イタリアンなのに“肉じゃが”? 伊大使館御用達の名店見つけた!

2020.11.18
フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『SPORCACCIONE(スポルカチョーネ)』の超すり立てジェノヴェーゼとうちの“肉じゃが”です。
Food

お店に入った瞬間、楽しそうなイタリア語の会話が聞こえてきた。店内にはイタリア人と日本人の2人組。黒板にはわっと勢いよく書かれたメニュー、多分知り合いの子供が描いたピザの絵、それからたくさんのイタリアンワイン。これでおいしい料理にありつけなかったら詐欺でしょ、と言わんばかりのおいしい予感に満ちた小さな箱。それはもう、新店とは思えないほどに。

店主の井上雄一さんは18歳からイタリア料理一筋で、もっと言うと子供の頃からイタリアに絶対的な憧れを抱いていたらしい。22歳で現地で働き、独立直前までイタリア大使館御用達の名店『ラ・ジョコンダ』の料理長を務めた。「僕はイタリア人と一緒に働くのが本当に好きで。彼らの、仕事も何もかも常に楽しむ感じがいいんですよね」と、井上さん。「惹かれるのは郷土料理や家庭料理。気取ってないしやりすぎてない。だけど大事な筋が一本通っているような」。だからこその、超すり立てジェノヴェーゼである。パスタの茹で上がる直前にすり始めるせいで、どうしようもなくバジルや松の実の眩しい香りに襲われる最高の一品。「ジェノヴェーゼで一番伝えたいことって?と考えたら、バジルの香りだったので」。がさっと素手で本質を掴み取り、パッと肩肘張らずに差し出してくれるこの感じ。リラックスで素直な食べることの楽しさが小さい箱の中にぎゅっと詰まっている。

超すり立てジェノヴェーゼのリングイネ¥1,250と、フィレンツェの煮込み料理・ランプレドット、またの名を、うちの“肉じゃが”¥850にイタリアンワイン¥600~。近日中に店の小窓からテイクアウトも開始予定。ご近所さんが羨ましい!

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SPORCACCIONE 東京都世田谷区用賀3-18-4 TEL:03・6873・0255 17:00~24:00 日曜休、水曜不定休

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。

※『anan』2020年11月25日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)