『人魚の眠る家』の篠原涼子「家族を言い訳にも犠牲にもしたくない」
主演を務めた篠原涼子さん!
【映画、ときどき私】 vol. 199
劇中で篠原さんは、不慮の事故が原因で意識不明に陥ってしまう我が子を守ろうとする母親の薫子を演じています。同じ母親として感じた思いや自身の困難との向き合い方、そしてananweb読者へのアドバイスなど、幅広く語ってもらいました。
―まずは、今回のオファーが来たときのお気持ちから教えてください。
篠原さん 正直、最初は躊躇しました。というのも、私にも子どもがいるので、「こういう作品をやることによって、何かが起きてしまったらどうしよう」という自分自身の弱さみたいなところで止まってしまったからなんです。
ただ、いろいろな方に背中を押していただいて、もう一度見直してみたときに、「こんなに素晴らしい作品だったんだ」ということがわかり、ひとりの女性としての葛藤や感情をここまで表現できる作品にはなかなか巡り合えないんじゃないかと思うようになりました。
―そのあたりは女優としても、挑戦だったのではないでしょうか?
篠原さん それは女優というお仕事をさせていただくうえでは、飛び越えないといけないハードルだったので、いいチャンスでもありましたし、やりがいもあると感じました。原作が東野圭吾さんということもあって、ただ悲しい不幸な話ではなくて、ミステリーの部分もある作品。本当に盛りだくさんな映画だと思ったので、お受けすることにしました。
独身のころと変わったところとは?
―今回のテーマは、「母の究極の愛」。篠原さんご自身も実際に母親になったことで、人生観や考え方に変化はありましたか?
篠原さん 子どもがいるということだけでも勇気が出ますし、「人のために働こう」という意識が強くなったとは思います。あとは、「ひとりじゃない」という心強さや「ちゃんとしなきゃ」という気持ちが湧き出てきたという意味でも、独身のころとは全然違いますね。
―この作品に参加したことで、お子さんへの気持ちに影響を与えたことはありませんでしたか?
篠原さん 何でも当たり前だと思って感謝の気持ちをつい忘れがちですが、この作品を経験したことによって、自分が子育てをしている環境がいかに幸せなことなのかということは、身に染みてわかりました。普段、うるさいなと思うこともあるんですけど、子どもが明るくて、わがままを言えることも幸せなことなんだといまは再認識しています。
―これまで、ほかの作品でも “もがく人” というのを演じてきたと思いますが、ご自身が答えのない問いに向き合ったときはどのようにして乗り越えていますか?
篠原さん ここまでの難題というのは、まだ自分に起きてないので、実際にこういう状況になったら未知ですね。ただ、子育てに関しては、いまの私が大変だと思うことはたかが知れていますし、それはきちんと子どもと向き合って、コミュニケーションを取れば解決の方法が見つかるものだと思っています。
念じていれば思いは叶うもの
―子育て以外でもご自分の人生において、もがいていたと感じる時期はありましたか?
篠原さん 私はけっこうあっけらかんとしているほうで、「それも人生だよね」みたいに思う古臭いタイプなんです(笑)。だから、「むしろそういうことが糧になって、いまがある」と感じてしまうので、もがくほどのことはなかったかなと思います。うれしい悲鳴ならいっぱいありますけどね。
―では、意識的に困難を乗り越えるというよりも、自然体で受け止めてらっしゃるんですね。
篠原さん 私は「念じていれば思いは絶対に叶う」と信じているので、そういう気持ちをいつも大切にしながら、先のことを思い描くようにしています。
―篠原さんはつねに明るくて前向きなイメージがありますが、そういうスタイルになったきっかけはありますか?
篠原さん 多分、これは性格ですね。基本的に楽観的なので、寝ると悩みが解決されちゃうこともあるくらい(笑)。いろいろと考えるうえでは、クヨクヨすることもときには必要だと思いますが、どちらかというと、私は深く考えるのが苦手なのかもしれないですね。
現場が楽しかったから苦労は感じなかった
―この作品は、非常に深いテーマでしたが、ご自身で役を引きずってしまうことはありましたか?
篠原さん 私自身は、意外と引きずることはなかったですが、それよりも泣くシーンが多くてエネルギーをかなり消耗していたので、マラソンを走ったあとのような疲れを感じていました。普段はみんなとおしゃべりするのが好きなんですけど、それもせずにけっこうボーっとしてしまうこともありましたね。
―繊細な演技を求められた難しい役どころだったと思いますが、一番苦労した点はどんなところですか?
篠原さん 現場に行くのは毎日楽しかったので、あまり苦労は感じなかったです。ただ、この薫子というのは、演じるたびにどんどん変わってしまう人。もし撮り直したら、そのたびに違う感情が出てくるのかなと思ったので、終わりがないという意味では、もっと演じたかったくらいでした。
―とはいえ、今回は「演じる」というよりも、「薫子を生きていた」という感覚に近かったのではないでしょうか?
篠原さん まさにそんな感じですね。「役を演じよう」と思って仕事をすることはしたくないと普段から心がけていますが、そういうことをしなくても済んだのはこの作品だったからこそ。いつもは前日にいろいろと考えて、「明日のシーンはこんなふうにやろうかな」とかイメージを描いてから現場に行くんですけど、今回はその場の感覚でやるほうがいいと感じました。
あとは、相手役の方々とのキャッチボールも大事なこと。そこで自分がどういうボールを投げられるか、そして相手のボールをどうやってキャッチして投げ返せるか、ということを意識していました。そのことによって感動が生まれたような気がしています。
笑顔でいることが輝き続ける秘訣
―現在は、妻としても母としても女優としても、忙しい日々だと思いますが、それぞれをどのようにしてバランスを取っているのか教えてください。
篠原さん そういうふうによく聞かれるんですが、私がバランスを取らなくても、家族がバランスを取ってくれているんです。もちろん、家族と意見が食い違うこともありますけど、それを家族が乗り越えて助けてくれているからこそ、私は仕事ができていると思っています。
―では、家庭を持ってからの仕事への向き合い方も変わってきているのでしょうか?
篠原さん そこはあまり変わってないかもしれないですね。というのも、自分のなかで決めていたのは、結婚しても子どもができても、仕事を犠牲にしたくないということ。ただ、家族のせいでこういう仕事ができなくなったというのも嫌なので、そこは言い訳にも犠牲にもしたくないところですね。すべて自分の責任で前向きに取り組みたいので、そういう意味でも昔から変わっていないと思います。
―女性読者のなかには、篠原さんのようにステキに歳を重ねていきたいと目標にしている人も多いのですが、20代、30代はどのような意識で過ごされていましたか?
篠原さん 偽善的な答えになってしまうかもしれないですが、いつも周りに盛り上げてもらいながら笑って過ごしていたので、笑顔に包まれるようには意識していたと思います。明るいイメージを大切にしながら生きていくように心がけていましたね。
人生は悩みごとがあったほうがいい
―どれだけ仕事でストレスが溜まっていても、笑顔でいるように意識されていたのですか?
篠原さん そうですね。でも、私にとって、仕事をすること自体がストレス発散。本当に仕事が好きなので、睡眠さえとれていれば、ストレスが溜まることはないですね。
―とはいえ、撮影などで不規則な生活になったときは、どのように対処していますか?
篠原さん スケジュールがきついと、風邪をひいたり、免疫力が低下したりと体にこたえることもありますが、まずはミネラルウォーターで水分補給をたくさんするようにはしています。あとは、生野菜を毎日ちゃんと食べるようにしていますね。撮影で揚げ物が多いと野菜不足のときがあるので、ホルモンバランスや腸内環境を整えるためにも現場に野菜を持っていくようにしています。
―そういった積み重ねが大切なんですね。それでは最後に、仕事や恋愛で悩んでいるananweb読者に向けて、アドバイスをお願いします!
篠原さん まずは、「悩みごとがあるほうがいいよ」と伝えたいですね。というのも、それがモチベーションや人生の糧になるものですから。あとは、考えすぎたりせずに、好きなことを思う存分やることがベストだと思います。
インタビューを終えてみて……。
取材中もとにかく笑顔がステキで、ポジティブなオーラをひしひしと感じさせてくれる篠原さん。いくつになっても変わらぬ魅力の秘訣を垣間見ることができたので、ぜひ見習いたいと思います。映画では、これまで見たことのないような篠原さんに圧倒されること間違いなしなので、その様子は劇場で目撃してください。
衝撃のミステリーと感動に震える!
「もし自分だったら……」という問いと向き合うことで、新たな思いに気付かされる本作。家族のことだけでなく、自分の置かれている環境についても、誰もが考えずにはいられないはず。想像を超えたクライマックスを目の前に、あなたならどうしますか?
ストーリー
娘の小学校受験が終わったら離婚すると決めていた仮面夫婦の薫子と和昌。ところがある日、娘がプールで溺れて意識不明となり、「回復の見込みがない」と告げられてしまう。深く眠り続ける娘を前に、夫婦は “ある選択” をすることを決意するのだが、それによって、それぞれの運命が徐々に狂い始めていくのだった……。
涙を抑えられない予告編はこちら!
作品情報
『人魚の眠る家』
11月16日(金)全国公開
配給:松竹
©2018「人魚の眠る家」 製作委員会
http://ningyo-movie.jp/