時間コストがインフレに? “新しい働き方”を紐解く3つのキーワード

2022.1.6
コロナ禍の影響で、テレワークが一気に普及。そのため、2020年に“働き方のパラダイムシフト”が明確に起きたと、働き方改革に詳しい白河桃子さん。

「それまでは働く場所と時間が固定されているのが当たり前でした。しかしやむを得ない事情により、半ば強制的にテレワークの導入が進み、働き方の多様化が一気に加速。新しい働き方を経験し、行動が変化したことで、私たち自身に起こったのが“意識変容”です」

持続可能なキャリアを形成していくために、いま本当に大事にすべきことが何なのかを誰もが考え始めた。それに伴い、ワークライフバランスを見直したり、地方移住を検討したり、副業を含め、職業選択の幅を広げ、柔軟な働き方を求める傾向が強まった。

「時間や場所を選ばずに働けるようになったことで、誰もが自分の時間を大切にするようになりました。その一方で、オンライン化が進み、さまざまな人と交流できる機会が増えたのも事実。だから人とつながりを持つ時には、他人の時間も大切にすることが、今まで以上に重要になってきています」

働き方における「新しいつながり方」を理解するための3つのキーワード!

Keyword1:時間コストのインフレーション。

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会社勤めしていた人は、通勤に時間を割いたり、無駄に残業したり、多くの時間を会社に捧げていた。しかしテレワークが進み、その制約がなくなったことで時間の価値が上がった。「誰もが限られた時間を有効活用することに意識を向けるようになりました。オンラインでのコミュニケーションが主流になったことも相まって、逆に対面の価値もどんどん高まっています。だからこそ相手に会いたいと思ってもらうために、オンライン上でもより丁寧につながっていかないといけません」。そのため、さまざまなコミュニケーションツールを駆使して、良好な人間関係を築いていくことが必要不可欠に。

Keyword2:変化対応力の高い人に。

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副業を解禁する企業が増えたり、一つの企業に縛られないパラレルワーカーとして、複数のキャリアを形成する人が増えている。「SNSの普及により、自分がやりたいことや表現したいことを実現しやすくなったことが、その理由の一つに挙げられます。一つの収入源に頼って生活するリスクを回避できるのが魅力ですが、それ以上に好奇心を持ち、学び続けることで“変化対応力”を身につけられれば、今後のキャリアの可能性にも好影響が。さまざまな人とのつながりを持ち、多様な役割をこなす能力が養われることで、時代の急速な変化にも対応できる人材として重宝されやすくなるはずです」

Keyword3:メンバーシップからジョブ型へ。

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終身雇用、年功序列賃金といった従来の“メンバーシップ型”から、職務(ポスト)に対して契約して雇われる“ジョブ型”へ雇用スタイルの切り替えが進んだことが、柔軟な働き方を後押し。「専門性を武器に、より高いポストに転職したり、会社を立ち上げる若き起業家が続出。その背景にはオンライン化が進み、クラウドファンディングを利用したり、海外市場とダイレクトにつながれるようになったことで、国内外からスタートアップの資金を調達しやすくなったことが関係しています。自由度が増し、若い世代でも才能を活かせるようになったことで、働き方の選択肢が広がっています」

白河桃子さん 相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学客員教授、ジャーナリスト、作家。ダイバーシティ、働き方改革、女性活躍などをテーマに著作、講演活動を行う。「働き方改革実現会議」をはじめ、多数の政府の委員を歴任。

※『anan』2022年1月12日号より。イラスト・井上 明 取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)