副大臣・政務官に“女性ゼロ”の現状…世界から後れをとる、日本のジェンダー格差

2023.11.3
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「岸田内閣 副大臣・政務官女性ゼロ」です。

地域の女性議員を増やすことから。意識の変革を望む。

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9月13日に第2次岸田第2次改造内閣が発足されました。副大臣26名、政務官28名全てが男性議員。副大臣・政務官制度が導入された2001年から、女性がゼロだったのは初めてのことです。今回の内閣改造では5人の女性閣僚が生まれ、過去最多に。しかし、首相含め20人の大臣のうちの5人ですから、日本のジェンダーギャップは、ますます世界から後れをとるということが明らかになりました。

政治は、多様な背景を持つ当事者たちが関わることが大切だと思います。暮らし方や働き方、人生経験など、バックグラウンドが多様であれば、さまざまな政策を実現可能にします。こども家庭庁を作っていながら、子ども中心の政策がなかなか見えてこないのは、政治の中枢が多様ではなく、当事者たちの声が届いていないせいでしょう。

今回の人事は自民党が抱える構造的な問題もありますが、実は自民党内部からも「女性候補者が足りない」という声はよく聞かれます。党内の女性局と青年局の討論会では、地域の女性候補者の掘り起こし支援に力を入れてほしいという要望が上がっていました。

地域が変わらないと中央も変わっていきません。地方議会は男性中心で、古くからの地元の名士に支えられ、地盤のある候補者に代々引き継がれていくケースが少なくありません。令和3年12月末現在、地方議会の女性の割合は特別区議会で30.7%、政令指定都市の市議会が20.7%、市議会全体では16.8%、都道府県議会で11.8%、町村議会で11.7%でした。

かつて、熊本県議会で、乳児を連れて議会に入ろうとしたら止められバッシングを受けた女性議員がいました。一方、オーストラリア連邦議会では、議場で授乳することも認められています。声を上げて自分たちの権利を勝ち取り、社会を変えていくパワーが諸外国にはありますが、日本はどうしても「仕方がない」と呑み込んでしまうことが多い。ジェンダーギャップの問題は日本経済の衰退や政治の硬直化、政策の非多様性などを生んでいます。今年の統一地方選挙の女性候補者は前回よりも500人増えました。この変化の兆しを伸ばしていけたらと思います。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2023年11月8日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)