8533クレジットマーク (800x619)

がれきが残り、震災の爪痕を強く感じる写真もあれば、穏やかで優しい時間が伝わる写真もあります。

Fd-03クレジットマーク (800x697)

菅野さんの写真は、ちょっと独特。テレビのニュースや新聞で見る被災地の映像とは明らかに違います。

Fd-06クレジットマーク (800x613)

時空を超えているような、なんとも言えない不思議な空気が漂っています。

Fd-02 クレジットマーク (800x623)

こちらは、ドローンで撮影された写真。デザイン的で、まるで棚田のような美しい風景に見えますが、被写体は放射能を帯びた土や木材などのいわゆる除染廃棄物。よく見ると、ブルドーザーも写っています。

IMG_8537クレジットマーク (800x620)

真ん中の写真は、原発近くの車内で撮られたもの。放射線の量を測定する線量計が高い数値を示しています。

菅野さんにインタビュー

写真展の会期初日、菅野さんにインタビューさせていただきました。

アー写横位置 (500x401)

写真家、菅野ぱんださんは、2002年にキャリアをスタートし、雑誌や広告、音楽関係の仕事を中心に活躍されています。ちなみに、名前の由来は「パンダが好きだから」。これまで、パンダを撮った写真集も2冊出されています。

―震災後、いつごろから福島の写真を撮り始めたのですか?

菅野さん 2011年の震災後、はじめて福島に帰ったのは5月。最初は写真を撮るとは考えていなくて。報道の方たちが撮っていますし、自分ができることはないのかな、と思っていました。でも、帰省するときはいつもカメラを持っていて、それでなんとなく撮り始めたという感じです。

―撮影地は、すべて出身地の伊達市ですか?

菅野さん 福島には観光地もたくさんあるので、地元だけでなく、会津や海側など、あちこちで撮りました。

―福島の写真で、どんなことを表現されたいと思われたのですか?

Fd-07クレジットマーク (800x633)

菅野さん 以前は、人間と風景だけだったのが、震災後は人間と風景の間に放射能が入ってきて、そういう空気を最初はイメージして撮っていました。なので、線量計を必ず携帯して、景色と一緒に必ず線量計も写すようにしました。でも福島の場合、空気だけでなく、時間も独特な感じで流れている気がして、ある場所では時間が止まっているように思えるし、被害が大きかった地域は一日単位で変わっていく感がして……。場所によって人によって、時間の流れを意識して撮るようにしています。例えば、5年前に撮った同じ場所で、また撮ってみたりして。時間の経過を表現できるかな、と思いました。

―震災前と後で、地元の景色は変わりましたか?

菅野さん 前に撮ったときは、特に風景と意識していなかったと思います。でも、震災という出来事があって、福島の風景を意識するようになりました。やはり、変化を感じるような気がします。目に見えるものは同じですが、空気とか時間とか、見えないものが変化しました。

―有名人のポートレートや動物写真と、福島の写真、撮影時に違いはありますか?

菅野さん それぞれ撮るときは頭が切り替わっているけれど、共通しているのは、人間の寿命とか時間の流れ。ポートレートを撮るときも、モデルさんの今までの時間やこれからの時間を考えますし、動物園で写真を撮るときも、動物の時間や動物を見ている人の時間を考えています。

―「自分が福島を撮る意味を見出した」と公式サイトに書かれていましたが、その意味とは?

菅野さん 撮る意味は、福島の空気だけでなく、何年間という時間を撮って、みんなに見てもらいたい、ということでしょうか。福島は、時間の移り変わりが特別な感じがするので。

―今後も、福島を撮りたいですか?

菅野さん 定位置で撮っている場所があるので、時間の経過をこの先も撮りたいと思っています。

―最後に、ananwebの読者にメッセージをいただけますか?

菅野さん 自分自身、撮影に行った福島から東京に戻ってくると、精神的に落ちてしまうこともあり、福島のニュースとか見たくないときもあります。見たくないものは見たくない。動物とか肉球とかカワイイもの、見たいものだけ見ていたいときもあるけれど、そうも言っていられない気もして……。少しでも時間を作って、がんばって見てほしいです。

インタビューを終えて

写真で福島の空気や時間を表現したいという菅野さん。実際、彼女の写真を見ていると、独特の空気や、時には息苦しく思えるような時間も感じられ、風化していた震災の記憶が一気に呼び戻されました。ですが、展示されているどの写真にも、菅野さんの温かいまなざしが感じられ、見終わった後は、少し優しい気持ちになれたような気がします。本展の会場は、新宿駅西口からすぐ近くの新宿エルタワー28階にあります。入場無料ですので、ふらりと立ち寄ってみてはいかが?

Information

会期:~4月10日(月) ※会期中無休
時間:10:00 ~ 18:30 ※最終日は15時まで
会場:新宿ニコンサロン(新宿エルタワー28階 ニコンプラザ新宿内)
入場無料

http://www.nikon-image.com/activity/salon/exhibition/2017/03_shinjyuku.html#04

菅野ぱんださんの公式サイト

この記事を書いた人

田代 わこ
記事数:160 Posts

出版社勤務を経て、フリーランスのライター・エディターに。主にエンタメ系コンテンツ記事を執筆。趣味は美術鑑賞と絵を描くこと。ananwebでは「カメラマンが教える! いいね! がつくスマホの撮影テク」も連載中です!