「震災関連死」がやまない…3500人以上が亡くなっている現実

2017.3.17
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大震災その後」です
堀潤

防災準備はもちろん、いつか自分の身に起こると意識して。

東日本大震災から6年が経ちました。防災対策はなさっていますか? 震災以降、大地震発生の確率は上がっており、内閣府の発表によると、30年以内に首都直下型地震が起きる可能性が70%。南海トラフ地震は60~80%とされています。これまで被災地の取材を通して実感したのですが、たとえ避難所に入れたとしても、発生から1週間は自力で生きるしかないということ。その間は水や食料、衣料品のほか、薬やコンタクトレンズ、粉ミルクなど自分や家族の必需品は、自分で調達することになると思ったほうがよいでしょう。

東京は古い建物も多く、耐震構造のものに建て替えるべく国が目標数値を掲げていますが、なかなか実行されていません。たとえば、足立区などでは耐震診断に10万円まで、耐震改修工事も8万円までの補助制度がありますが、家主が高齢者だったり資金に余裕がなかったり。しかし、密集した地域では、火災の延焼や漏電などもあり得るので、個人宅だけの問題ではなくなります。

震災後のいま、東北で問題になっているのは、「震災関連死」がやまないことです。地震や津波が原因で亡くなることを「直接死」といい、「震災関連死」は、長引く避難生活により、ストレスで自殺してしまったり、持病が悪化するなどして亡くなるケースを指します。仮設住宅で運動もできず食事にも気を使えず、生活習慣病が進むことが深刻な問題になっています。震災関連死は2016年9月までに3500人以上にまで上っているんです。

ほかにも、元々の住民と避難住民との間で、ゴミ処理の問題や、税金をその土地に納めていないことによる軋轢が生じることがあります。福島県では「未来会議」という、お寺の住職などが中心となり様々な立場の人が話し合える場を作って解決策を考えています。

先日、ある学生に言われて納得したのですが、災害に遭っていない地域は「未災地=これから災害が起こる場所」と思えば、当事者として準備を行えます。被災地の方は皆さん「まさか自分が被災するとは思わなかった。自分と同じような目に遭ってほしくない」と言ってくださいます。自分に起こりうる問題として意識しておきたいですね。

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年3月22日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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