ギャスパー・ウリエル「100回テイクを重ねても平気」 32歳の素顔!

2017.2.9
デビュー以来、繊細な演技はもちろん、そのルックスで世界中の女子を虜にしてきたギャスパー・ウリエル。32歳になり、昨年は1児の父になったという今、最新作のこと、そしてプライベートも語ります。
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魅力的な俳優はたくさんいるけれど、正統派の美形はそう多くないフランス映画界。そのなかにあって少年時代から日本でも美形として注目を集めてきたのが、ギャスパー・ウリエルさん。カンヌ国際映画祭に出品された『かげろう』(’03年)ではエマニュエル・べアールを相手に年上女性への複雑な感情を表現して高い評価を受け、『ハンニバル・ライジング』(’07年)では若き日のハンニバル・レクターを演じてハリウッド映画にも主演。そして、昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた、カナダの若き天才グザヴィエ・ドランが監督する『たかが世界の終わり』では、主人公の人気作家ルイを演じる。原作はジャン=リュック・ラガルスの戯曲で、「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために12年ぶりに帰郷したルイと、家族のぎこちない一日が描かれていく。かつての美少年も、いまや32歳。俳優としての真面目すぎる顔とともに見せてくれたもう一つの顔にも、誠実さが滲み出ていました。

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――家族の愛と葛藤が濃密に描かれていますが、もう既にこの世にいないルイが家族に会いに来たかのようにも思えるポエティックな部分もありますよね。

ギャスパー:僕も一瞬そう思った。天国への旅が人生の最後の旅だとしたら、その直前に家族に会いに来たという解釈もできますね。

――その家族を演じるのが、ナタリー・バイ、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤールという豪華な顔ぶれなのもたまりません。面白いのは、家族はものすごく台詞が多いのに、ルイにはほとんど台詞がないこと。そんな難しい役を演じるうえで意識したのはなんですか。

ギャスパー:ルイが家族とどんな子供時代や思春期を過ごしたのかをちゃんとイメージしておくことですね。ほかの登場人物の台詞のひとつひとつが、ルイにとって重みがあるし、意味がある。家族がそれぞれ話すことについて、ルイがどんな感情を揺り動かされるのかは準備段階でかなり掘り下げました。だから現場の思いつきで演じるんじゃなくて、すべてよく考えたうえで演じてる。でも、そのイメージって実は誰とも共有していないんです。なぜなら、ルイは12年間も家を離れていて、家族にとって部外者のような存在だから。本当は、グザヴィエ(監督)がセッティングしてくれた読み合わせがあったんだけど、スケジュールの関係で僕だけ参加できなかったんだ。でも、そこで内容について話し合わないほうが、ルイを演じるにはむしろいいということになったんだよ。だから僕の役の内面は監督にもミステリアスだったと思うよ。

――そうして作りあげたルイに、監督も大満足なわけですよね。

ギャスパー:もちろん! ここまでシンプルに物事が進んだ男性俳優は初めてだと今回組めたことを喜んでくれた。これまでの作品では女優との関係はうまくいくのに、男性の場合はあまりうまくいかなくて複雑だったと打ち明けてくれたよ。

――うまくいった理由はわかります。ルイを演じるあなたを見ていて、ドラン監督は自分の分身を演じるのにふさわしい俳優を見つけたのだと興奮したんですよ。

ギャスパー:そういうことを言われると、彼は動揺するんじゃないかな(笑)。ルイがグザヴィエの分身なのは、僕からしても明らかだけど。主人公が男か女かにかかわらず、監督は無意識のうちに自分を投影するものだからね。撮影中にグザヴィエを観察していて、ルイには彼の一部が入ってると感じたんだ。そこからインスパイアされたものを意識しながら演じるのは楽しかった。そして、ルイには、グザヴィエ以上に原作者のラガルス自身の要素が入っているから、ルイはラガルスとグザヴィエとの三角関係(笑)で作られた人物だね。

――ドラン監督にとっては自分の分身を演じるのが、美しい男性であることが絶対に必要だったのだとも思いますよ。たとえ、これも無意識だったとしても。

ギャスパー:確かにどの作品も、役者は結構イケメンだよね。グザヴィエ・ドランという監督が、俳優の美しさを重視してるのは間違いないと思う。俳優にかぎらず、インテリアにしても、衣装にしても、映像的な美しさには彼ならではのセンスがあるよね。あのセンスは独特だ。

――音楽のセンスも素晴らしいですよね。今回もオープニングで流れるカミーユの「Home is where it hurts」がルイの胸のうちを物語っていて、一気に作品世界に引き込まれます。彼自身が俳優でもあるからか、監督している時も役者と一緒に演技するそうですけど、撮影現場で驚かされたことはありますか。
 
ギャスパー:
いや、もう、びっくりしましたよ。通常、監督はテイクを撮り終わるのを待って指示を出すけれど、彼は撮ってる最中でもおかまいなしにどんどん介入してくる。慣れてしまえば問題はないけど、最初のうちは不安定になりました(笑)。撮影初日に一番大事なシーンを撮ったんだ。家に到着するシーンとラストのみんなで食事するシーン。かなり恐怖を感じたけど、面白い方法論だよね。そこでうまくいきさえすれば、あとは息をつめないでラクに仕事ができる。

――あなたは大変なことは後回しにするタイプですか? それとも最初に片付ける?

ギャスパー:後回しにするほうではないね。大変なことは早く解決してしまうほうが、あとがラク。ただ、仕事についてはグザヴィエのようにスピーディに進めたいタイプではないですね。彼はすごく急いで撮るけど、僕は100回テイクを重ねても平気なんだよ。諦めないで繰り返しやれば、それだけ完璧に近づくと思っているから。でも、撮影が速い監督との仕事は快適だよ。そうじゃなかったら、僕自身がすごく時間をロスしてしまうタイプだから。

――100回でも平気…。

ギャスパー:俳優はテイクに全身全霊で臨んで自分自身を投げ出して演じるから、終わった瞬間はそれがいいテイクだったかどうかは判断がつかないんだ。それなのに監督から「OK」と言われると、「もうこれで終わり? もっとうまくできたかもしれないのに」というフラストレーションがかなり残る。それは子供の頃から変わらないな。この作品でも「グザヴィエ、もう1回やらせてくれないか」と提案したこともあったよ。でも、「心配いらない」って却下された(笑)。

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1984年11月25日生まれ。フランス出身。俳優。2001年、『ジェヴォーダンの獣』で映画デビューし、『ロング・エンゲージメント』(’04年)でセザール賞有望若手男優賞。『SAINT LAURENT/サンローラン』(’14年)ではイヴ・サンローランを演じた。シャネルの香水「BLUE DE CHANEL」のイメージモデルをつとめたことも。

映画『たかが世界の終わり』人気作家のルイは自分の死が近いことを告げるため、12年ぶりに故郷の家族の元へ戻ってくる。しかし、言い出せないままに時間は流れて…。兄役にヴァンサン・カッセル、妹役にレア・セドゥ、兄嫁役にマリオン・コティヤールら、フランスのスターがグザヴィエ・ドランのもとに集結。2月11日から新宿武蔵館ほか全国ロードショー。

※『anan』2017年2月15日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・杉谷伸子

(by anan編集部)


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