志村 昌美

“人を愛することの意味” を話題作『リリーのすべて』で知る!

2016.3.12
“自分らしく生きる大切さ” について考えさせられる映画を最近取り上げましたが、今回はまさにその “究極の姿” ともいえる、ある人物の実話に基づいた作品をご紹介したいと思います。いまから80年以上も前に存在した、1人の画家と、変わりゆく夫を支え続けた妻との感動作といえば……。

世界で初めて、性別適合手術を受けた人物を描いた『リリーのすべて』!

【映画、ときどき私】 vol.27

デンマークのコペンハーゲンで、高い評価を得ていた風景画家のアイナー・ヴェイナーは、同じく画家のゲルダと結婚し、幸せな日々を送っていた。結婚6年目にも関わらず、まるで新婚カップルのように仲むつまじい2人は、互いに助けあい、触発しあいながら、ともに創作活動を行っていた。

ある日、妻に頼まれて女性モデルの代役をしたアイナー。

lili_サブ1

最初は、しぶしぶストッキングやチュチュを手にするものの、アイナーはその感触に、いままで感じたことのない感情が自分のなかに湧き上がってくるのに気がついてしまう。そんなアイナーの変化に気がついたゲルダは、芸術家の遊びとして、“リリー” という女性になりきって舞踏会に参加することを提案する。

しかし、いつしかリリーとして過ごす時間が増えていくことに……。

CC23_SG01_00883

リリーでいることが徐々に遊びではなくなってしまい、心と身体が一致しないことに悩むアイナーと変化していく夫に戸惑いながらも、一番の理解者である妻として、愛し続けようとするゲルダ。波乱と愛に満ちた2人の運命とは……。

あなたならどうする?

lili_サブ2

こんなにも純粋で、究極ともいえる愛を前にしてしまうと、“愛” という言葉を簡単に口にしてはいけないような気さえしてしまうほど。特に女性になら、「もし、自分のパートナーが女性として生きたいと言ったら、受け入れられるか?」と誰もが考え、思わず胸を締めつけられてしまうはず。

人の数だけ、愛の形はある!

CC23_SG01_00729_R

ただし、愛の形は人それぞれであり、何が正解と感じるかは、人によっても違うと思います。リリーとゲルダが見せる “愛の力” を観れば、「自分にとって愛とはなにか?」ということの答えが自然に心に浮かぶはずです。

“人を好きになるということ” とは?

CC23_005_01559

実は、つい先日ある取材で「人を好きになるということは、どういうことか?」ということに話が及んだとき、ある女優さんに「どう思いますか?」と聞かれ、私は「人を好きになるということは、いまの自分を見失うこと」であり、「つまりは、新しい自分を見つけること」だと答えました。おそらく、この作品を観たことが自分のなかにも影響していたのかもしれませんが、いまの私にとっては、「人を愛するということは、新しい自分を見つけることだけでなく、相手の “本当の姿” を見つけてあげること。そして、そのすべてを受け入れること」でもあると感じているところです。

では、“人に愛されること” とは?

CC23_SG02_01205

アイナーが「リリーとして生きていく」と決意したのは、「自分に嘘をつかずに生きていきたい」という思いが強かったから。それはもちろんですが、未知の世界に立ち向かうための原動力となったものは、やはり愛する人からの “無償の愛”。たとえ一人でも “絶対的な味方” がいると感じられれば、誰にとってもそれがかけがえのない支えとなるのだと思います。人は誰かを愛することで寛容さを知り、そして人に愛されることで強くなれるのです。

“愛” の文字が意味することとは?

CC23_SG01_00156

愛という漢字を見ると、連載の1回目にも紹介した住職でもある私の伯父の言葉を思い出します。それは「愛とは相手を受け入れる心を言う」というもの。読んで字のごとく、“受” の真ん中に “心” を入れると完成する “愛” の文字。相手の心を真正面から受け止められる愛に出会うこと、それこそが人生にとって “最大の出来事” なのかもしれません。

リリーのすべてを愛し続けたゲルダのように、あなたは “誰のすべて” を受け止めますか?

作品情報

『リリーのすべて』
公開表記:3月18日(金)全国公開
配給:東宝東和
(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
レイティング:R15+

http://lili-movie.jp/