生理中は…独ソ戦の女性兵士の様子を描くノンフィクション漫画

2020.4.18
2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシのジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ。第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した女性兵士や関係者など500人以上に取材し、まとめた『戦争は女の顔をしていない』は、世界的な評価を受けているノンフィクションだ。そのマンガ化に挑み、大きな反響を呼んでいるのが、小梅けいとさん。
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洗濯兵、狙撃兵、書記など、さまざまな任務に就いた女性たちの証言はどれも心を揺さぶられるものばかり。1巻には7話が収録されている。

「たとえば、夫婦で一緒に出征していて、戦死した夫の遺体を国に運んでくれるよう前線の総指揮官を説得する妻の回想や、特別な石鹸で洗濯をしていたら爪が抜けてしまったといった経験など。この本の入り口として印象的で多く関心を集めたエピソードをまず拾いました」

大戦中、女性兵士は存在したが、最前線で戦う役目をも担ったのはソ連だけだそう。生理中も経血処理用品はおろか下着の配給さえ配慮はされず、血はしたたり落ちるまま。戦争は女性たちにあまりに過酷だった。

「従軍して最初のころは、男みたいに振る舞おうと思っていた女性兵士たちが、数か月したらお化粧をしたくなったり、配給される砂糖を少し取っておいてヘアセットに使ったり。人間らしく生きることって消せないんだと思えていじらしかったです」

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当時の状況など、勉強しなければいけない部分は多い。兵士たちのロシア帽や軍用コートなども、監修者からリアルなディテールなどを教わり正確を期して修正したりもする。

美少女キャラクターを得意とする小梅さんの絵の愛らしさに救われる部分もあるが、原作には極力忠実に描かれており、内容は重い。それでも続きが読みたくなる。

「当時の音声テープが聞ければ声のトーンなどからさまざまな類推もできるんですが、実際は文字しかないので、感情を自分なりに想像して…というふうにならざるを得ない。可能なら、2巻以降は原作者の登場するエピソードを多く取り上げて、女性兵士たちの声がより際立つように、また作品としての背骨を持たせたいと思っています」

小梅さんは、このマンガをきっかけに、原作にもアプローチしてもらえたら本望、と語っている。

こうめ・けいと マンガ家、イラストレーター。山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科中退。2000年にデビュー。代表作に『狼と香辛料』(全16巻)。

『戦争は女の顔をしていない』1 原作/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 監修/速水螺旋人 戦争の中にも、愛や友情、暮らし、希望があったことが、ひしひしと伝わってくる。Webマンガサイト「ComicWalker」で連載中。KADOKAWA 1000円 ©Keito Koume 2019 Based on WAR’S UNWOMANLY FACE by Svetlana Alexievich ©2013 by Svetlana Alexievich Japanese comic edition published by arrangement with Sevetlana Alexievich in care of Literary Agency Galina Dursthoff, Koln, Germany through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo

※『anan』2020年4月22日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)