中元日芽香「生理前になると倦怠感や食欲が増し…」 女性ホルモンとPMSの関係

2022.7.5
ananフェムケア連載「Femcare File」。今回のテーマは「女性ホルモンとPMS」。生理前に起きるイライラや倦怠感の原因について、産婦人科医の宋美玄さんとフェムケア委員会の中元日芽香さんと考えます。

女性ホルモンとPMS

Entame

女性ホルモン分泌の変動の波が、心身の様々な不調の原因になります。

体内で分泌される女性ホルモンは、エストロゲンとプロゲステロンの2つ。その働きについて産婦人科医の宋美玄さんが解説する。

「エストロゲンは体を守り、女性らしさをつくるホルモン。コラーゲンを生成して肌のハリを保ち、髪をツヤツヤにするなどの美容面だけでなく、情緒を安定させ、骨や血管を守ったり、生殖器官を育て、女性らしい丸みのある体型をつくる働きも担っています。一方、プロゲステロンは妊娠の準備や維持をするためのホルモンで、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くしたり、基礎体温を上げます。また、栄養や水分を体に蓄えようとするため、食欲が増したり、むくみやすくなることも」

このように聞くと、エストロゲンは良いホルモンで、プロゲステロンは悪いホルモンのように思ってしまいがちなのだが…。

「どちらが良い悪いといった単純なものでもないんですよ。エストロゲンは血栓やがんの原因になることもあるので、たくさん分泌されれば良いというわけでもなく、あくまでも両方が過不足なく分泌されることが大切なんです」

この2つのホルモンの分泌量は、一度の生理周期の間に常に変動しているという。

「生理期間が終わると、エストロゲンの分泌量が急激に増えます。生理が終わってから排卵までの1週間は一番むくみが少なく体調が良い、いわば“キラキラ期”。一方で、排卵が終わると、今度はプロゲステロンの分泌量が急激に増えます。はっきりとわかっていない部分も多いのですが、このようなホルモンの急激な変動によって、様々な症状が現れると考えられているんです」

それが、生理前に精神的、身体的な不快症状が起きる「PMS(月経前症候群)」。イライラや気分の落ち込み、倦怠感、肌荒れ、下腹部の痛み、頭痛など症状は人によって異なり、仕事を休まざるを得ないなど日常生活に支障をきたす場合もあると宋さんは言う。

「PMSの中でも、特に気分の落ち込みや不安などの精神的な症状が強いものをPMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。ただ、PMDDの場合は、月経前だけでなく、常にメンタルの不調があり、生理前にそれが悪化するというケースが多い。その場合、ホルモン面のアプローチだけでなく、精神科や心療内科に相談しましょう」

【エストロゲン】

  • 肌にハリが出て、髪もツヤツヤに
  • 自律神経や脳の働きを良くしてくれる
  • 内臓脂肪がつきにくくなる

【プロゲステロン】

  • 体に水分を溜め込み、むくみやすく
  • 食欲が旺盛になり、代謝が鈍感に
  • 基礎体温が上がる

ホルモンバランスは約1か月周期で変動。

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PMS症状の多くは、排卵後から現れる。腰痛や頭痛、胸の張りなど体の症状のほか、イライラや落ち込み、眠気が取れないなどの精神的症状を訴える人も。

生理前の不調を当たり前と思わず向き合うことから。

Entame

中元:私は、数年前、倦怠感や気分の落ち込みがあり、精神科に通院していた時期があるんですが、その原因がホルモンバランスの乱れなのか、自律神経の働きなのか、はっきりとはわからない部分がありました。ただ、生理前になると倦怠感が強くなり、食欲もすごく増えてしまって…。もしかしたらPMSだったのかもと、ふり返ってみると今は思います。

宋:わかりにくいですよね。体は全部つながっているので、自律神経がきちんと働かないと、ホルモンの分泌も影響を受けることも。その頃は、生理不順などの悩みはあったんですか?

中元:私は幸い、生理は毎月来ていたんですが、ダイエットによって止まってしまったといった話は、周囲の友達からもよく聞きました。

宋:ダイエットで急激に体重が減ったり、強いストレス環境に置かれると、脳が「生命を維持しなければ」と考えて、ホルモンの分泌を抑えようとするんです。それで生理が止まったり、排卵が起きなくなったりする。だから痩せすぎはよくないんですよ。女性ホルモンのうち約6割は卵巣から分泌されるんですが、残り4割は体脂肪から分泌されます。“脂肪は敵”って思ってる人が多いんですが、脂肪は、ある意味“財産”だと考えてほしいですね。

中元:知りませんでした。若い時に生理が止まったら、その後の妊娠に影響はあるんですか?

宋:一時的に生理が止まったからといって、将来妊娠できなくなるわけではありません。生活の見直しや治療を受けることにより、その後妊娠できたという例もたくさんあります。でも卵巣機能を整えるという点でも、体重の大幅な増減は好ましくないんです。

中元:女性ホルモンの分泌量は年齢によって変わるのでしょうか?

宋:脳の指令によって卵巣から女性ホルモンが分泌されるようになるのは、思春期の頃から。分泌量は20代でピークに達し、50歳前後で閉経を迎えると卵巣から分泌されるホルモンが急激に減ります。

中元:そうなると、心身にも様々な影響が出てきそうですね。

宋:その通り! 女性の体の組織は、ホルモン分泌の減少によって大きく変わります。だから年齢を重ねると、男性に比べて骨折や貧血などのリスクが高くなるんです。

中元:将来のことも心配ではありますが、私と同世代の女性の生活にとってホルモン分泌の影響はとても大きいですよね。ひと月のうち、1週間は生理ですし、排卵後の2週間にPMSによる症状がある人は、快適に過ごせる期間が1週間前後ということになると改めて考えてみると…。

宋:昔は初潮が来るのが遅く、若くして子供をたくさん産み、寿命が短くて閉経を迎える前に亡くなるケースも多かったので、人生で生理が50回程度だったといわれています。ところが今は、小学生で初潮が来る子も多く、さらに平均出産年齢が上がり、女性1人当たりの出生数も減っている。そのため、昔に比べて生理の回数が格段に多いんです。

中元:そう考えると、生理にまつわる不調を見逃さず、向き合うことって大切ですね。でも、“どうせこんなものだから”とか“生理前だけだから”と思って、我慢している人も多いなと感じます。

宋:そうなんですよ。でも、“つらい=当たり前”じゃない。適切なケアによって症状を緩和することはできます。

anan総研150名にアンケート。

Q. 生理前にホルモンバランスの乱れを感じたことがありますか?
A. ある…82%

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Q. 具体的に、どんな対策をとっていますか?(複数回答)
A. 休養…43%、市販の薬をのむ…36%、何もしない…29%、体を温める…25%、婦人科へ行く…14%

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生理前に不調を感じたことがあるという女性は8割以上も…。それにもかかわらず「婦人科へ行く」と答えた人はごくわずか。自己流の解決法で“過ぎるのを待つ”という人がほとんどでした。

そん・みひょん(写真左) 産婦人科医。丸の内の森レディースクリニック院長。『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』など著書多数。2児の母。

なかもと・ひめか(写真右) 1996年4月13日生まれ、広島県出身。乃木坂46メンバーとしてデビュー。グループ卒業後の現在は、心理カウンセラーとして活動している。
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※『anan』2022年7月6日号より。写真・水野昭子 スタイリスト・岡安幸代(中元さん) ヘア&メイク・川嵜 瞳(中元さん) イラスト・REDFISH 取材、文・音部美穂

(by anan編集部)