冬の室内、適切な“湿度”は何%? 知っておきたい、環境と湿度の基本を解説

2023.12.4
暑さ、寒さだけでなく、健康に大きな影響を与えるファクターだと認識されつつある、湿度。適正な湿度の中で暮らすことは、肌の潤いが保てたり、風邪が予防できたりと、いいことずくめ。ヘルシーに心地よく冬を乗り切るために、湿度のこと、ちょっとお勉強してみませんか?

知っているようで、実は知らない“湿度”。

“冬になると空気が乾燥する”というのは、ほとんどの人が知っていることで、また“乾燥すると風邪をひきやすくなる”、あるいは“肌がカサカサになる”というのも、周知の事実。

「でも、なぜ冬は乾燥するのか、また湿度が低いと体にどんな問題が起こるのか。その仕組みや理由を理解できる人は、意外と少ないのでは」

と言うのは、大学で熱環境について研究をしている齊藤雅也さん。

「中学校の理科の授業で湿度について勉強はするものの、私たちの体や住環境と湿度の関係性については学ばないので、生活の中での湿度の大切さはあまり理解されていません」(齊藤さん)

また医師の日比野佐和子先生は、湿度は健康をキープするための重要なファクターである、と言います。

「部屋が乾燥すると、健康面だけでなく、美容の面でも体に悪い影響があります。逆に言えば、湿度を意識して生活することで、体のトラブルは回避もできる。冬を健康に乗り切るために、湿度についての知識をぜひ身につけてほしいです」(日比野さん)

改めておさらいしよう。湿度と私たちのいい関係。

知ってるようで、実はあまり詳しく学んでいない、“湿度”。気温と湿度の関係、そして体内に存在する水分と湿度の関係、この2つを理解すると、解像度がぐっと上がります。

環境と湿度

湿度とは、空気中に含まれる水蒸気の割合のこと。

私たちを取り囲む空気の中には、酸素や二酸化炭素などに加え、水も〈水蒸気〉という目に見えない形で存在しています。水蒸気が多いと“湿っぽいな?”、逆に少ないと“乾燥しているな?”と感じる。それが湿度の違。

「水は0°Cで氷になり、100°Cで水蒸気になると習ったと思いますが、でも水は100°Cにならなくても、常温でも蒸発します。その蒸発の速度が気温によって異なり、例えば道路に水たまりがある場合、気温が高い晴れた日はあっという間になくなりますが、曇った日は水がしばらく残る。水の蒸発速度と気温の関係は、水たまりの様子を考えるとわかりやすい」(齊藤さん)

水蒸気になった水分は、気温が変わることで雨や雪になったり、冬の室内であれば窓面で結露として現れたりし、目に見える水に戻ります。

「水蒸気と水を行ったり来たりしながら、水は私たちや地球を潤してくれる。その存在と役割について知れば知るほど、水がある地球は奇跡的なものだと思わせられます」(齊藤さん)

関係性(1)

空気の温度によって、存在できる水蒸気の量は変化する。

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「気温が高いほど空気中に水分が存在できるスペースは広く、気温が低いほど狭い。ですから気温が高い夏よりも、気温が低い冬のほうが、水分が存在できるスペース自体が小さい。冬の外気の湿度が70~80%なのに、それが室内に入ると30~40%に下がってしまうのは、それが理由。なので、いくら換気をしても湿度は上がりません」(齊藤さん)

関係性(2)

心地よいか、よくないかは、実は湿度の高さ次第!

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「人間常に熱を生産し熱を周囲の空気に捨てています。発汗を伴う蒸発はその捨て方の一つですが、夏、湿度80%以上では、空気中に水蒸気を新たに捨てるスペースが十分にないため、汗がなかなか蒸発せず熱が下がらないため、ますます暑苦しく不快に。一方、同じ気温でも湿度が40~50%程度ならば、汗をかいてもすぐに蒸発するので体に熱がこもらず、気持ちよく過ごせる。高温のサウナを楽しめる理由は、このメカニズムがあるからです」(齊藤さん)

関係性(3)

冬場は気温が低く、湿気が少ない。エアコンをつけるとますます低く。

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「エアコンによって室温が上昇し、「関係性(1)」で説明したように、〈空気中に存在できる水分量〉が増加します。しかし、冬は気温が低いのでもともと空気中に水蒸気が少ない。室温の上昇で椅子の数(水分が存在できる空間)は増えたが、座る人(水分)の数は変化しないので空席が増える。つまり空気中に占める水蒸気の割合は減少し、湿度が下がります。適正な湿度を保つためには座る人=水分を増やす必要がある。冬に“加湿”が必要な理由はそれです」(齊藤さん)

関係性(4)

冬の室内、目指すのは室温22~23°C、湿度40%前後!

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「冬場は室温を上げたくなりますが、適切な湿度を保てれば心地よく感じられるので、極端に高くなくても大丈夫。室温は22~23°Cくらいで、湿度は40%前後になれば十分。特に2003年以降に建築された住宅は、法律で〈24時間換気〉が義務付けられ、常に低温の新鮮な外気が室内に入るので、加湿しても40%前後までしか上がりません」(齊藤さん)

齊藤雅也さん 札幌市立大学デザイン学部教授(建築環境学)。住まいの熱環境と快適性に関する研究をしており、快適な熱環境を創る「住みこなし」の啓発活動も。札幌市円山動物園、甲府市遊亀公園附属動物園で動物の熱環境を改善し、繁殖に繋げるプロジェクトにも関わっている。

日比野佐和子さん 内科医、皮膚科医、眼科医、日本抗加齢医学会専門医。Y’sサイエンスクリニック広尾の統括院長。アンチエイジング医療の第一人者として、テレビや雑誌など、メディアへの登場も多数。著書に『医者が教えるすごい美肌循環』(アンノーンブックス)など。

※『anan』2023年12月6日号より。イラスト・タソカレー

(by anan編集部)