幻想的な美しさはまるで桃源郷!? 蜷川実花、自身過去最大規模となる体験型展覧会

2023.12.20
写真を中心に映像、映画、空間のインスタレーションまで手掛ける蜷川実花。近年はデータサイエンティストの宮田裕章らと共に、クリエイティブチーム〈EiM(エイム)〉としても活動している。そんな彼女が〈EiM〉として挑む本展「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」は、自身にとっても過去最大規模となる体験型展覧会。地上200m超、総面積が約1500平方メートルのスケールを持つ会場には、桃源郷をイメージした全11の美しい作品が登場する。

映画監督の顔も持つ蜷川実花の真骨頂。桃源郷を体験する大規模展。

映像は全て本展のために制作された新作&撮り下ろし。どれも幻想的な美しさながら、CGなどを使わずに現実を切り取ったものを、非現実な美しさへと昇華している。

展示する作品は、それぞれが建築、音楽、舞台美術など各分野のプロフェッショナルらと共創し、作品ごとに異なるチームメンバーで完成させたもの。どの作品も、展覧会の顔となるクオリティの高さだ。これらの作品は、会場のスペースに合わせて計算して制作された。外光すらも作品の一部として取り入れているので、ゲストは訪れるたびに異なる表情を楽しむことができる。それゆえに、他の施設への巡回などはできない。まさに唯一無二の展覧会なのだ。

イントロは、蜷川実花の代名詞ともいえる鮮やかな極彩色のイメージを覆す、漆黒の暗闇から始まる。次に登場する《Flashing Before Our Eyes》は最高天高15mのドーム型天井全面を使った大型のインスタレーション。動と静、生と死、緊張と緩和など対となる概念が走馬灯のように現れる。無意識の状態から、意識を取り戻して再び目覚めるまでをイメージした作品だ。《Intersecting Future》は上下左右、鑑賞者の視界一面を埋めつくす花々の様子を桃源郷のように表現。これは映画のセット技術を活用した迫力のある体験型展示だ。《胡蝶のめぐる季節》は蝶に誘われながら、四季の映像を巡る作品。投影される花々はCGではなく実物。6層ものスクリーンを行き交う鑑賞者も、作品の一部となる仕掛けになっている。

「何気ない日常の景色も少し見方を変えるだけで、全く異なる美しさや情感に出合うことができる。本展の核である映像全てに共通するのが、夢のように見える美しい景色であっても、全て現実の映像であること、それらの大半は人々の日常にある、何気ない場所で撮影されている」という〈EiM〉のメッセージの通り、本展を見れば、日常のモノの見方が少し変わるかもしれない。

art

《Flashing Before Our Eyes》イメージ

2377 art1

《Intersecting Future》イメージ

2377 art2

《胡蝶のめぐる季節》イメージ

2377 art4

Mika Ninagawa 1972年、東京都生まれ。写真家、映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか多数受賞。『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019)はじめ映画を5作、Netflixドラマ『FOLLOWERS』を監督。クリエイティブチーム「EiM:Eternity in a Moment」の一員としても活動中。

art

蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠 TOKYO NODE GALLERY A/B/C 東京都港区虎ノ門2‐6‐2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F 開催中~2024年2月25日(日) 月・水・木・日・祝日10時~20時(火曜~17時、金・土・祝前日~21時。入場は閉館の30分前まで) 年末年始等休館日あり 一般2800円ほか TEL:03・6433・8200(トウキョウ ノード インフォーメーション)

※『anan』2023年12月20日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)