【松山ケンイチと東出昌大が対決!】全力で生きる意味を知る渾身作『聖の青春』!
わずか29年の激動の人生が心を揺さぶる感動作『聖の青春』!
【映画、ときどき私】 vol. 55
幼少期から腎臓の難病を患っていた聖は、入院中に父が勧めた将棋に心奪われ、その瞬間から将棋の虜になってしまうのだった。そして、いつしか名人になる夢を抱くようになり、羽生善治らの天才棋士たちと死闘を繰り広げることに。将棋にすべてをかけ、師匠や家族らに支えられ闘い続ける聖。しかし、病は刻一刻と悪化していくのだった……。
「将棋を知らないと楽しめないのではないか」と心配している女子もいるかもしれませんが、ルールがわからなくてもこの作品の魅力と熱気は十分に伝わるはず。とはいえ、さらなる理解を深めるため、舞台挨拶を取材してきました。
今回は、主演の松山ケンイチさんはじめ、東出昌大さんら豪華キャストが勢ぞろい!
先日行われた完成披露試写会では、松山さんと東出さんは役柄同様の和装でビシッと登場。そのほか竹下景子さんや安田顕さん、そして森義隆監督も登壇し、作品への思いや撮影の裏話などを語ってもらいました。
松山さんはもともと原作のファンでもあり、映画化が進んでいるという話を聞きつけて、自ら出演を名乗りでたそう。「自分にとって一生に一本の作品になると思う」と感じたほど、役作りにも並々ならぬ決意があり、なんと20キロも増量して挑んだとのこと。
では、改めて振り返ってみての感想は?
「この役ほどスタート地点に立つまで時間がかかった役はありませんでした。村山さんの生き方に心を揺さぶられたので、それをそのまま観ているお客さんにも伝えないといけないのはプレッシャーでしたが、そこに熱中していました」と語る松山さん。
役作りでは、内面を作りあげていくことで村山聖以上に村山聖になりたいという風に思っていたそうで、「病や死との向き合い方、生きるということ、そういう内側の部分は一番苦労したところだった」と熱弁してくれました。
そんな松山さん演じる村山聖の最大のライバルであり、憧れでもあった存在といえば、史上初の七冠独占を成し遂げた羽生善治名人ですが、本作で演じたのは東出さん。
オファーを受けたときの心境は?
「以前、テレビで特集されているのを見て、羽生先生に憧れを抱いていました。台本を読んだときには鳥肌が立つ思いでしたね」と満足感を噛みしめていましたが、仕事が決まったときには、初めてマネージャーさんと握手をしたくらい喜びを爆発させたそう。
「初日に、ただ街に佇むというシーンでは、何をしたつもりもなかったんですけど、監督が走ってきて、『芝居するな』と言われたんです。それくらいそこにはリアルがあったんじゃないかなと思ったので、精神性を大事にして取り組みました」と撮影の様子も話してくれました。
実際にご本人が使用していたアイテムにも注目!
今回は、村山さんのネクタイを対局シーンで松山さんが身に着けていたり、羽生名人が七冠を獲った当時に愛用していたメガネを東出さんがかけていたり、村山さんが初めて将棋に出会ったときから肩身離さず持っていた角の丸くなった将棋の駒が出てきたりするので、小物に込められた思いもぜひ感じてみてください。
ちなみに、東出さんと監督は実際に羽生名人にもお会いしたそうで、「すごい人だった」とおふたりとも口をそろえていましたが、松山さんは「その会に僕は呼ばれてなくて、撮影半ばに発覚したんです。羽生名人に会えなかったことはショックで、いまでも納得していないですからね(笑)」と恨み節。
しかし、それは監督の演出の一環でもあり、東出さんは「松山さんとはインするまで会わせないし、喋らすつもりもないから」と監督から言われたそうで、「事実、2人はこの映画のなかで村山と羽生として出会っている」と絶賛されていました。
実は、映画を観るまでは羽生名人と東出さんのイメージが結びつかなかったのですが、まるで本人かと思うような佇まいにはただただ驚き。村山さんが憑依したような松山さんの熱演とともに必見です。
キーフレーズは「負けました」
監督は、内なる闘志を指先や表情など、一挙手一投足を使って表現するために、棋士役の俳優たちには、人間とは思えない我を忘れたような表情をする棋士の方たちの写真集を配っていたとのこと。
なかでも、演じる上で松山さんが難しかったというのが、「負けました」と言うシーン。全人生をかけて勝負に挑んだあと、その終わりの言葉として出てくるものなので、それぞれの俳優の言い方にも注目して欲しいとのことでした。
最後に、棋士の方々にとって欠かせない扇子に座右の銘を入れて発表!
みなさん、それぞれの思いを書いていらっしゃいましたが、監督は「聖魂」、竹下さんは「絆」、安田さんは「おだやかに」とひと言ずつ。
東出さんは、私利私欲を捨てるという意味や自分ではなく人のためにということもあり、「無私」という言葉を選んだそう。「自分を捨てて、何者かになるというのが役者の仕事ですが、“無私の境地” に至ることはなかなかないんです。でも、この映画で初めてそこに行くことができたので、またそういうところに行けるように欲をかかずに仕事に打ち込みたいと思います」と決意を新たにされていました。
そして、松山さんが選んだのは「好きに勝るものなし」。原作を読んだときに、村山聖の生き方に心を揺さぶられて、好きになったという松山さんは「この人を演じられるなら、自分も全部捨てられるという思いがあったから、いまここに来ることができたんだと思います。決して楽なものではなかったし、苦しい部分もありましたが、好きという気持ちは全部超えますよね」とその言葉に込めた思いを披露。
さらに、「今回この作品に携わって、誰のためでもない自分自身の人生を大事にしたいなと心から思えるようになりました。みなさんもこの作品を観て、何か心に残っていただければうれしいです」とこれから観る方へもメッセージを伝えてくれました。
取材を終えてみて……。
とにかく、主演の松山さんをはじめ、キャストの方々からひしひしと伝わってくるのは、作品に対する熱い思い。その気持ちには突き動かされるものがあるので、すでに「観なければ!」と思っている人も多くなっていると思います。
実は、私も小学生のときに将棋にハマった時期があり、知り合いのおじさんを捕まえては将棋をしたり、棋士の本を読んだりと、「将来は女流棋士か?」なんて親に言われていたほど。今回、命懸けで戦う棋士の人生を垣間見て、改めてしびれてしまいました。なので、これまで将棋にあまり興味のなかった女子こそ、ぜひオススメしたい作品です。
人生にも一手一手に意味がある!
ときには誰もが、人生において、自らが決めた“盤上” で聖のように全力で闘う瞬間があるもの。でも、そんなときこそ “人生の棋譜” をどうやって作り上げるかは自分次第。そして、その駒を持っているのも、動かせるのも自分だけであることを感じるはずです。あなたはどんな棋譜を残したいですか?
胸を締めつける予告編は、こちらからどうぞ!
作品情報
『聖の青春』
11月19日(土)全国公開
配給:KADOKAWA
© 2016「聖の青春」製作委員会