社会のじかん

過去最多の「難民」を前に「日本」ができること 資金不足がネック?

ライフスタイル
2017.07.27
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「難民と日本」です。
社会のじかん

日本ができる難民支援は大きい。問題は資金不足。

世界中で紛争や迫害により家を追われた人の数は、2016年末で6560万人。この数は過去最多で、前年から30万人増えています。そのうち難民の数は2250万人。急増しているのは内戦の続くシリアと南スーダンです。難民の50%は子どもで、半数の子どもたちが学校に行けなくなっています。

そこで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2018年9月の国連総会までに、難民問題解決を各国政府に要求する、500万人の署名を集める運動、「#難民とともに」キャンペーンを開始。「すべての難民の子どもたちが教育を受けられること」「難民の家族が身の安全を確保できること」「仕事や新しい技術を学ぶ機会を通して、社会に貢献できる環境を整えること」を訴えようとしています。署名は日本でも集めていますが、まだ4017名(6月30日時点)しか集まっていません。UNHCRがこのような運動をはじめたのも、トランプ現象やヨーロッパ各国での右派勢力台頭など、よそ者を排斥する流れが強くなっているからなんですね。

現在500万人以上といわれるシリア難民のうち、トルコは300万人以上を受け入れ、街の空きアパートを開放したり、難民のための大学を作ったり。ただ、言語も文化も違うため、トルコ人とシリア人の間で不協和音が起こることもあります。そこで活躍するのが日本人です。NGO「難民を助ける会」は、トルコにコミュニティセンターを作り、シリア難民の子どもの言語教育をサポート。また、貧困で学校に行けないトルコ人の子どもたちにもセンターを開放しています。他国の支援団体もありますが、紛争を引き起こした根本原因は、欧米諸国が勝手に線引きしたことによる民族分断。ですから、日本のように中立な立場から支援することが、とても有効なんですね。

ヨルダンでは、8万人が暮らすザータリ難民キャンプで、NPO「国境なき子どもたち」が、トラウマを抱えた子どもたちの心のケアをサポートしています。誇るべき日本のNGO、NPOですが、国の支援金が引き下げられてしまい、資金難に。十分な支援が難しくなっているのが現状なんです。

堀潤
堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年8月2日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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