緒川たまき「難しいです」とポツリ ケラ『キネマと恋人』の稽古を語る

「この映画はファンタジックで、どなたにも楽しんでいただけるコメディですけれど、ウディ・アレンらしいほろ苦さのある物語なんですよね。私自身、ただおかしいという笑いよりも、これはもう笑うしかないっていうようなもの哀しい笑いに惹かれますし、この作品の芯に描かれている孤独や満たされなさには、共感する部分もありました」

稽古の様子を伺うと、小さな声でぽつりと「難しいです…」と呟く。
「KERAさんは、ちょっとした音の高低や、零コンマ1秒の間やリズム感にとてもこだわりがあって。ただ、時によっては感情のままのお芝居を要求されるシーンもあったり、そしてそれが10秒ごとに切り替わったりしますから、大変な反射神経が求められます。どちらかにしましょうよ、と思ったりもするんですけれど(笑)。しかもムードのあるシーンにスピード感を持ったやり取りを必要とされたりしますし、そうかと思うと、ふと時が止まる瞬間もあるんです。いまは目指す世界観が、一瞬立ち現れたと思うと消えていく…そんな状況です」
作品を慈しむように丁寧に、ゆっくり言葉を選びながら語る緒川さん。
「まったくの白紙の状態から、キャストとスタッフ全員の手が加えられて、少しずつ作品が出来上がる。今回もまたそこに立ち会えるんだと思うだけで、とても愛おしい気持ちになるんです」
満たされない日々を送る女(緒川たまき)の唯一の楽しみは、映画館でひとときの夢を味わうこと。そんなある日、映画のスクリーンから登場人物(妻夫木聡)が抜け出してくる。11月15日(火)~12月4日(日) 三軒茶屋・シアタートラム 台本・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演/妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえほか 一般7200円 11月15日・16日プレビュー公演6700円 世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00) http://setagaya-pt.jp/ 大阪、松本、名古屋公演あり。
※『anan』2016年11月16日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)