志村 昌美

「日本公開は難しいと思った」韓国の人気監督が語る最新作の内容って?

2017.6.22
アラサーにもなると、女性としてどんなふうに生きていきたいかについてますます考えるようになるものですが、そんなときは歴史から学んでみるのもいいかも。そこで今回は、日本にも縁のある実在の女性を描いた物語をご紹介します。その映画とは……。

波乱のスペクタクル・ドラマ『ラスト・プリンセス -大韓帝国最後の皇女-』!

【映画、ときどき私】 vol. 96

国号が朝鮮から大韓帝国になり、大きな変化を迎えていた日本統治時代。初代皇帝の娘として生まれた徳恵翁主(トッケオンジュ)は、日韓併合の推進と朝鮮皇室の消滅を図る戦略に巻き込まれ、わずか13歳で日本への留学を余儀なくされる。

祖国へ帰れないまま長い年月が経っていたが、大人になった彼女の前に幼なじみのキム・ジャンハンと仲間が現れ、上海への亡命を計画。しかし、そこには予想を上回る困難が立ちはだかっていたのだった。はたして、激動の歴史に翻弄された彼らが迎える衝撃の運命とは……。

日本を舞台に起きた出来事であるにも関わらず、これまであまり知ることのなかった側面を描いており、いろいろな意味で興味深い作品。そこで今回は、どうしてもこの題材を映画化したかったという方に、さらなる見どころやこれまでの思いについて語ってもらいました。それは……。

韓国を代表する恋愛映画の名手で知られるホ・ジノ監督!

普段はあまり泣かないという監督が、徳恵翁主についてのドキュメンタリーに涙したことがきっかけとなって生まれた本作。映画化を思いついたときには、周囲から反対されたそうですが、4年もかけて脚本を書き上げたというだけに、この作品への強い思いを感じさせます。

とはいえ、日本統治時代が舞台ということもあり、日本での公開は他国での公開とは心境的に違う部分もあるはず。

日本での公開を控えたいまのお気持ちは?

監督 これまで私の作品は、日本でほとんど公開されているんですが、本作については日本での公開が難しいのではないかと思っていたので、いまは本当にうれしいです。

まず伝えたいのは、この映画は日本の観客にとって、少し居心地が悪いと感じるところもあるかもしれませんが、「あくまでも韓国人の視点で見た日本が描かれている」という理解を持って観ていただきたいということ。そして、この時代を生きた悲劇的な人物を描いた作品でもあるので、そこは日本のみなさんにも共感していただけるところが間違いなくあると思っています。

韓国では原作も映画も大ヒットとなりましたが、観客を魅了したのはどのようなところですか?

監督 実は徳恵翁主は、韓国でもあまり知られていなかった人物なんです。なので、まずは『ラスト・プリンセス』というタイトルやこんな人がいたんだという興味を持った方々が多かったようですね。

あとは、最後の皇室や王族の末裔たちがどのような暮らしぶりをしていたのかということに対する関心や彼女を取り囲む人たちとのストーリーにも共感してもらえたのだと思います。

監督にとって、制作に一番時間がかかった作品のようですが、原動力になったものとは?

監督 ドキュメンタリーを観たときに私が受けた感動はとても強いものだったので、それを映画にしたいという思いがありましたし、祖国で彼女を待ち続けた人々との再会のシーンは、私の記憶のなかにもずっとあったので、それが長い間僕をひっぱってくれたんだと思います。

そして、幸せな幼少期を送って愛されていた彼女がなぜこんなに不幸な人生を送らなければならなかったのか、それは本当に彼女の選択だったんだろうか、という問いかけが私のなかにずっとあったというのもありますね。

徳恵翁主を演じたソン・イェジンさんとは、どのようにしてこの役を作り上げていきましたか?

監督 とにかく、2人でたくさんのことを話し合って、いろいろな意見を交わしましたね。そのなかで、徳恵翁主を美化しすぎたり、ジャンヌ・ダルクのように英雄視される人物にするべきではないというのがありました。

最後の皇女ということもあり、もちろんプライドもあっただろうけど、女性としての個人的な幸せを追い求めていた面もあったのではないか、という話もしながら少しずつ作り上げていったんです。

今回、見どころのひとつといえば、徳恵翁主と彼女を全力で守ろうとするジャンハンとの胸を締めつけられる切ない関係性。

では、2人を描くにあたって意識したことはありますか? 

監督 この2人は、子供時代に婚約をしていた間柄だったので、ジャンハンは徳恵翁主のそばでずっと彼女を守ろうとする役柄にしたいと思ったんです。ただ、彼も大きな大義を持っていた人物なので、ラブストーリー的な要素が多く盛り込まれてその側面に偏ってしまうことは避けたいという気持ちもありました。なので、実はもっとラブストーリーの要素を含むようなシーンも撮ってはいたんですけど、バランスを大切にしながら編集したので、使わなかったシーンというのもあります。

韓国でもこの映画を観た若い女性の間では、ジャンハンに好感を持っている人がとても多かったですし、この役を演じたパク・ヘイルさんも韓国の女優たちが一緒に共演したい俳優ナンバーワンに上げるくらいの俳優さんなんですよ! 

そんな大人気のパクさんは日本人女性にもグッとくると思いますが、監督から見た魅力は?

監督 彼はすごくさっぱりした性格ですし、周りを楽にさせてくれる人なんです。俳優のなかには、ありのままの姿をなかなか見せてくれないタイプの人もいるんですけど、彼はそういうところがまったくなくて、いつも自然体だし、一緒にいてリラックスできる相手。

最近も「マッコリを一緒にどうですか?」と携帯にメッセージを送ってくれたりして、いい関係なんですよ。ひとりの人間対人間として誰にでも接することができるのが彼の魅力なんじゃないかなと思います。「女優たちの間で共演したい俳優として人気が高いのは、自分でもわかってるでしょ?」と彼に聞いてみたら笑っていましたね(笑)。

最後に、この作品を通して日本の女性たちに伝えたいメッセージをお願いします!

監督 この映画は、不幸な時代を生きた女性が描かれているので、気品と自分のプライドを持って生き続けたひとりの女性の物語として観ていただきたいです。そして、そんな彼女のことをずっと待ち続けていた人々がいて、幸せでもあったのではないのかというのをみなさんにも感じてもらえればうれしく思います。

女性としての強さと繊細さを知る!

どんな状況に追い込まれても信念を貫き、周りを思いやる女性を映し出している本作。その姿には自分の生き方について改めて考えさせられるだけでなく、人と人との繋がりの深さにも心を揺さぶられるはず。あなたのなかにも込み上げてくる思いを感じてみて。

胸が引き裂かれる予告編はこちら!

作品情報

『ラスト・プリンセス -大韓帝国最後の皇女-』
6月24日(土)、シネマート新宿他、全国公開
配給:ハーク
©2016 DCG PLUS & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

http://lastprincess.info/