田代 わこ

世界が認める日本の才能、隈研吾「ネコから学ぶことがある」と展覧会を開催

2021.7.2
東京国立近代美術館で『隈研吾展』がはじまりました。米タイム誌の「2019年世界で訪れるべき最も素晴らしい場所100選」に選出されたスコットランドの博物館《V&Aダンディー》をはじめ、多くの建築物を手がけてきた隈研吾氏。日本を代表する建築家のひとりである彼の作品が一堂に集まる注目の展覧会をご紹介!

世界の隈作品が集結!

【女子的アートナビ】vol. 212

『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』では、世界中にある隈作品から公共性の高い建築68件を建築模型や写真などで紹介。さらに、第一線で活躍するアーティストによる映像作品や、前庭に展示されたトレーラーハウスなども含め、全74件を楽しむことができます。

隈研吾氏は1954年生まれ。東京大学建築学科大学院を修了し、1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。2009年から2020年3月まで東京大学教授をつとめ、現在は東京大学特別教授・名誉教授です。これまで20か国以上の国で建築を設計し、国際的な建築の賞も数多く受賞しています。

この展覧会で、まず気になるのがタイトルにある「ネコの5原則」。本来絵文字が正式表記なのですが、いったいなぜネコなのでしょう?

隈氏の解説によると、コロナ禍でハコ(建築物)から外に出て町を歩くようになったとき、多くのネコたちと出会い、彼らの生態を観察するうちに人間もネコから学ぶべきことがあると思い至った、とのこと。

本展後半では、ネコの視点から都市での生活を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》も発表されています。

世界で訪れるべき最も素晴らしい場所!

会場内では、隈氏本人が選んだ公共性の高い建築68件を、「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」という5原則に分類して展示されています。いくつかピックアップしてご紹介します。

まずは「孔」。文字をそのまま解釈すると穴の開いたデザイン? と思いそうですが、そんな単純なものではありません。隈氏は、孔を介して人と物をどうつなぐかを考えているようで、例えば中庭やアトリウムのような空間も孔となるそうです。

「孔」での一番の見どころは、《V&Aダンディー》の模型。スコットランド初のデザインミュージアムとして2018年にオープンしたこの建物は、米タイム誌で「2019年世界で訪れるべき最も素晴らしい場所100選」にも選出された話題作です。

川に面した土地に建てられ、しかも建築の一部が川の中にはりだしているので、角度によっては川に浮かぶ島のようにも見えます。建物の中央には、水平に貫通する大きな孔が設けられています。

模型だけ見ても美しい作品ですが、ぜひ背景に映し出されているタイムラプス映像とあわせてご覧ください。この映像はアイルランドのアーティスト、マクローリン兄弟によるもの。建築と映像のコラボ、超クールです!

かわいい…! やわらかい茶室

「やわらかい」項目に分類されている作品のうち、もっとも目を引くのが茶室の《浮庵》。こちらは展示室内ではなく、エントランスホールに展示されています。ころんとした形がかわいく、半透明で中が透けて見える感じがおしゃれです。

世界最軽量の布といわれる新素材とヘリウムガスのバルーンを組み合わせてつくられた本作は、布の下端に石を置いて床に固定されています。ワシントンの日本大使館で行われる茶会のためにデザインされたもので、日本から運ぶ際には折りたたんでトランクに詰めて持っていったそうです。

日本国内に建てられている隈作品も数多く紹介されています。

例えば東京なら、高輪ゲートウェイ駅や国立競技場、根津美術館など、実際に現物を見たことがある建物の模型や写真を探してみるのも楽しいですよ。

会場の展示デザインは隈研吾建築都市設計事務所が手がけ、作品解説なども隈氏本人が執筆。すべての解説をじっくり読めば、隈氏の建築物についての考え方や今後の建築のあり方なども知ることができます。

ぜひゆっくり時間をとって、スター建築家の作品を楽しんでみてください。

取材・文:田代わこ

Information

会期    :~9月26日(日)
会場    : 東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
開館時間  : 10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00)*入館は閉館30分前まで
休館日   : 月曜日[ただし7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館]、8月10日(火)、9月21日(火)
観覧料   : 一般¥1,300、大学生¥800 ※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料
 ウェブサイト: https://kumakengo2020.jp/