【美しく生きるとは?】女性必見の感涙作『92歳のパリジェンヌ』!
自分らしい人生を貫いた母と娘の感動作『92歳のパリジェンヌ』!
【映画、ときどき私】 vol. 56
92歳の誕生日を迎えたマドレーヌは、家族が集まったパーティでのスピーチで、「今まで本当にありがとう。幸せな人生だわ」と感謝の言葉を口にしていた。ところが、その直後にマドレーヌの口から放たれたある宣言に一同は耳を疑うことになる。それは……。
「2か月後の10月17日に私は逝きます」
ショックを受ける娘のディアーヌや激怒する息子のピエールなど、家族の反応はさまざま。しかし、「気力があるうちに自らの手で人生の幕を下ろしたい」という固い決意をしたマドレーヌの生き方に、ディアーヌは徐々に心を動かされていくのだった。母と娘が過ごした輝きに満ちた日々とは……?
フランスで大きな波紋を巻き起こした実話がベース!
この物語は、2002年にフランス元首相の母親が自らの人生を終える日を決めて、実行したという衝撃の出来事がもとになっており、作家である彼女の娘がその様子を書いた「最期の教え」という小説を映像化したもの。
と、それだけ聞くと「重たい話なのではないか」と感じてしまう人もいるかもしれませんが、あくまでもこの作品で映し出されているのは、最期の瞬間まで輝き続け、笑顔と喜びに包まれた女性の姿。笑いと涙と勇気をくれる母娘の生き方は、同じ女性としても必見です。
実は、最近私も90歳の伯母を亡くしたばかりで、他人事とは思えないうえに、伯母もマドレーヌと同じように、波乱万丈ながらも、自分らしく生き続けた女性でした。
若い頃に女優活動をしたのち、いまから60年前のまだ日本人がほとんどいないイタリアに突如渡った伯母は、現在とは違って便利ではない時代に、慣れない土地で子育てをしながら、料理研究家として働き、さらに趣味で始めたはずの豆腐作りでローマ初の豆腐屋さんまで立ち上げてしまった努力の人であり、意志を貫いた人でもあったのです。
いまや海外でも人気の高い豆腐をイタリアで広めた陰の立役者だと私たち家族は誇りに思っていますが、そんな風に自分の生き方を自らの手で切り開いてきた伯母と決意が揺るがないマドレーヌがどこか重なり、涙を止めることができませんでした。
ある日突然、眠ったまま息を引き取った伯母の顔に死の恐怖は一切なく、ただただ微笑んでおり、その顔を見た瞬間、「自分もこんな表情で死を迎えられるような人生を送りたい」と思ったのと同時に、「残された人は、後悔のないようにもっと自分のやりたいことを思う存分しなければいけない」という思いが胸の奥から込み上げてきました。
そして、それはこの作品を観た後に心に残ったことにも繋がっているように感じたのです。私の死生観はどちらかというとマドレーヌと近いので、彼女の気持ちはよくわかるけれど、現在80歳の母を持つ私としては、娘としての苦悩も痛すぎるほどわかるので、かなり感情を揺さぶられましたが、そんな風に色んな立場から、「自分らしく生きるとは何か」を改めて考えさせてくれる一本です。
いつかは誰もが向き合うべき人生の課題
人は生を受けた瞬間から、死と隣合わせであり、それはどんな人にも必ず訪れるもの。しかし、マドレーヌの生き様からは、最期の最期まで輝きに満ちた時間にできるかどうかを決められるのは自分だけなのだと感じるはず。
人生とは、誰かと一緒に歩んでいくものではあるけれど、誰かのために生きるものではありません。もちろん、人生の中においては、誰かのために生きるときもあるかもしれないけれど、最終的には、自分のために生きることが一度しかない人生には必要であり、だからこそ、そこで感じる喜びがそばにいる人に幸せを与えることもできるのだと思うのです。
自分にしかないできない生き方をする権利は誰にでもある
誰もが大なり小なり後悔をしながら生きているものだけれど、人生の幕を下ろす瞬間に、「自分の人生に後悔はない」と笑って言うことができれば、それはきっと自分にとっては最高の人生であったことの証。
死を描きながらも、どう生きるかを問いかける物語に、流れるのは悲しみだけではない温かい涙。劇場を出た瞬間から感じるのは、いまを生きることの愛おしさであり、人生の先輩から届く奥深い “最期のレッスン” は、誰の人生も輝かせてくれるはずです。あなたにとっての “美しい人生” とは何ですか?
心に問いかける予告編はこちら!
作品情報
『92歳のパリジェンヌ』
10月29日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
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