SNSの「いいね!」で“共感疲れ”…時には離れることも必要?

2017.2.15
インターネットで全てが繋がる時代。世界を覆う共感の波は、かつてないほど大きくなっています。
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押し寄せる波にさらわれず、自分の足で歩いていくために、まずはこの「共感する世界」を読み解くことから始めましょう。「共感」に詳しい識者に、現代を読み解くポイントを聞きました。

地球規模で人が繋がり、感情をシェアする時代。

SNSのアカウントひとつで、人種も文化も超えて18億人と繋がり、1億人と同じ記事を共有できる。これだけ多くの人が同じ気持ちを分かち合う今、世界は人類史上、「最も共感しやすい」時代にあると言えるかもしれません。

「時間と場所に縛られなくなったことで、共感のパワーが増強されています。東日本大震災での支援活動の数々もFacebookを中心に広がったもの。これからは、会社に人が集まるのでなく共感があるところに人が集まり会社ができるというように、様々な行動の動機が共感ベースになるのではないでしょうか」(ジャーナリスト・白河桃子さん)

共感の輪の中から次のヒットが生まれる。

ネットを通じて、新しいチャレンジにみんなが資金を出し合う仕組みが登場したり、口コミが世界的なブームの引き金になったり。メディアや広告だけでなく、人々の共感が才能に光を当て、ヒットを生むフックになっています。

「共感がヒットを作るということでいえば、映画『君の名は。』はその好例だと思います。通常は初日から徐々に落ちていく観客数が、情報がシェアされたことでむしろ増えていった。ただの口コミが、今は一瞬で大きな影響力を持つ。映画を作る側としても、この情報の広がり方とスピード感には驚いています」(映画プロデューサー・山内章弘さん)

人間は、生まれながらに共感する生き物だ!

脳科学的に考えると、もともと人間の脳というのは共感しやすい性質を持っている。そして、実は現代には2種類の共感があるのだとか。共感ブームの根底には、元来人間が「共感しやすい生き物」だということも関係しているはず。

「そもそも共感とは、他人の感情を理解する右脳の働き。外からの好ましい刺激によって、脳がリラックス状態になることです。人間の脳は外部から情報を得ることで成長するため、もともとシンクロしやすい性質を持っているんです。一方で、現代人は右脳よりも言語を司る左脳の働きが強い。共感したままを捉えるのではなく『いいね!』という言葉に置き換えて、何に共感するかを能動的に選択しているんです。つまり、脳科学的な『共感』には、もともとの右脳的な共感と、現代的な左脳の共感の両方の側面があるといえます」(医師・加藤俊徳さん)

今、人気者の条件は“素”に共感してもらうこと。

一昔前の豪華絢爛なスターのイメージは鳴りを潜め、有名人やタレントさんも、どこか親近感を感じさせる人が今の気分。多くの人に愛される人気者の基準も「その人に共感できるかどうか」というふうに変わってきているようです。

「最近では俳優さんでも、演技だけでなく、バラエティ番組などで素をさらけ出せる人が人気です。高倉健さんのように、銀幕の中だけにスターがいた時代とは違い、今はプライべートの情報がオープンになっている。だからこそ、より本音を知りたい気持ちが強まり、それに応えてくれる人が支持されるのかも」(山内さん)

大きなパワーに潜む落とし穴。共感と上手に付き合うには。

これだけ共感パワーが強い時代。一方では、「いいね!」の数を人と比べてへこんだり、みんなが共感しているものに共感できずに不安になる、「共感疲れ」の症状も。共感に振り回されず、上手に付き合うことが求められています。

「SNS上では、良い場は良く、悪い場は悪く傾きやすい。共感の押しつけなどでストレスを感じている人は、思い切ってそこから離れてもいいと思います。地縁や血縁でなく共感で人が繋がる時代だからこそ、ひとつのコミュニティにこだわらず自分の居場所を自由に決めてもいいのではないでしょうか」(白河さん)

しらかわ・とうこ 女性のライフデザインや少子化をテーマに取材を重ね、現代女性のリアルな姿を発信。共著『「婚活」時代』(ディスカヴァー21)が婚活ブームの火付け役に。

やまうち・あきひろ 東宝・映画企画部部長。『TRICK』シリーズをはじめ、『アイアムアヒーロー』『シン・ゴジラ』など、人々の心を掴む大ヒット映画を多数プロデュース。

かとう・としのり ミネソタ大学などで人間の脳機能研究に従事し、現在は医師として個性をMRI脳画像で診断。脳科学研究と脳情報提供をする会社「脳の学校」の代表も務める。

※『anan』2017年2月22日号より。イラスト・加納徳博 

(by anan編集部)

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