田代 わこ

人気の“血みどろ絵”も…! 凄絶な浮世絵にゾクゾクする「幕末明治期」のアート展

2023.10.27
東京・六本木のサントリー美術館で、「激動の時代 幕末明治の絵師たち」が開かれています。本展では、近年人気を集めている歌川国芳や河鍋暁斎、「血みどろ絵」で注目されている月岡芳年が手がけた個性的な作品などが集結。学芸員さんのお話や見どころなど、詳しくご紹介!

迫力アートが集結!

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「激動の時代 幕末明治の絵師たち」会場入り口 ※本記事の写真は、プレス内覧会で許可を得て撮影しています。

【女子的アートナビ】vol. 316

本展では、江戸後期から明治に移り変わる激動の時代に活躍した絵師たちに着目。江戸時代の伝統を受け継ぎながら、洋風の新たな表現なども取り入れた多彩な作品約170件が紹介されています。

展覧会を担当されたサントリー美術館学芸員の内田洸さんは、次のように述べています。

内田さん 江戸後期は、天保の改革や流行り病、地震や災害、黒船来航、討幕運動など混沌とした時代でした。そのなかで、美術の世界では、劇的で迫真的な描写や怪奇的な画風が生まれ、西洋画の画法を本格的に取り入れた作品も出てきました。この時代に活躍した絵師は全国各地にいますが、本展では特に江戸・東京で活躍した絵師たちを特集しています。

極彩色のアートからスタート!

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「激動の時代 幕末明治の絵師たち」より、手前:狩野一信「五百羅漢図」百幅のうち六幅 嘉永7~文久3年(1854-63)大本山増上寺所蔵 【全期間展示】

では、おもな見どころをご紹介。

「第1章 幕末の江戸画壇」では、19世紀の江戸で活躍した絵師たちの作品を展示。会場に入ると、鮮やかな極彩色で描かれた「五百羅漢図」が出迎えてくれます。これは狩野一信が描いたもので、増上寺が所蔵する全百幅のうち、選び抜かれた六幅が展示されています。伝統的な仏画ですが、洋風の陰影表現が取り入れられ、とてもインパクトのある作品です。

江戸画壇で中心的な存在だった狩野派は、江戸後期になると、伝統を守るだけでなく、やまと絵や琳派、西洋画法なども幅広く取り入れるようになりました。その門下からは、狩野一信のように、従来の狩野派とは違う独創的な作品を描く絵師も出てきます。

また、1章では、幕末の江戸で活躍していた谷文晁(たにぶんちょう1763~1840)一門の作品も展示。弟子のなかのひとり、「蛮社の獄」で捕らえられ、二年後に切腹した渡辺崋山の作品も出品されています。

独特な洋風画も!

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「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展示風景

「第2章 幕末の洋風画」では、西洋画法を取り入れた絵師たちの作品を展示。葛飾北斎に学び、独自の洋風表現を確立した安田雷洲(やすだらいしゅう)の肉筆画などを見ることができます。

当時の絵師たちについて、内田さんは次のように解説されています。

内田さん 江戸時代は、鎖国状態で海外の情報は限られていましたが、19世紀になると銅版画や洋書が流入し、陰影法や遠近法を取り入れた多彩な絵が描かれるようになります。当時の絵師たちは、それらを見ながら独特な洋風表現を生み出していきました。

人気の国芳作品が登場!

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「激動の時代 幕末明治の絵師たち」フォトスポット

「第3章 幕末浮世絵の世界」では、人気浮世絵師たちの作品が登場!

19世紀になると、浮世絵の世界にも新たなジャンルが出てきます。それまでは役者絵や美人画が中心でしたが、葛飾北斎や歌川広重による名所絵や花鳥画が人気となり、さらに歌川国芳の武者絵も流行。彼らの弟子たちも含めて、多くの絵師たちが活躍しました。

会場では、国芳が手がけた三枚続きのワイドな画面で構成された大判錦絵も楽しめます。

さらに、国芳の人気作品《相馬の古内裏》がデザインされたフォトスポットもあります!

遺体を観察して…

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「激動の時代 幕末明治の絵師たち」より、左から、月岡芳年「風俗三十二相 しなやかさう 天保年間傾城之風俗」大判錦絵 明治21年(1888) サントリー美術館蔵 【展示期間:10/11~11/6】、月岡芳年「魁題百撰相 菅谷九右ヱ門」大判錦絵 慶応4年(1868) 町田市立国際版画美術館 【展示期間:10/11~11/6】

最後の「第4章 激動期の絵師」では、幕末明治期の作品を紹介。

残酷な流血場面などを描いた「血みどろ絵」で人気を博した月岡芳年や、狩野派で学んだあと幅広い作品を描いた河鍋暁斎、幕臣として鳥羽伏見の戦いに参戦したあと浮世絵師となり、新しいスタイルの浮世絵「光線画」を生み出した小林清親など、近年注目を集める絵師たちの作品が集まっています。

月岡芳年の作品について、内田さんは次のように解説。

内田さん 芳年は、歌川国芳の系譜を受け継ぎながら、幕末から明治に活躍した人です。今回展示している作品「魁題百撰相(かいだいひゃくせんそう)」は、彰義隊と新政府軍との間におこった上野戦争をモチーフにしたシリーズです。現実の戦争を描くことはできないので、歴史上の人物に重ねて表現しています。芳年は、実際に戦争のあと上野を訪れて、遺体が並ぶ様子を観察していたといわれています。

12月3日まで開催

本展では、作品保護のため、会期中に展示替えが行われます。「出品作品リスト」(PDF)は公式サイトでダウンロード可能。リストで展示期間なども確認できますので、気になる作品があればぜひご活用ください。

会期は12月3日(日)まで。

Information

会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)会期中展示替を行います。
休館日:火曜日 ※11月28日は18時まで開館
開館時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※11月2日(木)、22日(水)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
会場:サントリー美術館
観覧料:一般 ¥1,500 / 大学・高校生 ¥1,000

公式HP: https://www.suntory.co.jp/sma/