
刺激的! 花もアソコも筋まで見える、メイプルソープ写真展
ロバート・メイプルソープ写真展『MEMENT MORI』、開催中!
【女子的アートナビ】vol. 62
この展覧会では、シャネル銀座ビルディングの設計を手がけた高名な建築家、ピーター・マリーノ氏のプライベートコレクションから、メイプルソープの作品91点を紹介。静物や花、そしてヌードも含めた写真家の多彩な作品が一堂に集まるのは2002年以来とのこと。かなり貴重で見ごたえある写真展です。
メイプルソープって?
過激な写真家メイプルソープ! といっても、15年ぶりに紹介されるのですから、20~30代の方は初めて聞く名前かもしれません。彼は1946年にアメリカで生まれ、ブルックリンの名門美術大学で美術学士号を取得。70年代中頃から本格的に写真を撮り始め、著名人の肖像写真などで評価を高めます。その一方で、ゲイであることを公言し、SM写真など過激な作品も制作。センセーションを巻き起こしながらも世界中の美術館で展示され、一流アーティストとしての地位を確立します。名声を得てこれからという矢先にAIDSを発症、1989年に42歳の若さで亡くなりました。
ドキドキの写真は……?

本展の会場は、3つにわけられています。最初の2つは白い壁に覆われ、3つ目の展示室は黒一色。部屋を進むごとに挑発的な作品が増えていきます。

こちらは、1つ目のWhite Gallery 1に展示されている写真。白と黒のコントラストに目を奪われます。

続いてWhite Gallery 2で見られるのは、静物やヌードなど。おヘソがアップになっている写真もありましたが、それほど過激ではありません。

そして、最後の展示室、ドキドキの黒い部屋Black Galleryへ。ここでは、花や男性性器にクローズアップした刺激的な写真などが並んでいます。

この部屋にある作品《Orchid》は、ランの花をアップで撮ったものですが、会場で見たとき、これも性器かと錯覚するほどの艶めかしさがありました。実はこの写真の前に、巨大な男性性器が写った作品を見ていたので、花も性器に思えたのかもしれません。
メイプルソープは「花を撮るのは、ペニスを撮るのとそう変わらないんだ」(新潮社『メイプルソープ』191頁より)と語っていたそうです。彼の作品を見ると、花も性器も、その形だけでなく細かい筋やシミのようなものまで写しだされ、今にもピクピクと動き出しそうな生々しさがあります。正直なところ、性器の写真よりも花のほうが刺激が強いと感じました。
ピーター・マリーノ氏、登場!

プレスプレビューでは、写真展のためにアメリカから来日されたばかりのピーター・マリーノ氏が登場。本展の企画、構成にも携わったマリーノ氏は、世界中にあるシャネルや高級ブランドの建築を手がけている高名な建築家。アートコレクターとして、メイプルソープの作品も150点ほど所有しているそうです。
この写真展について、質疑応答が行われましたので、その一部を抜粋してご紹介します。
「メイプルソープ作品の魅力は?」
マリーノ氏 優れた芸術作品について、第一に考えなければいけないのは “真実がそのなかにあるのかどうか” ということ。(メイプルソープの作品には)確実にそれがあると思います。
みなさん、ぜひ注意深く作品を見てください。そして、この作品が50年前のものだということを忘れずに見ていただきたいです。大変モダンで、まるで昨日撮ったといってもいいような作品だと思います。
「マリーノさんにとっての偉大なアーティストとは?」
マリーノ氏 eternal truth(永遠の真実)、great beauty(すばらしい美)
「まさにメイプルソープの作品も、その要素が含まれていますね?」
マリーノ氏 その通りです。メイプルソープの作品は、時代とともにさらに評価が高まっています。アーティストによっては一時的に人気が出ても、20年、30年後には忘れられてしまう方もいますが、メイプルソープの作品や彼自身はまるでひとつの大きなボールのよう。時代とともに速くなり、なおかつそのボールは大きくなっています。世界が、彼のすばらしさに今また気づいていると思います。
「マリーノさんがコレクションをはじめたときと今とでは、評価が変わっていますか?」
マリーノ氏 まさにそうで、私にとって作品の価格が上がっているのは好ましくないのです。さらに作品を集めたいのに、痛手をこうむっています。今だったら、このようなコレクションは誰もできなかったのではないでしょうか。
「最後に、本展の見どころを教えてください」
マリーノ氏 ヴィジュアルやアーティスティックなものを楽しんでください。メイプルソープが、いかに主題になるものを白と黒のコントラストをうまく活用して表現したか、見てほしいです。白と黒のわけ方や、どのような構成になっているのかを感じ、そして作品に近づいて、画像の画素数や表現をきちんと見ていただけたらと思います。
展示風景にも注目!

マリーノさんの話をうかがってから改めて会場を見ると、白と黒の使い分けを強く意識した展示になっていることに気づきます。
本展で見られる作品は、どれもモノクロばかり。マリーノさんは、カラーのメイプルソープ作品に興味はなく、モノクロばかりを収集されているとのことで、展示室も白と黒だけで構成されています。
メイプルソープがその生涯で撮った写真のなかには、ハードコアな作品もあり、苦手な人もいるかもしれません。ですが、この展覧会ではコレクターのセンスに合った美しい写真が集められています。そんな作品群を、マリーノ氏本人が手がけたビルと空間で見られるのですから、かなり贅沢な写真展です。ぜひぜひこのチャンスをお見逃しなく!
Information
会期:~4月9日(日) ※会期中無休
時間:12:00 ~ 20:00
会場:シャネル・ネクサス・ホール
入場無料