SUMIRE「いつまでも遊び心のある大人になりたい」出演映画、謎めいたプライベート、心の内まで
「大好きな洋服で表現がしたかった」。物心ついた時からそう思うようになったというSUMIREさん。10代からモデルとしてファッション誌やCMなどで活躍し、唯一無二の個性や表現力で同世代の女性たちをはじめ、多くの人たちの目を釘付けに! そんなSUMIREさんは現在、役者としても活躍中で、今年は3本の映画に出演。最新作『ボクたちはみんな大人になれなかった』では、主人公の佐藤(森山未來)の人生に強い存在感を残した女性・スーを演じている。
―初めに〝スー〞という役名を見て、本名で? と錯覚しちゃいました(笑)。確か、お母さんのCharaさんからも「すーちゃん」と呼ばれていますよね。
そうなんですよ、母からもだし、友達にも「すー」って呼ばれていて、一緒なんです(笑)。そして、原作も台本も読ませていただいたうえでも、スーは私自身と似ているキャラクターだと思いました。たとえば、オンオフがはっきりしているところや、好きなものにはすごく愛情を注ぎ、あまり興味のないものには〝プイ!〞みたいなところも(笑)。誰かと一緒にいる時の空気感もそう。スーは友達といる時はすごく華やかに楽しむ一方で、仕事になるとキリッとしているんですが、本当の私も、こう見えて内面は違うんです。
―こう見えて…というのは?
見た目では「何を考えているかわからない」とか、自分で言うのもなんですが、ミステリアスに思われるところがあって。でも私も友達と大声で笑ったりもするし(笑)。だから心情的な部分でも、スーと近しいものは感じていました。ただ、私は心も体も健康でいつもハッピーな気持ちでいるんですが、スーは心の深いところに闇を抱える人間なんじゃないかなって思っていて、そこだけは理解が難しくて。役作りとしては、彼女の過去を含めた背景を探りながら、自分と共有できるような部分はないのか、シミュレーションみたいなものをしました。
―主人公の46歳の佐藤が、25年間を振り返りながら、過去に出会った女性たちを通して夢や葛藤に向き合っていくという作品ですが、完成作をご覧になって、いかがでしたか?
渋谷のシーンは、学生時代を思い出しましたね。当時はたまに109とかラフォーレ原宿、竹下通りなど、渋谷や原宿のお店に買い物に行っていたし、改めてこうやって渋谷の街の風景を見ると、わ〜ってテンションが上がるというか。今は新しい建物もたくさんできていますが、全然変わらない街の風景もあったりするので。
―〝エモい〞というか。
そう、最近の言葉でいうと〝エモい〞ってやつです!(笑) それから、佐藤がデートに行きたいのに仕事でなかなか出られない時に友達が「あとは俺がやっておくから行ってこいよ」みたいなシーンも「わ、こいつめっちゃいいやつじゃん」って思ったり。昔から、何となくそういうキャラを見つけるのも好きなんです。映画に描かれている2000年頃、私はまだ子供でしたが当時のファッションはすごく好きで、学生時代は『Zipper』や『CUTiE』などのファッション誌もよく読んでいました。だから、かおりのファッションからも大好きなアメカジテイストを感じたりもして。
―役作りで印象的だったことはありますか?
スーが中国語を話すシーンがあるんですが、動画で見た中国語を意識して口を大きく開けてはっきりセリフを言ったら、監督から「うまいね」って褒められて。また新しい自分を発見しました。
―ところで、役者の道に進みたいと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか。
この仕事の始まりはモデルからだったんですが、モデルってほとんどが紙面でしか見られず、ポーズを決めた静止した写真。でも演技の仕事をいただくようになって初めて、動いて話して表現をするのって面白いなって思ったんです。もっと自分をうまく表現したいと思ったし、こういう私もいるんだよっていうのをみんなに知ってもらいたくなった。私が出演した作品を観てもらえたり、たとえば「あの映画よかったよ」とか言われたらやりがいにもなるし。モデルの仕事はベースで、リラックスできるものだとしたら、役者の仕事はいろんな人物になりきれて、引き出しをもっと増やせるお仕事。もちろん勉強中なんですが、モデルも役者も正解がないからこそ、両方、私の探究心を刺激します。
―お仕事で凹んだりすることはあるんですか?
もちろん過去の作品で、もっとこうできたかなと思うこともあるんですけど、その時にしかできないものだから、凹むよりも次につなげていけたらいいなって。
―潔いですね。
潔いんですかね…? でもプライベートでは結構優柔不断で、一人の時はごはんもすぐに選べるんですが、誰かと行く時は「好きなお店選んで」って言っちゃう。どうでもいいわけじゃないんですが。
―役者って面白い、と思ったきっかけの作品はありますか?
映画『リバーズ・エッジ』は、役者として向き合う気持ちを明確に持てたターニングポイントかな。同世代の役者と何日も一緒に過ごして、絆も生まれて、しっかり学んだ感がありました。
―同世代が多い現場は楽しそうです。弟さんの佐藤緋美さんも、役者としてご活躍されていますね。
まだ、弟が出演している映画『ムーンライト・シャドウ』を私は観ていないんです。早く観に行かなくちゃ。いつも「観に来てよ」とは言わないんですが、会えば「今こういう作品やってるんだ」なんてお互いに話したりはします。姉弟とはいえ、友達感覚なのかな。
―お母さんがミュージシャンで、お父さんが役者だということは多くの人が知るところですが、そういうご家庭に育ったことについて、何か思うことはあるのでしょうか。
小学生ぐらいから周りの友達に「すーちゃんの家族ってすごいね」なんて言われていたので、周りはそういうふうに見ているんだ、とは思っていました。ただ当時の友達とも今も仲良しで、大好きです。それに、私は私だから。
―なるほど。以前、Charaさんをインタビューさせていただいた時に、いろんな人が遊びに来て気がついたらセッションが始まっている、なんておっしゃっていたのが印象的でした。そのセッションに参加したりも?
私は参加しませんでした。家にはよくいろんな人が来ていましたね。でも、母から「音楽やれば?」と言われたことはないんです。
―SUMIREさんは、絵を描いたりデザインするのがお好きでしたね。帽子ブランドの『CA4LA』とコラボしてアパレルのアイテムを出したりもしていますが、’17年のアンアンのインタビューでは、アクセサリーのデザインをしてみたいなんておっしゃっていました。
実は今(私物で)つけているビーズのマスクコードは、材料を浅草や東急ハンズに買いに行って、自分で作りました。友達になかなか好評で「作って」って言われたら作ってプレゼントしたりもするし、時間ができたら水彩画で絵を描いたりもします。おうち時間は結構充実しているんですよ。
―そんな表現力はどんなことから培ってきましたか?
役者に関しては、森山さんや二階堂ふみさんや、共演させていただいた役者さんから学ぶことも多いです。それから、普段から映画などを観て吸収したことを自分なりにうまくアウトプットできたらいいなって思っていて、何か感じたことはすぐにノートや携帯にメモをするようにしています。たとえば、心に引っかかったいい言葉や頭に浮かんだ絵、演技のレッスンも受けているんですが、そこで学んだこと、誰かがおすすめしていた映画のタイトルなんかを何でも。それをふとした瞬間に見返したりします。なかには、なんでこんなことを書いたんだろうって思うのもあるけど(笑)。でも今回の映画もそうですが、昔を振り返るのはいいことだと私は思うんですよね。私もたまに昔の写真を見たりすると、思い出とともにその時の匂いや気温なんかを思い出せたりして、それを体感するのが楽しくて。だから自分自身を振り返るそういう時間は、作ってもいいんじゃない? って。
―そういう感性はとっても魅力的です。これからの人生、どんな目標を持っていますか?
私は今26歳ですが、周りには同じ歳でも結婚している人もいます。ただ、この映画じゃないですけど、私自身は全然大人になった実感がなくて。きっと30代、40代になって、環境や仕事面では変わっていっても気持ちは変わらないんじゃないかな。でもそれがいいんです。好きなことをやって生きていくのって簡単なようで難しいですが、お手本は両親。歳を重ねても好きなことをしていきたいし、いつまでも遊び心のある大人になりたいと思っています。
スミレ 1995年7月4日生まれ、東京都出身。2014年よりファッション誌『装苑』専属モデルを務める。モデルやCMでの活躍を経て’18年に映画『サラバ静寂』でスクリーンデビュー。以降、映画『リバーズ・エッジ』など数々の作品に出演。出演する連続ドラマW『いりびと-異邦人-』が11月28日からWOWOWにて放送。
作家・燃え殻のベストセラー小説を映画化した『ボクたちはみんな大人になれなかった』は11月5日に全国公開&Netflix全世界配信開始。主人公・佐藤(森山未來)と忘れられない恋人・かおり(伊藤沙莉)を軸に、佐藤の青春時代である’90年代から、コロナ禍の現在までを回想する。その時代ごとのカルチャーにも注目。
ドレス¥84,700 トップス¥23,100(共にチカ キサダ) ピアス¥62,000 右手薬指リング¥86,000(共にシャルロット シェネ)以上エドストロームオフィスTEL:03・6427・5901 左手人差し指リング¥110,000 左手薬指リング¥198,000(共にチェリーブラウン TEL:03・3409・9227) ブーツはスタイリスト私物
※『anan』2021年11月3日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・沢田結衣 ヘア&メイク・石邑麻由 インタビュー、文・若山あや
(by anan編集部)