【2014年ミステリ3冠】『満願』の著者・米澤穂信さんの最新刊『王とサーカス』を、丸の内OLが読んでみた。
【丸の内OLの給湯読書室】vol.7 櫻井智絵
突然ですが、みなさんはどれくらい新聞や雑誌、テレビの内容を覚えていますか? 毎日のように繰り返される事件や事故、なんとなく同じような出来事として一緒にしていませんか。真実を知ること、伝えることがどこまで重要で正しいものなのか。
その問題に挑戦した、昨年度ミステリー・ランキングで人気沸騰した米澤穂信さんの最新刊『王とサーカス』を読んでみました。
第27回山本周五郎賞受賞
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位
を獲得した『満願』に続くミステリー小説!
『王とサーカス』とは?
あらすじは…
同僚の死から新聞社を辞め、フリーの雑誌記者となった太刀洗万智は、事前取材と休暇をかねてネパール首都カトマンズを訪れていた。宿泊した小さなホテルには、アメリカ人の青年、インドの商人、日本人僧侶など、様々な過去を抱えた人たちが集まっていた。万智は現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごしていると…突然、国全体を揺るがす大事件が起きる。この事件の真相をスクープし日本に伝えようと取材を行っていく中で、ある人物と接触し、「なぜ真実を伝えるのか?」と悩み始める。2001年に実際に起きた王宮事件を物語に取り込んで描かれた壮大なフィクション! その先に待っていたものとは?
読み終えて…
舞台は2001年に実際にネパールで起きた王宮事件。王族の晩餐会にて皇太子が銃を乱射、兄弟を含む複数名が射殺された。その真相は現在に至るまで不明。
この今から14年前にネパールで起きた事件についてどれほどの人が記憶しているのでしょうか。
真実が全てではなく、必ずしも正しいわけではない。真実を知ること・伝えること・受け止めることの重みを考えさせられる物語でした。
特に万智がある人物を取材するシーンでは、記者として何を見て・感じて・伝えていきたいか自問自答していき、とても読み応えがあります。
また、主人公の太刀洗万智は、10年前の米澤さんの作品『さよなら妖精』に登場しているとあってファンには待望の一冊。(内容は連続していないので読んでなくても大丈夫のようです)。
最後に…
とある記事に、米澤さんが『王とサーカス』についてこんな風に語っていました。
“「遠い国の話を自分がどう受け取るのかという主題」にきちんと向き合いたい。”
まさしく本書は、その問題にまっすぐ立ち向かっている作品です。
私たちは、自分にとって身近な出来事や関心があるもの、メディアで大きく取り上げられたことはよく覚えています。
報道されないと伝わらない、けれどその取り上げ方一つで誰かの運命を変えてしまうこともある。
本文で万智が苦悩する問題は、今の報道の在り方に対する挑戦であり課題だと思います。
読み終えた今、知るという娯楽と手の届かない場所のことを知ろうとする意味について、自分なりに考えてみたくなりました。