志村 昌美

“仕事も育児も両立する方法” を学べるドキュメンタリー『Maiko ふたたびの白鳥』!

2016.2.18
現在、いろいろな意味で注目を集めている “男性の育児休暇問題”。日本で一般的になるまでには、まだ時間がかかりそうですが、福祉が充実していることで有名なノルウェーでは、育休を取る男性はなんと約9割! そんな恵まれた環境で育児をしながら、母になっても変わらず世界的に活躍するある日本人女性を、4年にわたって追いかけたドキュメンタリーが公開!

働く女性の等身大の姿を映し出した『Maiko ふたたびの白鳥』!

【映画、ときどき私】 vol.22

大阪出身のバレエダンサー西野麻衣子は、ノルウェーで一番有名な日本人。19歳で入団したノルウェー国立バレエ団では、25歳にして東洋人初のプリンシパルに。その後10年に渡ってトップダンサーとして活躍し続けている彼女を、いまや現地では知らない人はいないという。

そんな世界的バレエダンサーに大きな “転機” が訪れることに……。

それは、同じオペラハウスで映像と音響の総監督を務める、ノルウェー人の夫との間に子どもを授かったことだった。「いつかは、ママになりたい」という憧れはあったものの、トップで活躍していた麻衣子は、予期せぬ妊娠によって、キャリアと出産の間で心が揺れていた。

出産直前までトレーニングを続けていた麻衣子だったが、その後息子のアイリフが無事に誕生。休む間もなくストレッチを開始した麻衣子は、すぐに復帰することを決意する。そんな彼女が出産からわずか7ヶ月後の復帰作として選んだのは……。

バレエのなかでも屈指の難役として知られている『白鳥の湖』!

出産前とは大きく変わってしまった身体のバランスを戻すため、授乳しながら、限界までレッスンに取り組む麻衣子。最難関である連続32回転がなかなか決まらず、周囲がハラハラ見守るなか、最後まで踊りきることはできるのか……。

同世代の女性として、勇気をもらえること間違いなし!

キャリアと出産の間で感じる葛藤などもリアルに映し出されていますが、目標に向かって努力を惜しまない前向きな麻衣子さんを見ていると、「自分もがんばらないと!」という気持ちにさせられます。

麻衣子さんと同じ歳の私としては、海外で日本人女性が活躍している姿には、大きな刺激を受けました。

とはいえ、現時点での私は、自分のことで手いっぱい。子供を持つ自信は正直言ってまだまだありませんし、心のどこかで「仕事か子供のどちらかを選ばないといけないのではないか」という思いもあります。

それでも、麻衣子さんのようにキャリアも育児も全力で取り組む女性を見ると、「どちらも追い求めることは、不可能ではない」という気持ちが芽生え始めてきているのも事実。

ただし、それは旦那さんや国のサポートがあってのこと!

麻衣子さんによると、男女平等の精神が強いノルウェーでは、育児も男女一緒に行うのが当たり前のため、父親は3ヶ月の育休を取ることが法律で決められているそう。しかも、夫婦合わせて与えられる10ヶ月の育休を母親と父親で分け合うこともできるのだとか。

実際、麻衣子さんの夫ニコライさんも5ヶ月の育休を取ることを決意し、麻衣子さんの復帰を全力でサポート。その様子を見ていると、思わず「なんて、ノルウェー人男性ってステキ!」と思ってしまうほど(笑)。

そんなパワフルで美しい麻衣子さんにお会いしました!

昨年、本作のプロモーションで帰国していた麻衣子さんに、取材で直接お話をさせて頂く機会があり、ノルウェー王国大使館で行われた記者会見にも参加してきました。

麻衣子さんは、旦那さんからはもちろん、国からのサポートの重要性についても訴えていました。これからますます増える “働くママ” のためにも、「夫婦が一緒に子育てできるように、日本は見習うべきではないか」と私も感じているところです。

もし子どもを持つのであれば、「いつ・どこで・誰と」というのが重要だとずっと思ってきましたが、そういう意味では、「キャリアを積んだ時期に、制度が整った国で、理解ある旦那さんと」という麻衣子さんは、私が考える “理想のワーキングマザー” といえるかもしれません。

とはいえ、出産経験のない私は、働きながら子育てをしている女性を見ては、ただ感心してしまい、そのたびに「私には、まだ母親になる覚悟がない」と実感。それでも、麻衣子さんのように予期せぬ妊娠を経て、母親になっていく様子を見ていると、「いったい、どれだけの人が “母親になる心の準備” が整った状態で妊娠しているだろうか?」考えずにはいられませんでした。

仕事にも、育児にも輝く母親の姿を子どもに見せるのが一番!

誰でも不安があるのは当然で、たとえ事前に覚悟ができていなかったとしても、「出産までの約10ヶ月というのは、赤ちゃんが大きくなるためだけでなく、女性が母親になるための “心の準備期間” として用意されているのではないか」とさえ感じているところです。

いつか来るかもしれないそのときを前に、「自分のペースで、子どもと一緒に母親として成長していけばいい」と背中を押してくれ、「何事にも全力の母親の姿は、子どもにもきっと伝わるはず」と教えてくれるドキュメンタリー。

母としても、キャリアウーマンとしても、ふたたび白鳥のように羽ばたいた麻衣子さんと同じく、働くママになったとき、あなたがふたたび輝きたい場所はどこですか?

作品情報

『Maiko ふたたびの白鳥』
公開表記:2月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
配給:ハピネット、ミモザフィルムズ

http://www.maiko-movie.com/