あなたの腸に足りないのはどんな菌? 元気で若々しい人の腸に多い“5大長寿菌”とは

2024.4.6
腸活を始めたいけれど、アレもコレもやるのは大変そう。そんな人におすすめ、菌を意識して食材をチョイスするだけの“ゆる育菌”を紹介。菌が喜ぶものを選ぶようにするだけで善玉菌が増え、腸の調子が整うというメソッドとそのメリットを、腸の専門家に教えてもらいました。

もっと知りたい5大長寿菌を深掘り! “ゆる育菌”のための基礎知識

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腸活

医学が発展するにつれ、食べ物を消化・吸収するだけと考えられてきた腸が、実は免疫や肥満、脳の働きなど全身のコンディションに関わっていることが判明。それに伴い、2010年代後半から登場した言葉。腸を活性化して全身の健康と美容に役立てるメソッドを総称したもので、その内容は、腸の働きを司るホルモンに関するもの、腸の中に存在する腸内細菌を整えるもの、腸を動かすための筋肉に着目したものなど多岐にわたる。今回紹介する“ゆる育菌”は、なかでも腸内細菌に着目した腸活のうちのひとつ。これから腸活を始める人、腸活法がたくさんありすぎて何をすればよいか迷っている人は、食べるものを工夫するだけで取り入れやすい“ゆる育菌”から始めるのがおすすめ。

腸内細菌

人間の大腸には300~1000種類、約1000兆個もの細菌=腸内細菌が存在し、腸内細菌の種類が多い人ほど健康だということが分かっている。腸内細菌は大腸に届いた食べ物を分解し、代謝物を産生。このプロセスを“代謝”というが、代謝物が人体に役立つ場合は“発酵”、悪い影響を与える場合は“腐敗”と呼ぶ。腸内細菌は“発酵”を行う善玉菌、“腐敗”を行う悪玉菌、両者のうち優勢なほうに味方する日和見菌に分類され、3者のバランスが大切。理想のバランスは、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7とされている。また、腸内細菌は“住所”も重要。たとえ善玉菌でも、本来いるべきでない場所、たとえば小腸などに増えすぎると悪玉の働きをするという。

プレバイオティクス

腸内細菌、特に善玉菌のエサになる食品のこと。胃や小腸で消化されず大腸まで届くもので、食物繊維の一部やオリゴ糖が挙げられる。善玉菌はプレバイオティクスをエサにして健康に役立つ代謝物を作り、増殖する。ちなみに胃や小腸で消化されず大腸まで届く性質のことを、“難消化性”という。

プロバイオティクス

善玉菌を増やして悪玉菌を減らす菌のこと。ヨーグルトや味噌、納豆など発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌が有名。プロバイオティクスは生きた菌のことを指す。以前は菌が生きたまま腸に届かないと無意味と考えられていたが、最近の研究では、死んだ細菌の細胞壁やDNAだけでも、善玉菌に有利に働くことが分かっている。

5大長寿菌

元気で若々しい人の腸に多いという、5大長寿菌を解説。健康や美容にどう役立つのか、不足するとどんな影響があるのかも紹介。自分の腸に足りないのはどんな菌なのか、考える目安にしてみて。

酪酸菌
【特徴】筋肉量アップ、感染症予防、ストレス耐性アップ

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5大長寿菌の中でも一番注目されている菌。食物繊維をエサに発酵して、短鎖脂肪酸を作る。短鎖脂肪酸には、カラダに役立つ働きがたくさん! がん細胞の攻撃力を抑える、ウイルス感染への抵抗力を高めるなど免疫を助けたり、セロトニンの合成を促してストレス緩和や睡眠の質向上に役立ったり、筋肉の分解を抑制したり。また、短鎖脂肪酸は腸そのものを助けるというメリットも。大腸の中を、善玉菌が好んで悪玉菌が生きづらい環境にする、腸のバリア機能をサポートするといった作用が報告されている。風邪をひきやすい、花粉症がひどい、歩く速度が遅い人は、酪酸菌が少ない可能性あり。

アッカーマンシア・ムシニフィラ
【特徴】免疫力アップ、肥満予防、血糖値改善、アンチエイジング

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酪酸菌に続き、次世代のご長寿菌として有名になりつつある菌。腸の壁を守る粘膜層を厚くすることでバリア機能を高めたり、肥満や高血糖、動脈硬化を防ぐ働きが期待されている。また、アッカーマンシア・ムシニフィラで、アンチエイジングも実現できるのではという期待が高まっているそう。そのカギとなるのがNADという補酵素。NADは傷ついたDNAを修復し、老化を抑制する遺伝子を活性化する働きを持つ。アッカーマンシア・ムシニフィラは、このNADの素になるニコチンアミドを作り出すという。アッカーマンシア・ムシニフィラが少ないと、肥満や糖尿病になりやすい。

フェカリバクテリウム・プラウスニッツィ
【特徴】代謝アップ、冷え改善、肌荒れ予防、便秘改善

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健康な人の大腸に多く棲んでいて、全腸内細菌の約5%を占めるといわれる。特に、健康で痩せ型の人に多いとか。近年では、様々な病気や肌老化の原因に、わずかな程度で長続きし、ジワジワ全身に広がる慢性炎症が隠れているという説が有力。フェカリバクテリウム・プラウスニッツィは、そんな炎症を抑える酪酸を生み出すため、“抗炎症菌”という別名も持つ。また、代謝を高める作用がある点も、健康に嬉しいポイント。年齢とともに代謝が衰えると、様々な不調が現れる。特に肌荒れや冷え症、低血圧、便秘、低体温、疲れやすさなどを感じている人は、この菌が少ないのかもしれない。

乳酸菌
【特徴】ドライアイ予防、虫歯予防、骨粗鬆症予防、美肌効果

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ヨーグルトや漬物などに入っていて、なじみの深い腸内細菌。乳酸菌に健康寿命効果がある、という説は100年以上前から唱えられていて、最近では、マウスに乳酸菌を与えたら実際に寿命が延びたという研究結果も発表されている。乳酸菌の一種であるプラズマ乳酸菌にはアンチエイジング効果があること、同じく乳酸菌の一種であるロイテリ菌が天然の抗生物質を作り出し、病気の原因菌にだけ抗菌力を発揮することが分かっている。乳酸菌はほかにも肌や目の保湿に関わっていて、ドライアイの人、乾燥肌の人は乳酸菌不足かも。虫歯が多い、骨粗鬆症の気がある人も、乳酸菌不足に注意。

ビフィズス菌
【特徴】便通改善、アンチエイジング、筋肉量アップ、認知症予防

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日本人の腸にいる善玉菌の大半を占める菌で、糖を分解して乳酸や酢酸を作り、悪玉菌が増えるのを抑える、大腸の働きを活発にして便通をよくする、免疫を改善するなどの働きを持つ。ほかにも、腸の老化を防ぐ、高齢者の認知機能を改善する、という作用も。また近頃は、ビフィズス菌の一種であるラクティス菌の作る、ポリアミンが脚光を浴びている。ポリアミンは細胞のお掃除機能“オートファジー”を促進してアンチエイジングに役立つほか、筋力を高める効果も期待されている。ビフィズス菌が少ないと、特に理由がないのに疲れやすい、老けて見られがち、といった残念現象が起こることも。

江田 証さん 医学博士。江田クリニック院長。腸をはじめとする消化器病に関して、数々の論文を執筆。新著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)に腸活の最前線を記す。

※『anan』2024年4月10日号より。イラスト・サヲリブラウン 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)