家族の世話を担う中学生が17人に1人…ヤングケアラーの深刻な現実

2021.7.2
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ヤングケアラー」です。

一人で抱え込ませず相談できる体制を整えることが優先。

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「ヤングケアラー」とは、家族の介護や世話、家事や労働を日常的に担っている18歳未満の子どものことです。今年3月、国の初の実態調査により、中学生のおよそ17人に1人がヤングケアラーであることが明らかになりました。

公立中学校1000校と全日制高校350校を対象に行われた調査によると、「世話をしている家族がいる」と答えた中学生は5.7%、高校生は4.1%。食事作りや洗濯などの家事、祖父母の介護や見守り、幼いきょうだいの保育園への送迎など、世話の内容は多岐にわたっています。世話に費やす時間は中学生で1日平均4時間、高校生は3.8時間。7時間以上と答えた生徒も1割いました。下校後の時間がとられ、当然、勉強や睡眠、友達と遊ぶ時間などが削られてしまいます。最も深刻なのは、この状況を人に相談した経験のない子が中高ともに6割以上もいたことです。学校に行きたくても行けないと答えた生徒もおり、国は対応を急いでいます。

ヤングケアラーのなかでも、「きょうだい児(病気や障がい者の兄弟姉妹がいる子ども)」はその存在がまだあまり知られていません。病気や障がいのある本人やその親に対してのサポートはありますが、きょうだい児もまた様々な視線にさらされています。まだ子どもなのに親に甘えられず、きょうだいの世話を担い、遊ぶ間がありません。自分の人生をきょうだいに捧げてしまうケースも少なくないのです。

ヤングケアラー、きょうだい児に共通しているのは、その状態が「あたりまえ」と本人も周囲も思い込んでいること。あるきょうだい児の人は後年、「自分は、自分の自由にしていいのだということを教えてほしかった」と話していました。「24時間子供SOSダイヤル」や「子どもの人権110番」などの相談窓口を利用していれば、もう少し楽になれたのかもしれません。

国は社会保障費を減らすために、施設ではなく家庭内で介護することを提唱しています。父母が働いていれば、ヤングケアラーは今後も増えるでしょう。ヤングケアラーが孤立し、人生の選択肢を狭められている現状に対して、適切なサポートが求められています。

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堀潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年7月7日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)