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冲方丁「笑える倫理本が書けたと思います(笑)」

2016.11.29
作家生活20周年の冲方丁さんが、はじめて現代を舞台にした小説『十二人の死にたい子どもたち』を上梓。舞台となるのは廃墟となった病院だ。
インターネット上で知り合った自殺願望を持つ十二人の少年少女。みなで死のうと約束して集まった建物に、なぜか十三人目がいた…。文藝春秋 1550円

インターネット上で知り合った自殺願望を持つ十二人の少年少女。みなで死のうと約束して集まった建物に、なぜか十三人目がいた…。文藝春秋 1550円

「12年ほど前から、現代小説を密室劇で書きたいと考えていました。これまで書いてきたSFや時代小説とは違い、現代ものなら限定された空間の話でも世相を伝えやすいし、会話劇をやってみたかったんです」

自殺サイトで知り合った十二人の少年少女が集団安楽死の目的で集まる。が、集合場所の部屋には、ベッドに横たわる十三人目の少年がいた。彼は自殺したのか、殺されたのか、そもそもなぜそこにいるのか。

「初期の頃から十三人目についてはアイデアがありました。死のうとしている子たちが横たわる見知らぬ子を囲む絵面が面白くて。悲劇と喜劇の中間が書ける気がしました」

この謎についての話し合いが始まり、物語は推理劇の様相も。その過程で各自の自殺の動機も明かされる。不治の病の者、親に虐待されている者、親のため保険金を遺したいと考えている者…。

「動機は、深刻なものからバカバカしいものまで考えました。対話のなかで、互いの動機を否定し合ったり肯定したりしていく様子を書きたかった。実際にどんな対話になるかはその場面になるまで自分でも分からず、意外にケンカになったりすることも(笑)」

うぶかた・とう 作家。1977年生まれ。'03年『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、'10年に『天地明察』で吉川英治文学新人賞や本屋大賞など、'12年に『光圀伝』で山田風太郎賞を受賞。

うぶかた・とう 作家。1977年生まれ。’03年『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、’10年に『天地明察』で吉川英治文学新人賞や本屋大賞など、’12年に『光圀伝』で山田風太郎賞を受賞。

時にシリアスに、時にコミカルに話し合いが進むうち、一人また一人と、自殺の意志が覆されていく。

「“自殺は駄目だよ”という書き方はしませんでした。死んでいけない理由なんて実は何もない。でも人間は選択できる動物。自殺でも暴力でも戦争でも、人は“選択できるものを選択しない”という選択をやっていかなければならない。それが倫理になるんですよね。この小説でも、彼ら一人一人が死への思いを克服していくというよりも、まったく違う常識に触れることで、とらわれていた世界から一歩脱出する契機が書けたらと思っていました。本人たちが真面目であるほど滑稽にも見えてくる、笑える倫理本が書けたと思います(笑)」

教訓的な教えを押しつけてくるのではないからこそ、十二人の能動的な選択には納得がいく。ラストは歯ごたえある痛快感が味わえる一冊だ。

インターネット上で知り合った自殺願望を持つ十二人の少年少女。みなで死のうと約束して集まった建物に、なぜか十三人目がいた…。文藝春秋 1550円

うぶかた・とう 作家。1977年生まれ。’03年『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、’10年に『天地明察』で吉川英治文学新人賞や本屋大賞など、’12年に『光圀伝』で山田風太郎賞を受賞。

※『anan』2016年11月29日号より。写真・水野昭子(冲方さん) 森山祐子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)